蜜月
後
長曽我部の髪が足の付け根に当たってくすぐったい
唇から零れるのは自分も聞いたことの無いような甘い声
微かな背徳感を感じる
だが、それすらも興奮を高めるだけのものでしかない
穴を優しく舐められながら、緩く雄を握られる
軽く扱かれただけで敏感に反応する自分の体が恨めしかった
「うあっ!んっ!」
前への刺激に気をとられていると、穴へ長曽我部の舌が入る感覚がして思わず声が上がった
「ひっ…」
奥へと押し入ろうとする異物感に力が入る
それでも止まらぬ舌に涙が滲んだ
「ううっ…」
ひとしきり穴を舐めると今度は胸の飾りを口に含まれる
優しく噛まれ、舐められる内に、くすぐったさ以外の甘い痺れが走るのに気が付いた
「んあ、元親…」
「気持ちいいか?」
コクコクと首を縦に振り長曽我部にしがみつく
「三成…」
こめかみに口付けられ抱き締められる
「触るぞ、力抜け」
長曽我部の片手が固く閉じた穴を弄る
躊躇いがちに、だが確実に押し入ってこようとする
きつく目を閉じ長曽我部にしがみつく力を強める
「あっ!」
人差し指だろうか、一本中に入った
指一本でもこの圧迫感かと思うと気持ちが萎えていくようだった
「三成、大丈夫だ。俺だけ見てろ」
また胸の飾りを弄り出した長曽我部の頭に手をやる
ふわふわとした感触に少しばかり安心した
ぐにぐにと穴を押し広げられながら胸の飾りを弄られ、空いた手は雄を扱き出す
気持ちよさと異物の圧迫感に訳が分からなくなる
「んうっ、ふぁっ…」
ぼろぼろと涙が溢れた
指をゆっくりと抜かれ、長曽我部が頭を撫で涙を舐めとった
「もと、ちか…」
首元にすがり付き頭を押し付ける
落ち着かせるかのように額に、瞼に、頬に、鼻に口付けられた
「止めるか?」
止めたかった
尻の異物感は果てしないし、苦しいし、
雄を刺激され高ぶっても、穴の指が気になって集中することも出来ない
頭の中はぐちゃぐちゃで、涙が止まらない
それでも、長曽我部にしがみついたまま首を横に振った
「無理すんな、な?」
優しく肩を抱かれなだめられても、それだけは譲れなかった
「元親と、したい…」
涙できっとくしゃくしゃな顔になっていると思った
見られたくないと思ったが、今更だと開き直る
じっと長曽我部の瞳を見つめた
「〜〜そりゃあ、俺だってしてぇ。だが、三成に無理させたくねぇんだ」
困り顔の長曽我部の頬に口付ける
「私は、したい」
ここで止められて先伸ばしになり、また初めからというのは辛いものがあると思った
何より、中途半端な腰の疼きを何とかしたかった
恐怖しながらも、長曽我部の雄が自分の中に入るのを待ちわびている自分もいるのだ
好いた者と繋がりたいと思うのは自然なことだ
私も長曽我部もその相手が偶々男だったというだけのことだ
「…くそっ!もう嫌だっつっても止められねぇからな!」
苦し気にそう言われ、覚悟を決める
「構わない、最後までしろ」
「んなこと言って、泣いても知らねぇぞ!」
「もし泣いても、私に後悔は無い。元親となら大丈夫だ」
「チクショウ、可愛いことばっか言いやがって…。だがよぉ…」
「…元親」
嬉しそうな、困ったような顔で煮え切らない返事をする長曽我部に口付ける
「…動くな。私がする」
実際、何をどうすればいいのか全く分かりはしなかったが
取り敢えず長曽我部との体勢を変える
ゴツゴツとした腹筋の上にまたがり長曽我部の首筋を舐める
くすぐったいと笑う長曽我部とじゃれ合うように何度も口付けた
胸に、腹にと下に下に向かっていく
色素の薄い茂みからは汗と男独特の性の臭いがした
肌の色とは不釣り合いな赤黒く怒張した雄におそるおそる舌を這わせる
長曽我部の堪えた吐息に興奮した
長曽我部の雄をくわえ、懸命に舌を動かしながら、自分の片手は穴をほぐす
先ほど長曽我部がしていたのを思い返しながら
次第に柔らかくなるそこに指を入れると、然したる抵抗も痛みもなくするりと受け入れた
だが異物感と圧迫感は変わらずだ
長曽我部の雄から先走りが漏れ出るのを舐めとりながら
ぐにぐにと指を動かしていればびくりと反応する部分があった
「…っ!」
そこばかりを弄ってやれば強い快感があり、自分の雄からも先走りが溢れた
ゆっくりと指を増やし慣らしていく
一度快感を得れば後は容易かった
痛みもなく自分の指が三本入ったのを確認し長曽我部の雄から口を離す
自分の唾液と漏れ出した先走りで充分に湿っているそれを自分のほぐれた穴に宛がう
「…っ、無理すんなよ」
頬を紅潮させ、熱い息を吐きながらも私を労る長曽我部が愛しかった
「大丈夫、だ」
静かに息を吐きながら腰を下ろしていく
指とは比べ物にならない圧迫感に涙が滲んだ
「…っ、はっ」
「三成」
「…平気だ」
奥に奥にと長曽我部の雄を押し込んでいく
熱に浮かされながらも気遣う瞳を向ける長曽我部に胸が温かくなった
「んっ!ああっ!」
ある一点に長曽我部の雄が触れて声が上がる
熱く、硬い雄が先ほど見つけたばかりの良いところを抉る感覚
一気に自分の雄が高まったのが分かる
余りの快感に目眩がした
「んっ、んうっ…」
ゆっくりと長曽我部の雄をくわえこむ
ずりずりと良いところが擦られる
おかしくなりそうな程の快楽
まだ入れている途中なのに、既に達してしまいそうだった
「ふっ、んん、っもとちか…」
自分でも初めて聞く高く甘い喘ぎだった
涙混じりの情けなく震えた声だった
「…三成、もう動いてもいいか?限界だっ」
「んっ!ああああっ!」
言った側から激しく突き動かされ、甲高い悲鳴と共に長曽我部の胸に性を飛び散らせた
それでも止まらぬ腰の動き
あられもなく漏れる嬌声
女のような自分の声
途切れることのない快感
「ふあっ、ああっ、もとちかっ、んっ!もとちかぁっ!」
強く手を握り過ぎて爪が食い込む
その痛みすらも消し飛ばす刺激
「っ三成」
「んんっ!ふっ、うあっ!あっ、ああん!」
かぶりを振り涙を流す
何も考えられなかった
「ああっ、もとちかっ、もとちかっ!」
「気持ちいいかっ、三成っ」
「んっ、うあっ、ああっ!」
長曽我部の言葉に何度も頷きながら快感を貪る
涙も汗も垂れ流し、ただ長曽我部の上で乱れた
長曽我部の荒い息遣い
額に滲んだ汗
真っ直ぐに私を射抜く瞳
腰に当てられた大きな掌
そのどれもに欲情した
「もとちかっ!駄目だ、…もぅ、いくっ」
「…俺もだっ、くっ」
「ひ、ぅあ、あっああああんっっ!」
長曽我部の熱を体内に感じながら自分も欲を放った
呆然としながら長曽我部にのしかかる
腰に残る甘美な痺れ
長曽我部に触れた部分の汗が混じり合う
心地好い倦怠感
長曽我部の手が髪を撫でるのに安心して目を閉じた
「ん…」
あのまま眠ってしまったらしく、外からの光はなくなっていた
後処理も済まされ、きちんと着物を着せられ布団に寝かされている
夢でも見ていたのかと不安になった
「起きたか。体、辛くねぇか?水あるぞ」
枕元に座る長曽我部を見つめ、夢ではなかったと安堵した
「…長曽我部」
手を伸ばせば優しく受け止められる
「…好きだ」
「俺もだ、愛してる」
触れるだけの口付けに頬が弛む
幸せだと思った
「こっちに来い」
体をずらし空間を作る
布団の中に入った長曽我部に抱き締められると、涙が出そうだった
「…三成、一生大切にする」
「…馬鹿者」
温かい腕の中で幸せを噛み締めた
「貴様は国主だ。いつか嫁をとり、子をなすのだ。私に一生を捧げる必要などない」
自分の言葉が胸に刺さった
それでも、こんなにも優しさを、愛情を貰ったのだ
それだけで、生きていけると思った
「馬鹿者はあんたの方だ。後継ぎなんざ弟たちがなんとかするさ。
国主なんてのはこの国を、民を守ってくれる奴なら誰だっていいんだ。
俺には一生三成だけでいい」
馬鹿だと思った
そう簡単にいく筈がない
それでも、自分だけを唯一だと言ってくれたことが嬉しかった
想いが重なることの幸福を知った
ここに来てから皆の優しさが、信頼が、長曽我部の愛情が、温もりが積もっていくばかりだ
なんという幸せだろう
「……馬鹿者っ」
長曽我部の胸にすがり付き涙を流した
「馬鹿でいいさ。三成さえいりゃあそれでいい」
温かい掌が背中を叩く
「愛してる、三成」
この地で、長曽我部の側で朽ち果てたいと思った
「…裏切りは許さない」
「なんだ、浮気の心配か?」
嬉しそうに笑う長曽我部に心からの感謝を
愛情を、優しさを、信頼を、温もりを、一生をかけて分け合っていきたい
「安心しとけ、俺にゃあ死ぬまで三成だけだ」
「…私もだ、長曽我部」
強く強く抱き合う
いっそこのまま溶け合ってしまいたいと思った
心の底から満たされる感覚に幸せを知った
温かさに包まれて眠気が襲う
次に起きた時も、この幸せが続くようにと長曽我部の着物を強く握った
「なあ三成、結局あの花の花言葉って何なんだ?」
「…あれは木立かみつれ。花言葉は、心に秘めた愛だ」
うつらうつらと船を漕ぎながら長曽我部の問いに答える
「………俺たちのこと、野郎共の方が俺たちよりも分かってんじゃねぇか?」
苦笑する長曽我部の胸に顔を埋める
温かさと優しい鼓動にすがりつく
「ん、眠いか?…いい夢見ろよ」
額に口付けられ、長曽我部の愛を感じながらゆっくりと意識が闇に落ちていく
「三成、愛してる」
朝目覚めたら、愛してると言おう
たくさん話をして笑い合おう
この先もずっと、幸せが続けばいい
長曽我部の温もりを感じながら心地好い微睡みに身を委ねる
長曽我部の手が髪を撫でる感覚を最後に眠りに落ちた
それは今までに無く幸せな時間
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