ちなのうた

 

 このワークショップは「スサノヲの到来―いのち、いかり、いのり」展の関連イベントとして足利市立美術館(201410261400~)DIC川村記念美術館(201531514001600)で開催された【ワークショップ「いのり」のしぐさ】を元にしています。以下はその時のテキストを加筆したものです。

 

   聖地巡礼「いのり」のしぐさ ― 見つめ合う真名差し ―

 

 私達の話し言葉は、単なる音の連なりに過ぎません。それにも拘わらず、それを捉えた私達は、何故、イメージや意味を発生させることができるのでしょう。この不思議に迫りたいと思いました。手がかりになるのは、やはり、言葉の素になっている音ではないでしょうか。

 初めから言葉があったわけではありません。かつて私達の祖先が何もなかったところから言葉を編み出したように、今までになかった新しい言葉を表そうとすれば、音と私達の間に何か見つけられるかも知れません。

 このワークショップは、水鏡の写真と、そこから汲んできた水を音として、言葉が生まれる水際を体験します。音に秘められている言葉の秘密を感じられたら素晴らしいと思います。

 水鏡をモチーフに選んだのは、反射して映る卑近なもの達の彼方に、世界の始まりを意識することができるからです。

 想像してみてください。水鏡を覗きこめば、そこには、最も卑近なものとして自身の顔が映ります。水に融けた眼差しはあらゆるものを映しだす魔法の鏡です。背景には、大空が広がり、夜の彼方に星が煌めきます。無数の銀河団の最果てには、この宇宙が生まれる以前の時空もなく、全てを内包している混沌とした世界が、漠然とでも思い描けるでしょう。

 水鏡に映った自身の顔は、大元から溢れだした果ての姿のように感じられ、覗きこむ自身の目と、全世界を呑みこんだ混沌の中に融けている、遙かなる時を経て自身となる目が、見つめ合います。眼差しは見るという働きをもった身体の名前なのだと気づかせてくれます。眼差しは真の名を表し指し示すこと、真名差しだったのですね。水鏡に映った自身の本当の名が世界が生まれる以前の混沌の内にともっていたのです。そこから溢れだしたこの名こそ自身の姿を表す音に違いありません。

 世界は光や響きで満ち溢れています。それは根源から溢れだした大いなるものの眼差しなのです。この眼差しと私達の眼差しが見つめ合う時、真の名が姿を表し言葉が生まれてくるのです。それは私達の霊性が光や響きと結ばれ音が生まれるということに他なりません。真の名と音は同じものであり、見ることの本質は、その姿の真の働きに気づき、その名を音によって表すことなのだということが分かります。言葉はまさしく真名差しなのです。

 これが水鏡の写真と、そこから汲んだ水に音をあてる理由なのですが、ここで使用する水鏡の写真と「あ」から「ん」の清音にあてる水は、48ヵ所の聖地を巡礼し、祈り、授かりました。
 水鏡の写真は、根源から溢れだした果ての姿として卑近なものを捉えています。その名としての音を水玉に記しました。中には撮影場所の水が入っています。
 蓋を開けると鈴の音が聞こえますが、さり気なく聖地を感じさせるのが狙いです。鈴は輝き鳴り響くという二つの働きを合わせ持っていますから、変換と統一を繰り返す大いなるものの眼差しを示唆しています。聖地の水に根源的な霊性が働いていると感じさせるための演出です。光や響きが融けている水は音を輩出する霊性の住処であり、祈りの水には音の元となる大いなるものの真名差しが融けているのです。
 この水をスポイトで捉え、一音一滴として小瓶に注ぎ入れ言葉とします。
 配置した水鏡の写真を巡礼し、気になるものがあれば、音を採取して行きます。様々な真名差しが見つめ合い、融け合う水を感じて歩きます。あちこちから採取した音が響き合い真名の言の葉(言霊水)が生まれるのです。
 こうしてできた音の連なりを別紙に記録し、言霊水の入った小瓶に巻きつけます。
 それをキュウピー人形の中に入れて持ち帰ります。
 キュウピー人形は、真の名を宿し、その働きを持って生まれる命のことを考えるために用意しました。
 私達が自身の働きに気づき、それをこの世界に表して、命永らえるには、どんな働きも尊く扱われるよう、その受け皿をみんなで工夫することが求められます。
 そこに霊性を伴った言葉の使命があるのではないかと思います。
 言葉を通わすということは、互いの働きの尊さを受け入れ、それぞれの内で生かそうとすることだからです。音の霊性は相手の心に入って、そこに住む真名差しと結ばれます。感じたり、考えたり、表現したりすることは、この響き合いの中で育まれています。見つめ合う真名差しによって、より豊かな言葉へと成熟してゆくのです。
 平成二十七年 弥生吉日             タカユキオバナ

 

 

 

 実際に足利市立美術館とDIC川村記念美術館で開催されたこのワークショップをネット上で行いたいと思います。一連の作業はタカユキオバナが代行します。

水鏡の写真とその場所から汲んできた水を48組、用意しました。それぞれは、「あいうえお~わをん」の48音を表しています。

画面をスクロールさせ、気になる水鏡の写真を選びます。写真の下には音が表記してあります。これを自由に組むことで言葉を創ります。音の順番を変えたり重複してもかまいません。

組まれた音に対応している水から一音一滴と「音の雫」を集め言霊水を創ります。ここからの作業はタカユキオバナが代行します。

例えば参加希望者が幾つかの水鏡の写真を選び「ちあかみひほみ」という言葉を創ったとします。タカユキオバナがそれぞれの写真が表す音の水を一滴ずつスポイトで小瓶に採集します。紙に「ちあかみひほみ」と記し、それを小瓶に巻き付け、キュウピー人形の中に忍ばせ郵送します。

 

 

 参加をご希望する方

 

 ちなのうた

 注 写真下の表記?は文字化けではありません。今が何時なのか?ここが何処なのか?基準が分からないことを表しています。

 

い水鏡

2014 7.12 13181344

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市伊勢町

足利伊勢神社  手水舎

 

ん水鏡

2014 7.12 14001429

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市家富町

鑁阿寺  手水舎

 

り水鏡

2014 7.12 15151538

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市通3

足利織姫神社  手水舎

 

よ水鏡

2014 7.14 13341456

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市名草上町

厳島神社境内  名草巨石郡

 

る水鏡

2014 7.14 15521658

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市名草下町

大坂地区 ほたる川

 

 

か水鏡

2014 7.15 12021227

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市樺崎町

樺崎八幡宮  手水舎

 

 

け水鏡

2014 7.15 13531424

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市山川町

白鬚神社  手水舎

 

や水鏡

2014 7.15 15411609

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市大沼田町

大山祇神社  手水舎

 

 

に水鏡

2014 7.23 15151533

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市西場町

阿夫利神社  石尊の瀧

 

も水鏡

2014 7.24 15541630

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市南大町

芋ノ森神明宮

 

す水鏡

2014 7.25 13531418

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市緑町

八雲神社  手水舎

 

は水鏡

2014 7.25 16141642

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市八幡町

八幡神社  手水舎

 

 

し水鏡

2014 7.29 13131423

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市名草中町

日光神社周辺

 

み水鏡

2014 7.29 15031615

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市松田町

松田川ダム湖

 

ゐ水鏡

2014 7.30 12531320

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市藤坂峠

精霊さまの墓塔群周辺

 

 

ろ水鏡

2014 7.30 13411409

?天の川銀河  太陽系  地球  足利市松田町
松田神社前  水路

 

 

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