実る頃、彼岸花が咲く。
ストローの先の花火のような花は、体に潜む光が弾けたみたい。
地の中の闇で黒く輝いている、その球根にため込んだ黒い光を浄化しているとでも思い込んだのかしら?
彼岸花の光を一目見ようと茎吹く者はね。光の音を聞いた途端、唇が蕩けたそうよ。
黑い光は彼岸を超える力、決して球根を食べてはいけないよ。
母は逝く前にそう言って笑った。
金木犀の香りでおめかした風が母の髪を梳かしていた。