 |
羽化ズレ対策 |
<<< 雌雄の羽化をシンクロさせよう! >>> |
大人気のヘラクレスオオカブトムシ。
しかし、往々にして聞かれるのが、♂(オス)と♀(メス)の羽化が半年以上もずれてしまうということ・・・
具体的には、♀が先に羽化してしまって、半年もたってからやっと♂が羽化してくるため、その後、♂が性成熟して交尾できるようになる頃には、♀はとっくに旬を過ぎたおばあちゃん。
生き物って、概して男性より女性の方が早熟なんですね。
折角、手に入れたカブトムシが、こうもずれて羽化しちゃったら、もう累代は、ほぼ絶望になってしまいます。
それも初令から飼育したなら、ゆうに幼虫期間だけでも1年以上、飼育環境によっては2年も手厚く面倒みてきたのに!
泣くに泣けない結果となるわけです。
しかし、この羽化ズレ、当店ではある方法で完全に解消しています。
それも、とても簡単で、誰にでもできるやり方なのです。
もちろん、ヘラクレスだけでなく、グラントシロカブトやヒルスなども同様に♂と♀の羽化をちゃーんとシンクロするようにコントロールしております。
いえ、それどころか、下手すると、♂の方がよほど早く羽化してしまうくらいです・・・
しかして、その方法とは!
・・・その前に、従来よく言われている羽化ズレ対策について、そのメリット・デメリットを検証してみましょう。
1.♂と♀を一緒に飼育する
大型のコンテナに3令幼虫を丸太飼いする方式です。
雌雄を同居させることにより、蛹化時のスイッチを同時に押させるという もので、当店では試したことはありませんが、効果はあるようです。
但し、非常に場所をとります。
ヘラクレスなどの大型種は、蛹化スペースを大変に長く取りますので、 大型の衣装ケースで、せいぜい数頭飼育するというまさに殿様スタイル になります。 その上、温度管理まで必要になるのですから、日本の平均 的なご家庭では、現実にはちょっと難しいんじゃないかと思います。
2.温度差をつけて管理する
3令になって性差を見分けられるようになったら、♂は温度の高い場所で 管理し、♀は温度の低いところで管理する方式です。
2,3度も違えば、成熟の進み具合がかなり違ってきて、うまくいけば 同時期羽化が狙えるってことですね。
でも、あくまでもうまくいけばの話です。
それと、それほど温度差が出る場所が、果たしてうまく見つかるか? という問題もありますよね。
そして、何よりかにより、♂を加温して早く成熟させちゃうってのは、言い 換えると、わざわざ好んで小さい固体を作るようなもの。
本当なら少し低めの温度で大きな幼虫にし、でっかくて立派な♂を拝み たいところなんですが・・・そこを犠牲にしてでもという方式なわけです。
こうしてみてきますと、羽化ズレ対策の代表的な2つのやり方は、一長一短があることが分かると思います。
勿論、飼育スペースに余裕があって、温度管理もバッチリできる方にとっては、こういう方法でもOKでしょう。
でも、当店みたいに、ブリードルームが4畳半のスペースしかなく、その上、何千もの生体に囲まれている場合、到底、この方式ではやっていけません。
恐らく、殆どのカブトムシ愛好者の皆さんも同様なのではないでしょうか?
つまり、本音は、できるだけ省スペースで、面倒な温度差管理もしないで、その上、お金も使わずに、うまいこと羽化はシンクロさせたいってところでしょうか。
大変に虫のよい話に聞こえますが、実際に方法はあります。
以下、詳しく述べていきます。
♀の幼虫は3令になったら、ぺらぺらのプラスチックの丸カップ(なぜかこの業界ではプリンカップという。)で飼育します。
幼虫の雌雄判定方法は、こちらを参照下さい。
>>> 幼虫の雌雄判別法 >>>
丸カップの大きさは、せいぜい600ccで十分です。
糞だらけになってきたら、マットを交換してあげますが、3令ともなると、この大きさのカップの場合、思っている以上に早く食べきってしまいます。
マットがなくなると暴れて逃げようとしたり、最悪は餓死しますから、十分に注意してあげて下さい。
そして、丸々と大きく太ってきて、そろそろ蛹化しそうな時期がきたら、糞が目立たない状態であっても、こまめにマットを交換してやって下さい。
そのとき、マットはふんわりとつめてやります。
ここが最大のポイントです!
幼虫は、蛹室をこさえるために、まず周囲のマットを押し固めます。
よくケース内で蛹室を作るとき、片方にマットがぐっと偏っているのを見かけると思いますが、これがその一段階なのです。
しかるに、新しいマットにどんどん交換されてしまうため、幼虫としては周囲を固める暇もなく、結果、蛹室がいつまでたっても作れない。
蛹室が作れない以上、蛹化することも叶わず、かくして餌を食らって、ふて寝する毎日となるわけです。
こうして♀をひっぱっているうちにも、半年もすれば♂が蛹化の時期を迎えます。
♂が蛹化したことを確認したら、プラケースの小に♀幼虫を移します。
底を1/3から半分、固めてやると、もう、焦れに焦れていた♀幼虫は、それこそ「あっという間」に蛹室を作り、さっさと蛹化します。
かくして、見事、♂♀の羽化時期をコントロールすることに大成功!
めでたく累代飼育への第一歩を踏み出せる次第となります。
さて、ここで注意点を幾つか。
なぜぺらぺらの丸カップを使うのかというと、一つは値段が安いということもありますが、軟らかい壁の容器だと蛹室を作り難いという特徴があるからです。
もしも100円均一で売っている、固いプラスチックの容器を使うと、マットを押し付けて固めやすいため、そんな狭い容器の中でさえ、あれぇ!と思う間に蛹室を作り、蛹化されてしまうのです。
また、3令になってからのマット交換は、できるだけこまめにやるようにする必要があります。まだ糞だらけになってないから・・・と油断していると、必ず痛い目にあいます。
幾らぺらぺらの丸カップでも、もう、蛹化したくてうずうずしている♀は、マットの上部を固めて蛹室の底みたいな形にならし、その上で蛹化してしまうのです!
ちなみに、そうなっても、全く問題なく綺麗に羽化してきます。
実際、かなり大型の♀でも、そんな状態で羽化不全は一件もありませんでした。
しかし、そうなっては手遅れですので、日々、よく観察し、もしも彼女が怪しい動きをしていたら、マットを一度出して、また、やわらかく詰め直してやって下さい。
反対に、この特性を活かして、♀を蛹化させるにあたり、それまで使っていた丸カップに、ぎゅーっとマットを固く詰めてやるという手があります。
そこに♀幼虫を投入し、より小さなスペースで、蛹化・羽化させてやろうという魂胆です。
しかし、やはり本来の蛹室を作るためのスペースよりも小さいため、プラケースの小に投入したときに比べ、蛹室を作ることに手間取り、結果として、蛹化するまでの期間が若干、長くなる傾向にあります。
このため、蛹化時期の人為的なコントロールという観点からは、やはり、プラケースを使う方式をお勧めしたいと思います。 |
|
|