left-image
コラム

<<< 美麗なる清掃者 >>>

皆さん、糞虫という虫をご存知ですか?


ファーブル昆虫記でお馴染み、エジプトではお守りにもなっているスカラベが有名ですよね。 この仲間は「タマオシコガネ」といって、糞を丸く切り取り、コロコロ転がすユニークな習性で広く知られています。

(スカラベについては、サイトでも熱く語っているページがございますので、ご興味のある方は、ぜひ、どうぞ。
 → >> スカラベ飼育奮戦記へ >:> )


わが国にも、カブトムシみたいに角がりりしい「ダイコクコガネ」や、非常に美麗な体色をもつ「センチコガネ」が、糞虫の仲間としております。


そう、糞虫は、世界中のありとあらゆる場所に散らばって大活躍している昆虫なのです。
どう活躍しているかって?
その美しい肢体で死に虫愛好家、あっ、いや、標本収集家の方に大変、珍重されているってことです。


・・・滑りました。
いえ、本当は、この世のあらゆる場所で、汚れ仕事に従事してくれているってことなんです。


およそ食物を口から入れて消化する生物というものは、それを外に排出するというプロセスを免れません。 すると、その排泄物は一体、どうなるのか?


人間社会は、お水でジャーっと、こう、流して、はい、お仕舞いってなスゴい仕組みを作ったものですが、野性動物はそうは参りません。
うちの犬みたいに飼いならされていれば、決まった場所にてエチケットを守るのですが(大抵はですが)、大方の動物というものは、そんなことにお構いなしです。


勢い、あっちこっちで臭いたつよな凄まじい光景が繰り広げられ、この世はまさにう○こ地獄。当然、不衛生は伝染病を招きますし、あまりに濃い肥料は植物を枯らしてしまいます。


しかし、現実にはそうはなっていない。
今日も世界は平和に保たれるべくして保たれている。
少なくとも、この問題で野山が悩んでいるとは聞いたことが無い。


これは全て、影の功労者がいるおかげなんですよね。


例えば、有名な話ですが、オーストラリアでは羊や牛が多く牧畜されておりますが、当初、その糞の始末ができず、大変なことになってしまったとか。
それで、糞虫が彼の地に投入され、事なきを得るまでの完璧な自然循環を作り上げたということです。


恐竜が活躍した時代にも、糞虫は多くいただろうと推測されています。
かの大型生命体が一回にひりだしたであろう量は、現代の動物では想像もつかぬほどのものがあったに相違ありません。
しかし、糞害で彼らが滅びたという説はいまだ聞いたことも無く、きっとこの頃から既に糞虫たちは世界中で地道な活動を展開していたに違いないということなのです。


或いはメガニウラというトンボのように、当時の糞虫は非常に巨大だったのかもしれません。なにせ餌は豊富だし気候は温暖・・・いや、二酸化炭素が多くて結構、暑かったらしいですね。
ヘラクレスみたいに大きな糞虫がいたかもしれないなんて思うと、とても楽しくなりませんか?(私だけ?)


残念ながら、昆虫は死ぬと体がばらばらになってしまい、化石として残ることは、琥珀に閉じ込められるなどのチャンスがない限りほぼありません。
当時、どんな姿の糞虫が活躍していたのか、想像の領域でしかないのですが、私はきっと、今と同じように、かっこよく、そして、とても美しい姿だったろうと思います。


糞を始末するという、誰もが嫌がりそうな仕事を、誇り高く、もくもくとこなすひたむきなその姿。
自然は、そんな彼らに、美麗な容姿を与えることで大いに報いたんじゃないのかなと思うからです。


糞虫ってえらい。いや、よく出来た虫だ。感心、感心・・・
ここまで読むと、きっと、そう思うでしょう。(^-^;;


しかし、ちょっと角度を変えて考えて見ますと・・・
この糞虫の食性は、この世に生命体がある限り、どこでだって生きてゆけるということを意味するわけですよね?
これはつまり、誰もが嫌がるものをあえて食料に選択したことで、ライバルを排除し、どんどん生息地域を広げてゆけることになります。
種としての発展を考えた場合、これほど、したたかな計算はないのです。


美麗なる清掃者・・・しかして、その強烈なる食性は、まさに糞虫の世界戦略だったのであります。

>> 戻る >>

Copyright (C) 2001- 3horn All rights reserved