*今年は、719番からです。
平成23年
719.初春やお神酒抱えてぶらり旅
720・夏屍戦知る人また一人・
721・上り坂止まり坂白く息切れ
722.マフラーにくるまれて寝る猫
723・生足を出して根性凍て渋谷
724・今宵又をみな一息小正月・
725・目覚むれば汗染む衣しどけなく・
726・置き文は人肌恋し寒見舞ひ
727・咳をして空を見上ぐ
728・箸持ち変えて煮凝をぐずぐず
729・冬月夜通勤電車通過駅
730・満ち欠けは一夜のゲーム冬の月
731・天中に欠けては満ちる冬の月
953.宵越しやもう一献と初日待つ
954.暁の酒事粛々と初日待つ
955.初電車座席片隅酔ふて座す
956.お出かけは好みの柄の春著着て
957.雨降るる今日は休戦嫁が君
958.舞ひ終り一息ついた獅子頭
959.初風呂や初石鹸で泡つくり
960.ひめ始め豆電球と吐息かな
961.正夢は昨日見た夢初景色
962.初春や浮世の風もまた新た
963.一人より酒蔵同盟年酒酌む
964.喰積みや螺鈿の蓋の艶やかに
965.流水で布巾清めて包丁始めとす
966.掃初め先ずは表看板手を合わせ
967.初駅は今年も世話に渋谷駅
968.胃ももたれ御神酒拝借三日かな
969.坂の上薄き一枚寒の月
970.凍てし月丸き砂上に突き刺さり
971.冬の空付箋の月の剥がれ落ち
972.初仕事記憶のかけら始末せり
973.手から手に七草粥を賜りし
974.老ひかたや深く被りし冬帽子
975.冬の坂歩けば細る影法師
976.二人してインディアンサマーと影遊び
977.二人して目深に被る冬帽子
978.寒荒れや商売繁盛水仕事
979.息白くをみな囁く独り言
980.問はれれば振り向きざまに咳をして
981.湯ざめして次の扉の隙間から
982.障子貼るをみなの影のすり抜けて
983.息を止め音を殺して襖閉め
984.点と点結ぶ線あり去年今年
985.冬の身の老ひの硬さや長靴打つ
986.懐手折れた鉛筆握ったまま
987.冬北斗神の柄杓のゆるぎなく
989.寒北斗神の宿りし柄杓かな
990.おいでませ神の杯寒北斗
991.傷隠すコートの襟の深さまで
992.八方から近づく気まぐれな雪
993.夢や夢触れて寒月醒めて酔ひ
994.とっぷり暮れて寒月彩放ち
995.テスト用紙囲炉裏にくべた記憶
996.とろとろと榾火近づく足の裏
997.温い文字は雪国からの便り
998.気がつけば後ろ髪ひく今朝の春
999.炉話は百物語の後ろから
・・・お芽出度うございます。やっと大台に、昭和42年中学生の時の・・・
1000.雪とけて校庭光る水たまり
夕焼けに浅間を見れば赤い雲ひこう機とびて黒いかげなり
1001・福は内鬼の居場所を残しつつ
1002・鬼は外福も一緒に躍り出て
1003・年男歩けばすがる福の道
1004・春立つやこの世の猫の尻尾まで
1005・たそがれて猫は窓辺に春立ちぬ
1006・花衣放てば離る風の道
1007・花衣風にもたれてゆらぎをり
1008・薄衣のこぼれて放る春の夢
1009・風惑ひ行方定めぬ花衣
1010・花疲れ解けた帯締めしどけなく
1011・ふらここやふはりと空へちかづきぬ
1012・メール切り帽子目深に冴返る
1013・ふらここやふはりと空がちかくなる
1014・袖口に風のお土産花二片
1015・天翔る空中ぶらんこ春の夢
1016・花に入り花に染まりし花衣
1017・ふらここやふはりと飛んで雲に乗る
1018・事切れて息が桜の蕊降らす
1019・天と地と繋ぐブランコ平行線
1020・花疲れ畳に残す帯の文字
1021・身の丈を忘れて座る半仙戯
1022・風誘ひ指に絡まる花衣
1023・花衣絡む指からすり抜けて
1024・ブランコは天地を繋ぐ鎖(クサリ)持つ
1025・点と線継いで戻りしつばくらめ
1026・つーっと来てひょいと乗る寝屋燕来る
1027・咲き初むるネオンの街の躑躅かな
1028・電飾の華やぐ街にさつき咲く
1029・小鉢には食むほど香る白き独活
1030・流水にアウトレットの茄子踊る
1031.流水の水を弾いて茄子溢る
1032.流水の笊にすくへば茄子踊る
1033.さっくりと切れば茄子紺白さ映ゆ
1034.天と地を繋ぐブランコ鎖持つ
1035.天と地を繋ぐブランコ尻乗せる
1036・思ひ馳せ北国原野夏至白夜
1037・夏至の夜や酒はほろりと朝(アシタ)まで
1038・そよそよと汝が香を吸はん団扇かな
1039・流水に弾ける茄子を笊に盛り
1040・遠ち近ちに潜む竹の子藪ん中
1041.ひや酒や心房四つ沁みわたる
1042.百眼の羅漢に集ふ蜻蛉かな
1043.水面から月見る月を夢に追ひ
1044.たそがれて猫見る先の居待月
1045.たそがれて夢見る先の寝待月
1046.穴蔵の酒場に蜻蛉惑ひ入る
1047.瞼(マナブタ)に吐息近づく寝待月
1048.すり抜けた衣あと追ふ寝待月
1049.迷ひ込む蜻蛉赤いかしょっぱいか
1050.ぼけたかな一つ忘れて六草粥
1051.重詰や三つ重なる玉手箱
1052.酌みかはすあうんの友と年酒かな
1053.もんもんとあれやこれやの寝正月
1054.福引やティッシュの数の参加賞
1055.初占三十三間的を射る
1056.重詰や三段重ね玉手箱
1057.灯を消して窓に影おく聖夜かな
1058.恙なく繋ぎし此岸去年今年
1059.息災や此岸を繋ぐ去年今年
平成28年 今年は1060番目から
今年は少し頑張って・・・・・・・・・
1060.初春や樽に凭れて爆酔し
1061.樽は空生酔続く三日かな
1062.酔ひ醒めは夢か幻小正月
1063.花に逢ひ花を巡りし花衣
1064.一筋に花連なりて風の道
1065.一張羅靴も凛々しき新社員
1066.山葵田にひねもす流る瀬音かな
1067.一息に花ほころびてちりぢりに
1068.歩み止め風船結ぶ乳母車
1069.メール打つ指軽やかに風光る
1070.里親にこの娘猫の子もらはれて
1071.音無くも逆さ風鈴チューリップ
1072.這い出でて空見上ぐればチューリップ
1073・もたげれば子猫はふはりふはりかな
1074・蘂残し花ちりぢりにネオン街
1075・談話室少し窓開け薄暑かな
1076.ため息は花の蘂降る閑古鳥
1077.蘂残し花はちりぢりネオン街
1078.花の窓愛でる切り絵の額にかへ
1079.いにしへを一と日に語る春今宵
1080.談話室少し窓開け街薄暑
1081.花の窓開ければそそぐ風友に
1082.何欲しい夜店を探す介護かな
1083.時空より雨戸を叩くはたた神
1084.うつらつらあの世とこの世昼寝人
1085.細雨花ばら伝ふ雫かな
1086.萌へ出づる若葉の調べ梢まで
1087.をとめらの衣易しき街薄暑
1088.光満つ母屋の庇雪滴
1089・見上ぐれば梢の先の梅二輪
1090.卒業しハローワークの門叩く
1091.後朝のをみなのくさめ芳しく
1092.衣擦れに起こされ惑ふ昼寝かな
1093.衣擦れにそば耳立てて日向ぼこ
1094.風ゆらぎ指に絡まる花衣
1095.分け入れば落葉時雨の苫谷かな
1096.身を清め川面に映す番鴛鴦
1097.百眼の羅漢に集ふ蜻蛉かな
1098.水面から月見る月を夢に追ひ
1099.すり抜けて衣擦れ追ひし寝待月
1100.そよそよと汝が香を吸はん団扇かな
1101.穴倉の酒場に惑ふあきつかな
1102.夏至のや酒はほろりと朝まで
1103.ざっくりと切れば茄子紺白さ映ゆ
1104.流水に弾ける茄子を笊に盛り
1105.ツーと来てヒョイと寝屋までツバメ来る
1106.竹の子やじっと籠りし藪の中
1107.見て聞いて全てを忘る雷一(ライヒトツ)
1108.膝枕落ちる手前の昼寝かな
1109.就活や大和撫子雷一
1110.一と日毎色も途絶へし額の花
1111.夏屍戦知る人また一人
1112.目覚むれば汗染む衣しどけなく
1113.風止んで空地にむせぶ草いきれ
1114.働けど発汗遅き六十路かな
1115・梅雨あがり息切れ坂を休みつつ
1116.日は天に塞ぐもの無し汗しとど
1117.集ひ来て華燭の宴豊の秋
1118.軒先に溢れし秋果目に優し
1119.急く路は降る初雪に消えかかり
1120.離れ寄る波に遊びし浮き寝鳥
1121.上り坂落葉は風に先に行く
1122.河豚食うて寿命一服幾ばくぞ
1123.時雨打つ工事現場のクレーンまで
1124.窓少し開けて爪弾く小春人
1125.冬立ちて未だ影おくきりぎりす
1126.湯冷めする携帯メール片便り
1127.戯れに独り綾取り絡む指
1128.海の香を乗せて殻舟牡蠣すする
1129.上り坂先に落葉は風と行く
1130.寒きほど打ち重なりて毛布かな
1131.木枯しや現場の鉄板唸るまで
1132.ばばさまのけんちん汁は具沢山
1133.閨怨のくるまる毛布夜半の風
1134.風名残り落葉崩れて塵となし
1135。うつるならうつせば逃げる風邪の神
1136.焼鳥や煙に巻かれた串の数
1137.昆布一枚揺れて湯豆腐良い加減
1138.急く(セク)道は花の初雪敷き詰めて
1139.息切れて人に越される師走かな
1140.それぞれの思ひたづさへ初句会
1141、初春や触れるもの皆ことほぎて
1142.ほどほどに生きて堪忍去年今年
1143.手招いて共に悪戯嫁が君
1145,息切れて人に越される師走かな
1146,初春や浮かんだ地球面てから
平成29年 今年は1147番目から
1147.悪戯に嫁が君行く無礼講
1148.口含み顔もあらたに初手水
1149.湯煙のソフトフォーカス初景色
1150.手に届く方丈住まい寝正月
1151.年新た引きずるものも数多(アマタ)あり
1152.網棚に手袋ままの終電車
1153.影に負ふ切れた街灯寒の月
1154.鐘の音に目覚む心安(ウラヤス)去年今年
1155.女子我慢素足ファッション冬の街
1156.年賀打つ指軽やかにスマホかな
1157.ほころびも何かの記念ちゃんちゃんこ
1158.寄り添いひて言葉を交わす白い息
1159.初日記筆圧深く背を伸ばし
1160.行潦(ニハタヅミ)落ちる椿の静寂かな
1162.待ち人の項を濡らす春の雨
1163.彼岸道引きずる足の恨み節
1164。かぎろひの工事現場に揺る重機
1165.卒業し履歴書握り町工場
1166.細る身を奮ひ立たせて寒に入る
1167.ほのほのと火は柔らかき春うつら
1168.花に会ひ花をくぐりて花に染む
1169.花宴踊る酔客手手と手と
1170.花祝ひ酒は人肌ぬしいづこ
1171.向かふから衣ふはりと春来たる
1172.取れたての透ひた衣の烏賊洗ふ
1173.かさこそと命一つの繭の部屋
1174.帯を解く祭疲れをほぐしつつ
1175.箸すすむ安芸の土産の穴子飯
1176.後ろから衣べったり夏来たる
1177.花宴踊る酔客手手と手と
1178.太陽は早起きだ今日は夏至
1179.戯れはストロベリームーンのキッスから
1180.待合は夜の噴水抜けし道
1181.待ち人は冷酒も癒えて人肌に
1182.サックリとサラダボールにトマト掻く(カク)
1183.団扇持つ湯女の囁き浮寝かな
1184.夕焼や猫逆光に黄昏て
1185・此岸から虹の架橋彼岸まで
1186.塊の一つ枝から枇杷を剝く
1187・総員帽を振れ夏の棺に
1188・水無く海水飲んだ父の終戦
1189.待ち人は夜霧に濡れて街角に
1190.秋深し水の緩みは凛として
1191.ほくほくと塩指先に衣被
1192.大いなる菊一輪の玉手箱
1193.爽やかに海の香りを纏ひ立ち
1194.追うふほどに逃げる袂や秋の風
1195.豊穣の踊る実る穂野分かな
1196.場を変へて肴あらたに新走り
1197.爽やかに海の香りを纏ひ立ち
1198.追うふほどに袂は逃げる秋の風
12月17日
1199.風といふ訪ね人あり虎落笛
1200.極寒の動かざること息一つ
1201.雪ほろり少し窓開く隙間から
1202.一人居の雪見の宴スマホ持ち
1203.風しまき鳴る電線や浜の町
1204.凩やシャッターチャンス揺るぎなし
1205.灯を点し布団をくずす旅の宿
1206.カサカサの落葉をひろふ掌
1207.街照らす冬満月の面かな
1208.吹きすさぶ開かずの窓や目貼張る
1209.風に問ふ訪ね人あり虎落笛
1210.風に問ふ人恋しくて虎落笛
1211.裏戸からおとなふ風や虎落笛
1212.身ほとりに消ゆる風花里の道
平成30年
1213.身ほろりに寄せては逃げる宝船
1214.うたたねの寄せては帰る宝船
1215.豊の御酒溢る盃年新た
1216.影をひき雪降る街の宿に入る
1217.人の群寒さしのぎに身は置かる
1218.もう一献空を掴みし寝酒かな
1219.帽目深か雪見る月の照り返し
1220.くさめしてほむらの中に手をかざす
*2月11日
1221.事とはば根岸の里の糸瓜かな
1222.踏み入れば根岸の里の糸瓜かな
1223.道なりに糸瓜の里の庵まで
1224・くさめしてほむらにかざす掌
1225.静かさや虚空を繋ぐ春の雨
1226.もう一献空に差し上ぐ寝酒かな
1227.二三本硝子隔てて糸瓜垂る
1228.ガラス戸を透かして見せる枯糸瓜
1229.語らぬも根岸の里の枯糸瓜
1230.二三本玻璃戸に映し枯糸瓜
1231.二三本垂るるがままに枯れ糸瓜
1232.垂るるまま糸瓜の水も乾きけり
1233.垂るるまま糸瓜の水も乾きけり
1234.水涸れて垂るる糸瓜の軽さかな
1235.月朧手紙の文字の薄化粧
1236.清明や風に誘はれ野に遊ぶ
1237.清明や集ひて遊ぶ野に山に
1238.夜もすがらすだく蛙の声を聞く
1239.降れよ降れ盆に帰らぬ桜かな
1240.降れや降れ盆に帰らぬ花の舞ひ
1241.背伸びして紐解く花に近づきぬ
1242.燈朧ひもとく文の薄化粧
1243.花つぶて風に追はれて崩れけり
1244.花つぶて逃げては消える風遊び
1245.ひとしきり寝待の宵や花疲れ
1246.身ほとりに風にまろまる花の塵
1247.座を外す急ぎ旅人花を置き
1248.座を辞して春爛漫の帰路に佇つ
1249.鞄から何処の花の零れけり
1250.行きずりの過客の背なに花の追ふ
1251.一ひねり矢立てに止まる花を見て
1252.鞄から溢れし花の玉手箱
1253.降れや降れ盆に帰らぬ花の塵
1254.降れや降れ盆に帰れぬ零れ花
1255.花つぶて風に追はれてちりじりに
1256.誘はれて日向酒酌む春の園
平成31年
1257.初春や言問ふ姿軽やかに
1258.だらだらと二十日正月居候
1259.穴倉の春待つ人の届かざる
1260.散る薔薇や重なり合って一ト日過ぐ
1261.総員帽を振れ花と逝く戦さ人
1262.風に解くたゆたふ氷棒で突く
1263.注ぎ注がれ熱燗すする宵の口
1264.ガツンそれ行け韋駄天ラグビー戦士
1265.草臥れて行く年迎ふ半歩から
1266.忍び逢ふ山茶花時雨抜ける道
1267.ほのほのと囲炉裏囲んで伽話し
1268.願はくばコロナコロリと春一番
1269.曇天のキティ華やぐ夏一ト日
令和3年
1270.汗しとどだらだら坂は修行かな
1271.水鏡双子の月は風に消え
1272.水鏡双子の月を身にやどし
1273.コート着る千切れた釦付けてから
1274・湯冷めして羽織る一衣の芳しき
1275・日をまとひ留どめし雫氷柱かな
1276・地の萌える春の祭典遠きかな
1277・地鳴り舞ふ春の祭典とおきかな
1278・冬銀河辷る地上に降りそそぎ
1279・剥くほどに打ち重なりぬ蜜柑かな
1280・迎え火は灯すキャンドルクリスマス
1281・十六夜や背中にそそぐ吐息かな
1282・押せば引く引けば押さるる虫の声
1283・風乱れ花ちりぢりに定めなく
1284・風の道花の栞を解き放ち
1285・水鏡双子の月を身にやどし
1286・日を集め雫にたくす氷柱かな
1287・日をまとひ雫にたくす氷柱かな
1288・良きことだけを思ひつつ蜜柑食ぶ
令和4年
1289・初春やいまだコロナも共生す
1290・福は内仲良く団欒鬼も内
1291・引き出しの数を数える今日の春
1292・春立つや握る手摺の柔らかに
春立つや握る手摺も力入る
1293・福は内仲良く団欒鬼も内
1294・澄み渡る風受く春分の日
1295・徘徊す花に浮かれた散歩かな
1296・竹皮をむいて身を知る古希祝ひ
1297・薄衣張り付く肌の汗しとど
1298・竹皮をむいて身を知る古希祝ひ
1299・一身にまとはりつくや蝉の声
1300・あ~死ぬ身の丈の片蔭がない
1301・放課後の汗の残り香女学館
1302・古希くれば杖で払いし蝉の声
1303・泉湧く事切れ前の夢に覚め
1304・香水の道誘はれて猫の声
1305・手足伸ぶ指先濡らす汗の珠
1306・炎天下動くもの皆日に消さる
1307・炎天下だらだら坂の揺らぎかな
1308・片蔭にひそりと残す紙風船
1309・片蔭に動くかざることガラス玉
1310・手を打てばスポンと答ふ暑気払ひ
1311・風入れてレモンスカッシュジン少々
1312・溽暑かな記憶の箱が解けていく
1313・夜の秋記憶の箱の蓋が開く
1314・盃に月を浮かべてもう一献
1315・行きずりの過客を誘ふ月見酒
1316・十六夜の残り香追ひし道標
1317・言い訳は立待月のスマホにて
1318・草臥れて窓を背におく居待月
1319・大いなる胸の高鳴り寝待月
1320・空掴み片手は備前月見酒
1321・溢れんと備前豊かに月見酒
1322・溢れんと備前たまはり月見酒
1323・酔ひ半ば銀座の虫はてふと鳴く
1324・空高くふはりと飛機は点に消え
1325・冬空へ飛機は満席どっこいしょ
1326・柿丸げ落ちは逃げる無縁坂
1327・積み上げて白菜深き轍かな
1328・たわわなる柿をもろとも箱に入れ
1329・立待の踵を返す無縁坂
1330・柿落ちて転がり逃げる無縁坂
1331・とーりゃんせ唄って過ぐる去年今年
1332・鳴き止みし猫間障子に手を掛けて
1333・忘れることもまた一興年惜しむ
1334・リヤカーに白菜積んで子も積んで
1335・冬日和ギッタンバッコン水平線
1336・通りやんせお先に失礼去年今年
1337・冬空へ飛機はふんはり持ち上がり
1338・火葬場の唸る轟音冬火かな
1339・火葬場の生業人の厚着かな
1340・火葬場へ棺かなわぬ冬火かな
1341・静かさや嚏一声ここにあり
1342・静かさや嚏一声吾一人
1343・鳴満る梵鐘遠く去年今年
令和5年 めざせ1500句
1344・先ず一献挨拶前の年酒かな
1345・吊り革に手と手が触れる初電車
1346・ほどこしはほころびの数嫁が君
1347・蓋取れば揃ふ銀シャリ初炊ぎ
1348・初湯浴ぶ俄か洗礼受けるごと
1349・片割れの手袋置かる非常口
1350・御降りや訪ひ先の道を変へ
1351・見上げれば揺れる吊り革初電車
1352・障子から抜けて駆けだす影絵かな
1353・初春や昨日の風を連れて来し
1354・初春や昨日と違う隙間風
1355・初風や昨日もろとも連れて来し
1356・ほどほどに年酒傾け古希祝い
1357・身を抱く鋼の樹皮や冬木立
1358・植されて触れて身の丈冬木立
1359・たんと食べ歯には優しき若菜粥
1360・背中から大いなるもの寒に入る
1361・しばれるや留める釦の細き指
1362・噛みしだく齢の数や七草粥
1363・待ち人は四温日和の午後とあり
1364・灯火に集ひて縋る(すがる)寒の闇
1365・大寒やふんばりどころ塗りつぶし
1366・コート着る細き指先釦留め
1367・風疼く電線鳴くや通学路
1368・風しまく電線鳴いた帰り道
1369・一人居の首まで浸かる炬燵かな
1370・主なき片手袋の鎮座して
1371・掃き収め今日も新たな落葉かな風
1372・事無きやコロナ来るなと年暮るる
1373・かざす手は大人も子供焚火かな
1374・踏みしだく落葉の上にまた落葉
1375・寒の凪見えなき壁を割り渡る
1376・灯火(トモシビ)に集ひて縋る(スガル)寒の闇
1377・一本づつ街灯揺らす風凍ゆる
1378・あの角を曲がれば見える寒の月
1379・風にぶく電線鳴くや凍てる道
1380・寒の道電線鳴くや風にぶく
1381・神木にまとはりつくや寒の風
1382・風満ちてなぞる目貼りの段差かな
1383・風しまき電線鳴くや道一つ
1384・凩やなびく暖簾に誘はれて
1385・木枯しに押されて入る赤提灯
1386・甘くとろける箱バレンタインの日
1387・とろける宝石箱バレンタインの日
1388・雪洞に火をたすころや夜半の雛
1389・もう一人箱に入らぬ雛納め
1390・もう一つ入らぬ箱や雛納め
1391・凩やたなびく暖簾赤提灯
1392・両の手に月をもたげるファインダー
1393・せはしなく扇子を聞かす老いの風
1394・草臥れて届かぬ先の片かげり
1395・干からびて死神いたる片かげり
1396・片蔭に死神まねく出入口
1397・風に触る死神宿る冬木立
1398・死神が扉を開く片かげり
1399・草臥れて辿り着かなき片かげり
1400・両の手に月をもたげるファインダー
1401・月陰りだらだら下る老いの坂
1402・老いてなほ届かぬ先の後の月
1403・風に揺る死神宿る冬木立
1404・ファインダー月をもたげる掌
1405・初夢は龍に跨る七福神
1406・草臥れて死神まねく片かげり
1407・風忍ぶ揺れる木立や冬景色
1408・香を残し見返り美人冬の月
1409・風遊び揺れる木立や山笑ふ 春
1410・駒形の胡坐久しきどぜう鍋
1411・干からびて我が身散々道炎ゆる
1412・呼び戻す記憶の陰の秋思かな
1413・咳く人に席をゆずりし少女A
1414・掛乞や唸る鐘の音閻魔帳
1415:身を沈め湯はまったりとうそ寒し
1416・息をかけ窓に字を書く火恋し
1417・雨かむるほどの静けさそぞろ寒
1418・とぼそ抜けくっさめ一つ伽藍洞 とぼそ-扉
1419・ひあはひに揺れる影なす月朧 春
1420・ひあはひを抜けて風来る夏の月 夏
1421・ひあはひに影重なりし十三夜 秋
1422・ひあはひに影立ち尽くす冬の月 冬 ひあはひー家と家の間の狭い所
1423・雨かむるほどの静けさそぞろ寒
1424・初夢は独り占めするベッドから
1425・不揃ひのレモン店先行き遅れ
1426・鏡背ににき肌さらす十三夜
1427・うたた寝や錦野山に迷ひ来て
1428・手折りたる錦の野山分け入りぬ
1429・縁側に並べていたる枯れ糸瓜
1430・呼び戻す帰る席なき秋思かな
1431・手を打てば野山の色に染まりけり
1432・コマ送り釣瓶落しの車窓かな
1433:うたた寝は錦野山に迷ふこと
1434・にき肌を鏡に映す十三夜
1435・鏡背ににき肌さらす十三夜
1436・赤錆の看板通り冬の雨
1437・短夜や赤錆匂ふ細き雨
1438・呼び戻す記憶揺らぎし秋思かな
1439・手を打てば錦野山に木霊かな
1440・凩が人かき分ける交叉点
1441・木枯しや人を吹き抜け交叉点
1442・一椀に柚子一片の香りかな
1443・刃先より弾けし柚子の香りかな
1444・柚子打ちや一つ遅れて肩に落つ
1445・一人居のメール打つ音冬の雨
1446・冬の雨逢瀬の宿の窓を打つ
1447・盃に初空映し迎へ酒
1448・衣手に初空入れて夢を追ひ
1449・初夢は夢降る街の交叉点
1450・風音は気になる隙間空っ風
1451・初空を袂に入れて夢枕
1452・初夢は時空を入れた夢枕
1453・初空や雲一刷毛の富士の山
1454・また一つ読点つなぐ節季かな
1455・火酒を一気に呷る桃源郷
1456・草臥れて座るベンチに小春風
1457・三寒の日に照らされて街細り
1458・四温の夜息する街に月満ちて
1459・三寒の日に重なる通勤快速
1460・三寒四温の夜快速電車先越され
1461・風凪て交叉の街は人いきれ 夏
1462・事無きや終の棲家も年暮るる
1463・コート着せ背中に流すうなゐ髪
1464・雪の精イルミネーション染まる河
1465・冬籠り出でよ街中赤提灯
1466・冬籠り出でよ穴倉街中へ
1467・冬眠の獣出でしや傷深く
1468・短日や先行く人を見失ひ
1469・なんとなくただなんとなく冬に入る
1470・取り急ぎ跡を残して師走人
1471・ファインダー地球も月も凍て止まる
1472・冬の夜や街灯照らす家路まで
1473・夜半の冬唸るビル風現場佇つ
1474・幕下ろし夜半の凩聞き寝入る
1475・ポケットに捨てる鍵あり冬の湖
1476・袖触れる酒場穴倉冬籠り
1477・相照らすスマホの灯りラブコート
1478・凩や人をかき分け何処へと
1479・刃先から弾けし柚子の香り飛ぶ
1480・吉報の詰まる暦を買いそびれ
1481・数へ日や叩く扉の音近く
1482・凩が人に分け入る交叉点
1483・凩が人駆け抜ける交叉点
1484・凩や人を切り抜け定めなし
1485・冬日射す曇る鏡に身をうつし
1486・木枯しや人をすり抜け定めなく
1487・殻破り惑星壊す鶉かな(秋)
1488・灯火の揺れては消える雪の精
1489・胸元に枯葉一と葉の舞ひ降りて
1490・身辺りに枯葉舞ひ来る風遊び
1491・うず高く落葉重なる風溜り
1492・絡む葉の筏となりし秋の暮
1493・枯葉飛ぶ待ち人未だ天翔ける
1494・ドンと出てポンと入りたる去年今年
・12月27日
1495・身辺りに枯葉色々まとはりつ
1496・寒の凪山懐の厩屋かな
1497・口笛は隙間から吹く風の音
1498・湯気立てて豆煮る鍋の片手取れ
1499・バス停のベンチに座る冬一ト日
おめでとうございます。1500句
1500・バス停の待合ベンチ冬紅葉
1501・なめこ汁美味しと言へば郷からと
1502・一人夜のポツリと浮かぶ冬の月
1503・物憂げに遠廻りして日脚伸ぶ