昔風に申せば、藪入月である葉月を迎えました。皆様にはいかがお過ごしでしょうか。
戦前までの丁稚どんや小僧さんは、雇い主に新調してもらったお仕着せに身を包み、同様に支給された手土産を携えて親元へ帰って行ったようです。兄弟に大きな顔ができる若干の小遣いも、気を大きくさせたことでしょう。将来の暖簾分けを夢見ながら、無給で働く過酷な毎日から解放された喜びは、あっという間に過ぎ去って行ったのではないでしょうか。
一方、現在はどうでしょうか。ファーストリテイリングや王将グループなどの一部企業を除いては、目的である存続さえ危ういところが多いのではないでしょうか。弊社のような零細においては、殊更に真実味が増しています。そのようなわけで、お盆休みは政府の景気対策をも尻目に、何処へも出かけずひっそりと過ごさざるを得ないのが本音のところです。本当に侘しい限りです。
とは言うものの、先月、かなり難しい案件が飛び込んで参りました。ほとんどが製品図面での見積り依頼が主流なのですが、めずらしいことにゲート位置や抜け勾配まで記述されている成形図面での引き合いでありました。拝見した瞬間に「これは成形できません」と反応すべきなのですが、注記に「正式な図面ではありません。変更等を提案のこと」と明記されていました。
製品の詳細を申し上げることはできませんが、新たな追加工程への対応と、物流コストの削減とを同時に満足させる目的があるらしく、特に物流コストを絞れるだけ絞って削減したいというのが最優先のようでした。指定されている原料から考えても成形は困難でありました。そこで、製品機能をあえて逆転させることから、両方の目的を充足させるようなご提案をしました。
そのためには、金型をはじめ、成形条件や方法も新たな発想の展開が必要でした。初めて「図面を起こす」という経験もいたしましたし、ラフな模擬製品も製作してみました。弊社においては結構な資本投下をしましたので、競合に後れを取っては身も蓋もなくなります。とりあえずは候補として残っているようなので、まだまだ諦めずに追加提案の方策を練っています。
シリコンバレーの父といわれるターマン博士が、「『できない』とは『しないこと』だ!」と戒めています。次回には、受注のご報告ができるようにしたいと考えています。
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