日本中の神様が出雲の国へ参集される神無月を迎えました。もしかすると、今後の日本の行く末についてご相談されるのかもしれません。しかし、「もう、エ〜わ!」と見捨てられないように、踏ん張りを見せなければならないようにも思えます。円高、株安、何のその!幾多の逆境を乗り越えてきた底力を発揮すべき時なのではないでしょうか。
とは言え、弊社の受注状況はあまり芳しくありません。元々が在庫を持たない方針ですので、ご注文がなければ成形機が止まります。当然のように暇になりますので、ちょっと早い「読書の秋」を決め込んでいます。そのせいで、帰宅途中にあるショッピングセンターの大型書店に立ち寄ることが多くなっています。プラスチック関係の専門書もさることながら、「たまには小説も良いだろう」と、タイトルに惹かれた池井戸 潤氏の直木賞受賞作「下町ロケット」を買い求めてみました。
読み進めていくと共感できるところが多々あり、非常に楽しめました。会社の規模や業務内容は弊社とは比べものになりません。しかし、社長が技術者であり経営者であるという点は、技術で躍進した日本の中小企業の縮図そのままです。将来的なニーズは未確定であるにもかかわらず、新しい独自技術の創造こそが会社の力量となることを信じて疑わず、リスクに対して果敢に挑戦する姿勢には大いなる共感を覚えました。
「ニーズがないシーズ開発に意味はない。それは道楽だ」と、たびたびご批判を頂戴します。ちなみに、冒頭にご提示しています「開発トレイ」も、今のところは何ら引き合いがありません。「0.4oの十字リブの連続に、どれほどの可能性があるのか」と問われても、確固としたご返答には窮します。ただ、弊社のように埋没している企業こそ、競合他社よりも技術力があって初めて、同じ土俵に上がることができるとも思います。その意味では、自分自身の決断と実行が間違いではなかったと、「下町ロケット」から勇気づけられました。
従って、無駄になることも承知の上で、さまざまな技術に挑戦しながら能力開発に邁進せざるを得ません。また、それが好きな自分がここにいます。だから、常識の桎梏に囚われている命題ほど意欲が湧いてきてしまいます。もちろん、不羈の才などは持ち合わせてもいませんので、失敗と挫折の連続です。加えて、どちらかというと報われないことの方が多いです。しかし、それが楽しくてショウガナイです。そういう意味では、私は根っからのバカな技術者であるのかもしれません。
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