SPEAKERS

No.4 <ALTEC Lancing - 620B Custom>

今回は私が長くメインスピーカーとして、使っていたものを紹介します。これを鳴らしきる場所が確保できるならば、ずっとメインのスピーカーとなっていたことでしょうけど・・・・ 音、特に真空管アンプと組み合わせた時の音には非常に満足していました。とっても能率が高く(出力音圧レベル103dB)、どんな低出力のアンプでも試聴可能な範囲の音が出るというのは最近の小型スピーカーではありえないことです。組み合わせによっては、ジャズだけでなく他のジャンルもなんなくこなしました。そんなところが、いにしえのウェスタン・エレクトリックのスピーカーに通じているのかもしれません。



このスピーカー、最初は私の2系統の再生装置の内、主にジャズを聴くための系統の発展型スピーカーとして手にいれました。この系統のスピーカーでは、これ以前はJBLのスピーカーを2世代使っていました。その頃はJBLの人気が非常に高く、その中でもスタジオ・モニターがオーディオ愛好家や雑誌に記事を書いていた諸先生がたにも絶賛されていた時代でした。確かに私自身もいろいろなところでそれを超高級アンプとの組み合わせで試聴し、ディテールを表現するその分解能には圧倒されていましたし、自分の装置の音のリファレンスとしておりました。ただ、長く自分のそばにおいて聞きこんでいくうちに、その音の薄さが気になってきました。新しい録音は素晴らしいのだけれど、ちょっと古めの録音だとかなり音の悪さだけが目立って、楽しく聴けないようなところもあるし、細かい表現は非常に素晴らしいのだけれど、音の密度というか浸透力というのか、例えば通常聴きいている部屋のなかで特にリスニング・ポイントで聴いている間はいいのだけれど、ちょっと離れた場所や隣の部屋に入ったとたん聞こえてくる音が全く違うのだ。というより音が聞こえてこない場合のほうが多いのだ。そこでいろいろ聞いているうちに、このアルテック系のスピーカーはJBLとは違う概念で作られているというのを感じたのです(このスピーカーや同じユニットを使った612Cというスピーカーはそれ以前に多くのアメリカのスタジオでモニター・スピーカーとして使われていたものですけど。)。でも、そのころの普通の見方からすれば、かなり古い音作りのスピーカーという感じは否めませんでしたが。でも、音の密度や浸透度といったものでは、愕然とする位違いがありました。かなり離れた所にいても、きちっと音楽が聞こえてくるのです。最初、特にトランジスター・アンプで鳴らしている時は、非常に音の粗さや暴れが気になりましたが、いろいろ回りの機器やパーツを替えていくとそういうところが少しずつ変わっていきました。特に、アンプを真空管アンプ、それも直熱型の真空管を使用したシンプルなアンプに替えた場合にまったく違った表情をみせました長所である躍動感とカチッとした芯のある音を保ちながら、とても滑らかで柔らかな音を聴かせてくれたのです。この傾向は特にウェスタン・エレクトリックの真空管を使ったときに感じます。
あと、このスピーカーの長所では、定位が非常に優れていること。スピーカー・ユニットが同軸型で音源が同じポイントにあるのだから、当たり前なのですが、現在の一般的なスピーカーでは複数のユニットを使っているのでなかなか実現できていないことなのです。演奏者がどういう並び方をしてるとかが目にみえるようです。特にライブではその雰囲気がとてもよく伝わってきます。この時期、もう一つの系統でESL-63を使っていて、こちらも人工的に同軸音源をつくっていて、それも奥行きまでも同一の音源ですから、もっとシビアに再現されましたが、切り替えをしても同じような性質を持っていることにより、違和感を感じることはありませんでした。コンパクトなスピーカーではシングル・コーンでしか実現できないでしょうからちょっとこの感じを再現できるかはわかりませんが・・。できれば、できのいいミニチュア版が出ないかと思ってますが今更こんなふるいタイプのスピーカーのミニチュア版はでないでしょうね。シアター・サプライのALTEC7のミニチュアは見かけますが。
もう一つの特徴は、ウーファーの効率がとても高いことにより実現できた、軽やかで爽やかな低音が聞けること。直径38センチの大型コーン型スピーカーではなかなか実現できないのですが、評論家により、よく風のような低音と表現されている音が実感できます。90dB前後の効率ではベタベタとまとわり付かれるような重々しさがありますが、そんな感覚を微塵も感じさせないこの音感はとっても気持ちのいいものです。これは音味の問題で決して再現できる周波数の問題ではないのです。周波数的には、その大きさに物言わせ低い音をしっかりと再現できます。ウッド・ベースもとても躍動感を表し、ジャズなどには最適です。やっぱり欠点は、その大きさと重さでしょう。以前は一人で簡単に運んでいましたが、だんだん辛くなってきました。それとその大きさにより置く所に制限がありますので、誰にもお勧めというものではないでしょうね。あまり小さな部屋ではそれだけで、かなりのスペースを占有されてしまうことですね。     by Masa July, 2000
仕様:15インチ ウーファー + 同軸型ホーン・トゥィーター (ALTEC 604-8H Speaker Unit)アルニコ最終モデル)
入力インピーダンス: 8 オーム
出力音圧レベル: 103db
大きさ: 660x1030x460  60Kg



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