SPEAKERS
No.3 <QUAD-ESL>
今回は私が視聴の時、頭の中でリファレンスとして使っているスピーカーを紹介したいと思います。これは、ある種の楽器や音楽について、私の中での理想の音にかなり近いものなのですが、手放してしまったあと、入手できず。 |
写真左:ブラック・パネル |
写真中央:ブロンズ・パネル 写真右:新型-ESL63 |
BBC発表データ仕様のスピーカーとは全く違う方向を長年目指している英メーカーにQUAD社があります。50年の歴史の中で静電型のスピーカー一筋で製造を続けています。もちろん、そのスピーカーを駆動するためのアンプも真空管時代から作り続けています。例えば、後でお話する現行機種の「ESL-63」は1963年に開発に着手(これは最初のESLが発売されて、そんなに経ってない時期なのですが次のステップにすぐ移ってる。)実際に製品化されたのは、1982年なのです。いかに、真面目にやっているかというのもこんなところからもわかります。日本でも同様のポリシーで静電型のスピーカーやヘッドフォンの製造を続けている「STAX」がありますが、スタックスの場合はどちらかというと、ヘッドフォンで採算をあわせているという感じがしますが・・ 音についてはかなり傾向が違うようですが。 スタックスはまじめそのものと言っていい音で、ちょっと面白さとか楽しさという面で何か欠けている気がします。一方、QUADはひとつひとつの音を聞くと、静電型らしくとっても真面目で弦楽器や木管楽器は生の楽器の音にとても近い音がしますが、大き目の響きのいい部屋で聴くと、ホールの2階席できいているようなとっても耳に心地よい音がします。原音に忠実らしく、オーケストラで演奏している現役の演奏家がよくこのスピーカーを好んで使っているようです。また、フィリップスでは長くこのスピーカーを出来あがったレコードを再生という観点でチェックするためのモニター・スピーカーに使用していました。 私自身もこのスピーカーから再生されるチェンバロ、弦楽器、そして木管楽器の質感がとても好きで三年ほど小編成のクラシックのためのスピーカーとして使っていました。但し、響きのよい大きな部屋なぞ望むべくもなく、オーケストラやこれ以外の楽器(金管楽器や打楽器)では、ねばりや迫力といった感じがでないので、大編成のクラシックやジャズ等の音楽では躍動感が出ず、それらの音楽は別のスピーカーを使っていました。 その後、この部分を改善した新しいモデル、ESL-63が発売されたのを機に、もう少し違うジャンルまでを同じような音で聴くことを望んでこの新しいスピーカーに変えたのですが・・ 確かに、音圧レベルも上がり、低音も大編成のオーケストラをカバーできるほどの改善があったのですが、高音域での独特の音味、一部の楽器での原音に近い質感がなくなってしまって、なんの変哲もない普通のスピーカーになってしまったのでした。どちらかというと、スタジオ・モニター的なスピーカーの音に近づいた感じです。もちろんしっかりした音がどの帯域でも出ており全体の質は非常に高いのですが。個人的に望んだ高音域での独特の質感はいろいろアンプを変えて試しましたが、同じ音は出てきませんでした。(このスピーカーは現在我が家で休眠中。経年変化でコンデンサーが全てへたってしまいました。修理にだすか、検討中。)でも、頭の中にはその前のESLの音がこびりついていて、チェンバロやヴァイオリン等の試聴の時にどうしてもその音と比べてしまうのです。 by Masa July, 2000 |
仕様: 静電型(コンデンサー型) 入力インピーダンス: 15−30オーム 出力音圧レベル: 85db以下 大きさ: 787x876x267 18Kg |