　少し天候が持ち直し、青空が出てきた道を気持ちよく進んでいたら、渋滞があった。道路工事を各所でやっていたので、その１つかと思って、海を見ながら待っていた。しかし、全然動きがなかった。海沿いなので、大がかりの工事なのかと思って、路肩にバイクを止め、少しドリンクを飲んでいた。海に目を向けると、、漁師らしい方が２人、ウニを捕っていた。しばらく眺めていると、その浜辺から１人の男の人があがってきた。突然、渋滞で並んでいる車の１台に乗り込んだ。思わず苦笑してしまった。渋滞で待っている時、車から降りて浜辺まで行っていたのである。・・動きはない。バスも並んでいる。
　それにしてもこののんきさは以上だ。バイクであることをいいことに、前の方にいってみたら、なんとこの「撮影中につき・・・」という一時通行止めの看板を持った警備員がいた。私もそこに３０分近く何気なく待っていたわけだ。これが都会だったら、クラークションが鳴り響き、罵声もかなり飛び交っていただろう。奄美の人のおおらかさに感心すると共に、海を見ていると心が優しくなるんだなということに改めて気づいた。
　通過した後警備員に聞いたら、何でも車のCMの撮影をしていたらしい。

　午前６時３０分起床。目覚まし時計の設定より、１時間も早く目が覚めてしまった。早速、テレビで気象情報を見る。どうやら、今日は天気が悪いようだ。昨日レンタバイクを借りるときもそういわれていたのを思い出した。
　予定では、南部の瀬戸内町からかけろま島まで行くつもりだったが、近場である北隣の龍郷町周辺の海に行くことにした。晴れ男を自負するバボなので、何となく天気が持ちそうな気がしたが、予報の方を信じることにした。明日の天気からすると、まるっきり裏目ってしまったが、この段階では知るよしもない・・・・
　ホテルでは、和食で朝食をすませ、８時過ぎには出発することができた。

　しばらくバイクを走らせていたので、海に入りたくなった。どこで入ろうかなと思っていたら、「円」という集落の近くに気にとまったところがあった。そこは漁師が沖まで出てなにかとっていた。と同時に、サンゴがはりめぐされていて、遠くまで行ける場所だ。写真では、今ひとつわかりにくいが、海の色が変わるところまでいきたいと思った。じゃまにならないところにバイクを置き、ゴーグルとシュノーケルを身につけ、ドリンクだけを持って海まで降りていった。
　海の中は、予想以上に多くの生物がいて、楽しめた。
　１時間以上泳いだ後、海からあがった。漁師さんたちが採集してきたウニの殻剥きをしていた。話しかけたら、「食べろ」という。図々しく、３個ほどいただいた。プーンと磯の香りが漂う新鮮なウニをいただいた。南方系のシラヒゲウニだ。今年は豊作だというだけあって、海の中を泳いでいるとたくさん見られた。

　もし晴れていたら、このトンネルを通過する車は爽快に駆け抜けただろう。
　駐車場のところに、バスや撮影の大型カメラを付けた車が止まっていた。車のCMの撮影のことは知っていたが、
「映画を撮っているんですか。」と聞いたら、「そうだ。」と頷いていた。なんか、だまされたような気がした。
　それに反して、地元の警備員さんが、１台ずつ車に頭を下げている場面が印象的だった。

　海が好きな人なら誰でも知っていると思うが、海の色は天候に左右される。かっらとした空の時は、海の色は、何ともいえない表情を見せる。反対に曇天の日は、「これが同じ海なのか。」と思うぐらい、寂しい表情になる。案の定、ホテルを出発し、海が見える丘に登ると、今ひとつ心が晴れない海の表情と対面することになる。もちろん、他の場所と比べると、雲泥の差なんだが・・・・

　何というか、七夕のような飾りが、各家々に飾られていた。七夕の飾りといえば、最近ではあまり見られなくなったが東京では７月７日のよるの風物詩だ。ところが、奄美大島では、８月の終わりといってもよいこの時期に多くの家屋で飾られていた。
　今年は、８月２５日、２６日、２７日がお盆ということなので、それに関係あるのか・・・・

お盆といえば、やはり東京では７月の１３日から１５日まで。旧盆でも１月遅れの８月１３日から１５日までだ。ところが、この奄美大島では、８月２５日、２６日、２７日がお盆らしい。聞いてみたら、何でも８月末頃の満月の日が送り盆の日だという。
　今、たいていは太陽暦で時間が流れているが、この奄美大島のように、太陰暦で行事がくまれているところに暖かさを感じた。それは、立派な文化の継承だ。最初にカレンダーがあって、そのカレンダーに縛られて生活している我々とは違った優しさを感じた。