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柔らかいボケを得るにはAPD方式と収差方式がありますが、APD方式のレンズは非常に数が少なく、ほとんどが収差方式です。収差方式とは開放付近の後方微〜小ボケが滲みを伴ってぼけるように球面収差を補正したもので、その代表的なレンズがソニーのFE85mmF1.4 GMです。収差方式では開放時にその滲みが最大になりますが、開放では画面周辺にいくほどボケは悪くなります。そこで画面全体でボケの均等性を良くするには周辺を使わなければよく、そのもっとも簡単な方法がフルサイズ用のレンズをAPS−Cやマイクロフォーサーズで撮影することです。そこでフルサイズ用のレンズにこれら画角を狭くして使うときのやや細めのレンズフードを手作りしたのが右の写真です。これらのレンズフードによって撮影意欲も高まります。なおケラレのないレンズフードの作り方については、いつか紹介します。

ニコンFマウントのMFサムヤン24mmF1.4の、味のあるボケ描写をさらに強調するためにレンズ光学系の後部をやや後ろに移動するという改造を行なったレンズです。フォーカスを合わせたところには球面収差によるハロによってややソフトフォーカスのような描写になりますが、半面、後ボケは滲みを伴いつつ、とても柔らかくなります。そしてフォーカスの合ったところのハロは、フォトショップ・エレメンツの「かすみの除去」でかなり改善でき、そこに若干シャープネスを加えると、シャープさと理想的なボケ描写が調和した、私にとって最高の画像になりました。

拡大画像

シャープさと調和のとれた極上のボケ描写(2021年9月号)

CAPAのコラムに掲載した写真で、フルサイズ、F1.4の開放で植物の手前側がフォーカス面に収まるような位置からの撮影です。画面周辺の光量低下は明るく補正していますが、拡大画像からもわかるようにフォーカスを合わせたところはキリッとしたシャープさで、後ボケがとても柔らかいです。そして特筆すべきが、通常の大口径レンズでは画面周辺ではどうしても汚くぼけてしまう点光源に対しても目障りにならないようにぼけるところです。山梨県・花の都公園の温室にて撮影。

         おでこを整形したニコンZ5にマウ

       ントアダプターFTZを介して装着した

      改造MFサムヤン24mmF1.4。ニコンの

    ボディでは倍率色収差が自動的に補正され、やや残っている樽型ディストーションも編集機能で直せます。おかげで理想的なボケ描写に加え、もはや文句なしの極めて上質な画像が得られます。

この写真もフルサイズのF1.4開放で、拡大画像から十分なシャープさと見事なボケ描写がわかります。

拡大画像B

拡大画像A

拡大部分A

拡大画像B

微細な点光源が画面の周辺でぼけるほどボケは悪くなりますが、この拡大画像の左上で見られるように、その厳しい状況でもこの程度のボケに抑えています。

後方小ボケは心地良く滲んでたっぷりと「レンズの味」があり、後ボケもとても柔らかいです。開放解像力を第一に作られた市販の大口径ワイドレンズではあり得ない、極上のボケ描写です。

ボケ描写に関して知っておいていただきたいこと

点光源がぼけたときに、そのレンズのボケ描写の善し悪しがもっとも顕著に現れます。そして、その点光源が小さいほど、そしてぼける量が小さいほど、ボケは悪くなる傾向があります。逆に言えば、ボケ描写の悪いレンズでも口径食を除き、同様な点光源でも面積があるほど、そして大きくぼけるほど、素直なボケになります。

ソニーFE85mmF1.4 GMをAPS-C機α6500に装着

      同梱のフルサイズ用

    のレンズフードを装着。

  画角が狭くなったのでレンズフードとしては効率が落ち、見た目の相性も良くありません。

        APS-C用にボール紙で

     手作りしたレンズフード。逆か

  ぶせができないのでカメラバッグの中

ではかさばりますが、写る力が感じられるほど格好も良く、撮影意欲も高まります。

α6500にソニーFE85mmF1.4 GMの組み合わせでF1.4開放です。APS-Cで撮影することによりボケ描写の均等性が格段に良くなり、収差方式の市販レンズとしては現在では最高の「味と柔らかい後ボケ」を実現しています。

フォーカスを合わせたイトトンボと花びらのシャープさに対し、後方微~小ボケが滲みを伴ってとても柔らかくぼけています。この85mmF1.4は本来はポートレートレンズですが、APS-Cでは花の撮影でも見事なボケ描写で楽しめます。

拡大画像

拡大画像

この写真も上記と同じ組み合わせで、トリミングをしています。そして花芯の先端部分をシャープに写したカットの最先端部分を、フォーカス位置をわずかに前進させたカットに合成したものです。柔らかいボケは、フォーカスを合わせたところをきれいに浮き上がらせてくれます。上質なボケ描写は写真の品位を高めてくれます。