私には願ったり叶ったりの超広角単焦点ワイドレンズ irix (アイリックス )11mmF4
私には願ったり叶ったりの超広角単焦点ワイドレンズ irix (アイリックス )11mmF4
ワイドは16〜35mmがあれば十分と思っていましたが、あるときウルトラワイドへリアー12mmF5.6で撮影した女性写真がとても新鮮でした。ところが12mmは容易に買える価格ではなく、また12〜24mmのズームレンズはみな高価です。さらにズームとはいえ結局はワイド端しか使わないことが多く、ならば単焦点の12mmF4があればと思っていました。そんな矢先、2019年のCP+でこのレンズの存在を知りました。しかも価格が6万円台とのこと。マニュアルフォーカスですが、まさに願ったり叶ったりのレンズです。
CP+のirixのブースで実際に撮影してみると、とても素性のいい写りです。そこでどこで買えますかと聞いたところ、今なら送料が無料ですと言われ、3次元バーコードが書かれたカードをいただきました。後ろは流暢な日本語で説明をしてくれたirix社のスタッフ。
_____________________________________________________馬場信幸
そこでネットで注文すると価格は529ユーロ、日本円で約6万7000円です。逐一メールで連絡があり、4日後には宅配便でもう届きました。そこで消費税3000円を払いましたが、その早さに驚きました。荷物はポーランドからです。
箱にはスイスデザイン、韓国製造と書かれていますが価格からすると、とても贅沢なレンズ構成です。
おでこを整形した私の
EOS Rにマウントアダプタ
ーを介して装着。大きな前玉は
存在感があります。花型の前枠は固定。レンズの重さは実測790グラムで特に重いとは感じません。
前玉を保護するために常時レンズキャップを装着することになりますが、するとややかさばった印象になります。
さっそく公園の林を見上げるように撮影したもので白い枠が11mmに対する12mm相当の撮影範囲です。絞り開放では周辺で光量の低下があり、隅の方では非点収差による像の流れがあります。しかしF5.6に絞ると周辺はかなり明るくなり、画像全体で鮮明さが増し、F8では全画面で文句なしの画像になります。F11、F16に絞ると小絞りボケでわずかに鮮明さが低下します。
左上隅の拡大
左下隅の拡大
右上隅の拡大
右下隅の拡大
画面中央
上の開放画像の中央と4隅をそれぞれ拡大し、シャープさが分かり易いように多少明るく画像処理をしています。倍率色収差による色付きが少しありますが、価格からは信じられない、すばらしい画質です。
やや陣笠状のディストーションがありますが、パソコンで糸巻きへと修正すると、ほぼ気にならないくらいに直ります。
ディストーションのある元の画像
ディストーションを
パソコンで修正した画像
ワイド画像の作例写真でよく見掛ける東京国際フォーラム、ガラス棟の竜骨がこんなに小さく写せます。F11に絞っていますが右下隅の拡大画像から十分な画質であることがわかります。また画面周辺で円周方向でコントラストの強いところでは倍率色収差による色付きがあります。ただし、この色付きは後述するようにフォトショップエレメンツで消すことができました。
右下隅の拡大
絞りをF8にして、直接太陽を画面に入れたのですが、電柱の辺りに小さくゴーストがある程度で、画像はとてもクリアです。太陽の位置によっては画面周辺で細いリング状のゴーストが現れることがありますが、コーティングも良く、内面反射防止も比較的よくできているなど、総じて逆光性能もいいです。
マウントはキヤノンEF、ニコンF、ペンタックスKで電子接点がありますからF値などのExif情報も記録されます。レンズ後部には30mm×30mmのフィルターポケットがあり、3種類のNDゼラチンフィルターが各5枚ずつ同梱されています。
超広角は、ズームレンズよりも単焦点レンズのほうが光学上でも構造上でも絶対に有利です。そしてこのirix11mmは端正な外観デザイン、操作性のいいフォーカスリング、そして十分満足のいく画質と、そのコストパフォーマンスの高さは見事です。とてもいい買い物をしたと満足しています。
F4開放にて、その場の光で撮影したもので、パソコンにて台形補正などの画像処理をしています。やや斜めになった手摺の格子やその影が超広角らしい遠近感になっています。
モデル/今井えり(シャノワール)
泉ボタニカルガーデンの森の中に木で作られたおとぎの世界。超広角によって周囲の状況をたっぷりと写し込むことができます。絞りはF5.6で、画面周辺で空を背景にした木の葉などコントラストの強いところには倍率色収差による色付きがありますが、全画面にわたってとても気持ちのいいシャープさです。
日比谷公園の心字池を中心に開催された「日比谷アカリテラス」(2019.7.12〜21)を、EOS RでISO12800、絞り開放でHDR撮影した画像です。青くライトアップされた木々が不思議な都会風景になっています。画面周辺で建物が傾き過ぎと言われそうですが、いくらでも収められる快感を味わうことができました。11mmはおもしろいです。
画面右上を拡大したもので、絞りF4の開放ながらシャープさは見事です。またHDR撮影によって高感度ながらノイズは少なく、さらに開放時の周辺光量の低下も目立たなくなります。なお、この画像においてはカラーノイズの低減は行なっていません。
拡大画像
超広角レンズにおいては絞っても消えない厄介な収差として画面周辺ほど目立つ倍率色収差があります。最近のカメラではボディ内のソフトによって対象レンズでは補正されますが、今回のirix11mmのようなレンズでは上記のように円周方向にコントラストの高いエッジ部分では赤と緑の色付きが起きます。そこでダメもとでフォトショップエレメンツで試したところ何と色付きが消えました。その方法は「フィルター」→「ノイズ」→「ノイズを低減」にて「カラーノイズを低減」を100%にします。カラーノイズを低減は本来は暗部にランダムに現れる赤や緑の点々としたノイズを低減する機能ですが、倍率色収差の低減までしてくれるとは驚きです。ただし色付き部分くらいの小さな赤い被写体ではその色も消えます。そこで、それを残したいのであれば最初に1枚レイヤーを作っておき、そのポイント部分だけ消しゴムで消して元の赤い部分を出せばいいです。
倍率色収差の補正
画面右上の倍率色収差による色付き
「カラーノイズを低減」によって目障りな色付きが消えました。
シャープネスをわずかにかけると元の画像とは見違えるほど鮮鋭できれいな画像になります。
このように倍率色収差を低減した画像で、この大きさではわかりませんが、とても気持ちのいい画像になりました。
ここで掲載していないirix11mmF4による画像はirix11mmF4ギャラリーをご覧ください。