ボケ描写と高解像度を最高のバランスにチューンナップした改造サムヤン24mmF1.4
ボケ描写と高解像度を最高のバランスにチューンナップした改造サムヤン24mmF1.4
私が購入したニコンマウントのサムヤン24mmF1.4は、画質の良さに加え、ボケ描写においても日本製レンズより優れています。ただソニーAマウントで購入したレンズは画面中央における点光源のボケに偏りがあり、これを直した記事を掲載しました。ただこの時は画面周辺の画質がやや低下したことからマイクロフォーサーズで撮影。そこで周辺画質も良くできないか、再度いろいろいじってみたところ、四隅とも、そこそこの解像感にすることができました。開放では球面収差を発生させてタップリと味を出し、F2.8に絞ると味は消えて鮮明な画像になり、F5.6に絞るとゾクゾクするほどシャープで鮮鋭な画像になります。
かさばる花型フードの代わりに手作りのフレアカッターを装着。フォーカスリングには柔らかくて肌触りの良い滑り止め用のウレタンを巻き、MFの操作感を高めました。
マウントと絞り駆動リングを外したところで、四隅のシャープさがほぼ同じになるよう3カ所のマウントの取り付け位置を調整。左の円いワッシャーが厚さ0.25ミリで、残りの2カ所は貼るテープの枚数で調整しました。
_____________________________________________________馬場信幸
F1.7における撮影で、パソコンで若干糸巻き型にすることでディストーションを直しています。倍率色収差はありますが、拡大部分からF1.7でありながら、そのシャープさのほどがわかります。そして滲んだ味のある後ボケがとても心地良いです。
ボケ味チェック点光源で、画面中央の青い後方微ボケが良く滲んでおり、小ボケも柔らかく、見事なほど味があります。そして画面周辺の微〜小ボケがまったく二線ボケになっていません。F1.4とF2の中間にクリックを設けましたが、このF1.7が味と口径食など総合的にバランスの良いボケ描写になります。
拡大画像
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開放付近で球面収差を発生させたことで本来の光学性能に対して少しだけソフトフォーカスのような描写になり、フォーカスを合わせたところのコントラストが低下します。そのためにMTFは低下しますが、この球面収差のおかげで左の写真のように後方の微〜小ボケが滲むように柔らかくなります。この滲んだ後ボケこそが「レンズの味」です。
フォーカスを合わせたところはハロによってコントラストが低下し、ややソフトフォーカスっぽい描写になります。しかし背景の滲んだ柔らかいボケは、市販の大口径のワイドレンズには見られない、見事なものです。
モデル/斉藤絢女
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ソニーα99ⅡをAPS−Cサイズにし、さらにデジタルズームを2倍にしての撮影なので、実際の画角は24mm×1.5×2倍で約70ミリ相当になります。この時の元の画素数は450万ですが、A3ノビにプリントしても画素補完によって明視の距離でも一応は見られるくらいの画質になります。そして通常のレンズでは二線ボケになってしまうことが多い背景の点光源が柔らかく滲んでいます。ババロア安城デンパーク撮影会における画像です。
ソニーα99Ⅱに組み合わせ、APS−Cサイズとデジタルズームを併用し、プリントサイズがA3ノビでよければ、被写界深度は固定ですが24〜70mmF1.4相当という撮影ができます。なお左の拡大画像を見るとシャープさは十分ですが、残存色収差によって輝度の高いところのボケには青く色が付きます。
拡大画像
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フルサイズでF5.6に絞った時の画像です。画面周辺では倍率色収差による色付きがありますが、全画面にわたって驚くべきシャープさになります。
今回のサムヤン24mmの改造によって、写真レンズのひとつの理想が見えてきました。それが被写界深度の浅い開放寄りの撮影では後ボケを柔らかくし、被写界深度が必要になる撮影では絞るので、すると鮮明で高解像になる、というレンズです。この被写界深度の浅い深いにボケ描写と解像度をバランスさせることで、3次元の被写体を撮影する写真レンズとして非常におもしろくなることが実証できました。動体撮影用の望遠レンズは除きますが、最近多く見られる、開放からやみくもに解像力を上げ、その結果後方の微〜小ボケが汚くなってしまうレンズはボケ描写の観点からは評価できません。そこには絞り開放から高い解像力を要求するユーザーの存在が、最大の要因になっています。
本レンズの構成図で、後方4枚のレンズが一体になっており、この位置をやや後にずらすことで味を出す球面収差を発生させることができました。
今回の改造では運のいいことにレンズ後郡を移動させることで開放寄りの球面収差曲線をレンズ側に曲げることができ、これが後方微ボケを滲ませ、小ボケを柔らかくします。