家を建てようと思ってからはできるだけいろいろな家を見るようにしました。と言っても散歩の途中に気をつけて眺めるだけだったのですが、それでもいろいろな発見はありました。
散歩のコースでも10軒以上は新築がありました。一番関心があったのは家が建っていく過程だったのですが、棟上げが終わるとすぐに足場にカバーがかかって中の様子が見えなかったのが残念でした。
ある時期に散歩コースの1つで3軒が一緒に建っていることがありました。道路に面した土地で道路側に勝手口があり反対側が玄関でした。玄関側は道路からはよく見えなかったのですが、勝手口はすぐ前を歩くのでよく分かりました。
その勝手口の庇(ひさし)がとってもおしゃれだったのです。厚手のアクリル板でしょうか、薄い色の付いた半透明な板がほぼ水平に突き出てそのまま庇になっています。半透明なので、庇を通して空も見えるのです。
庇に透明な板を使うというのは見たことがなかったのでとても新鮮に感じました。おじさん達は最初からおしゃれな家は要らないと思っていましたが、庇一つでも全体の印象が変わるのに驚きました。
3ヶ月ほど経ってその庇に変化があることに気が付きました。確か無地だったはずの庇に模様が入っているのです。どうしてだろうと思ってよく見てみると、それは模様ではなく土だったのです。
勝手口の面している道路は直交する主要道の抜け道になっていて結構交通量が多いのです。それで余計ほこるのだと思います。しかも庇は水平状態なので雨が降っても流れ落ちにくいのでしょう。
少々ほこっていても全体に一様に溜まっているのであればそんなに目立たないと思います。しかし雨に溶けた土が流れきらずにそのまま残ってしまいそれが乾いて固まっているのでしょう。染みのようになっているのです。その染みが半透明な素材故に下からはっきりと見えています。
庇が水平状態なので雨が降っても流れにくいだけでなく、一枚の板を水平に突き出すためには支えが必要です。ここは金属のアームで引っ張っていますが、そのアームを取り付けるための金属の横棒が雨の流れを遮るのでしょう。そこに余計に土が溜まっていました。
通常とは違う形状と半透明な素材、おしゃれを演出している2つのことに、汚れやすくしかも汚れを目立たせるという罠が潜んでいたのです。