純米酒に拘る酒蔵を訪ねて
(稲粋会第十二回大会)

 心配していた雨にも祟られず2月27日(土)、本厚木駅に集合した参加者は送迎バスで銘酒「蓬莱」で有名な、手作り純米酒に拘わっている酒蔵「大矢孝酒造」へと向かいました。
 大矢酒造は、屋敷内に主然と聳える苔むした欅の大樹(推定樹齢400年)が示すように、創業は文政13年(1830)と非常に古く、現在の当主は8代目。しかも、祖父が本学出身、父が慶応大出身と今日の企画に彩りを添えていました。総勢29名は、バスの定員を超えたため、酒蔵直行車のお役を引き受けてくださった会員のおかげで可能になったとのこと。過去最高の参加者数は、厚木三田会の方々の参加や初参加者のおかげとも聞きました。企画した幹事の笑顔が窺えます。 到着して先ず蔵元の説明を聞きます。寒造りの真っ最中の一番忙しい時季にも拘らず、日本酒の原点である純米酒に拘る意気込みを披瀝。一麹二?三造りの説明から始まって、蒸米の釜などに手造りの工程が理解できました。 お若い当主。よくぞ繊細で地味な日本古来の伝統文化を継承してくださると、感激ひとしおでした。先代、先々代のご教育と長年の家業への愛情を肌に感じます。見学が一段落したところで蓬莱の「しぼり立て」白ラベル(純米酒)と黒ラベル(特別純米酒)を試飲させて頂く。日本酒のソムリエ気分で搾り立てを堪能しましたが、上品な香りとまろやかな味の黒ラベルが、私の口には素直に溶け込んできました。 その「しぼり立て」を持ち込んで、近くの大和屋で懇親会です。乾杯の発声は八牧さん。持ち前の明るい声が、皆の今年一年の健康を約束してくれ、前向きに生きていこうと元気が出ます。 早速、大和屋の手作りの料理を戴き、美食、美酒に酔う中で、圧巻は能楽師清水寛二さんの能[道明寺]の一節の披露。清水さんは、初参加ですが、当会員であり、総会の講演でも「能」を身近にさせてくださり、現在、銕仙会(てっせんかい)などで活躍しています。、まさかこのような場所で格調のある謡が聴けるとは!一同感激。聞けば幹事さんの咄嗟のお知恵での依頼と。さすが「粋」ですね。 「伝統」「歴史」「ご縁」が幾重にも繋がる、楽しくもまたアカデミックなひと時になりました。 楽しく過ごしている中に2時間はあっという間に過ぎ、まだまだ話し足りない、飲み足りない感じでしたが、心地良い帰路につきました。
(昭41年文 堀 美知子)

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