1998.12 No.60  発行 1998年12月11日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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チャイルドシート義務化へ/警察庁、本格検討
公園1万2,000カ所の遊具に欠陥/建設省、緊急調査結果公表
化粧品の全成分表示へ/各社、来年3月めど
畳メーカーでISO9001取得/トータルタタミサービス
商品の返品・返金OK/大手スーパー、顧客本位のサービス
紛失航空券、払い戻しに応じる/全日空
お歳暮廃止、日本的儀礼の見直し/セイコーエプソン
スキーバス、全車禁煙に/ビックホリデー、女性に配慮
米たばこ訴訟、25兆円で和解/大手4社、2025年までに
電車内のベビーカー使用/安全性など鉄道各社、東西で温度差


11月のニュースから

■チャイルドシート義務化へ/警察庁、本格検討

 警察庁は12日までに、子供を交通事故から守るチャイルドシートの着用を法律で義務付ける方針を固めました。1997年までの5年間に起きた6歳未満の子供の乗車中の事故を見ると、チャイルドシートを着用していなかった際の死亡率は着用時の約9倍、重傷以上の率も約3倍に上り高い着用効果が分かっています。しかし日本自動車連盟(JAF)の調査によると着用率は今年5月時点で8.3%、96年調査で7.9%と低水準が続いています。
 警察庁は今まで交通安全教育の場や運転免許教則本の中で着用を求めてきましたが、あまり効果はなかったようです。このため同庁は国民の意識を探るため、国際交通安全学会に委託し7〜8月、全国の6,000人を対象にアンケートを実施、約1,700人から回答を得ました。
 着用義務付け法制化に対する意見では、全体の35.4%が「安全のために義務化すべきだ」と積極的に支持しました。欧米諸国ではすでにチャイルドシートの装着を義務付け、高い着用率を達成していることから、同庁は今回のアンケート結果から積極的な支持が高かったとして、義務化を決めたものです。 アンケート調査では「義務化は行き過ぎだが、広く着用を推奨すべき」が全体の57.1%あり、慎重な意見が多いことも分かりました。他には「親の責任なのでとやかく言うことではない」が5.0%、「危険と思わないので義務化の必要はない」が0.9%ありました。
 車を運転していると、対向車で子供をおぶって運転する人や、助手席で幼児を抱っこしてる人がいたり、“危ない”光景を見ることがあります。たしかにチャイルドシート未着用で子供を死なせるのは親の責任ですが、交通事故は相手のあることが大半です。事故の加害者になった場合を考えると、チャイルドシートの着用問題は個人の責任のレベルを超えているようです。早い時期の法制化が望まれます。

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■公園1万2,000カ所の遊具に欠陥/建設省、緊急調査結果公表

 公園などに設置されている遊具による事故が相次ぎ、今年5月にはブランコに挟まれけがをした神奈川県藤沢市の小学4年女児(9つ)が市とメーカーに損害賠償を求め横浜地裁に提訴するなど訴訟の動きも広がっています。このため建設省では事故の実態調査に乗り出し(ASPニュースNo. 54号に関連記事掲載)、全国の自治体など1,802団体が管理する9万2,944カ所の公園の総点検を初めて行い、22日までに緊急調査結果が公表されました。
 その結果、13%に当たる1万1,943カ所の公園の、1万6,979基の遊具に安全上の問題があることが分かりました。このうち1,026基(6%)を使用禁止とし、1,179基(7%)を撤去、9,924基(58%)を修理しました。
 欠陥のあった遊具の中でブランコが一番多く、全体の約四分の一近くを占めています。また、その半数以上が設置から16年以上経過していたことも判明しました。中にはブランコの踏み板が腐っていたり(設置後18年)、ジャングルジムの支柱が腐食している(同29年)など大事故につながりかねないものもありました。 公園を管理している自治体などで日常の点検マニュアルが整備されているところはわずか6%(100団体)しかなく、点検の頻度は平均で日常の巡回が月に3.1回、定期点検は年2.1回でした。また日常は特に何もしていないところが13%(229団体)、定期検査が年1回未満のところが16%(288団体)にも上り、安全管理を怠っている実態が明らかになりました。
 今回の調査結果を踏まえ同省では遊具の安全基準や管理方法のガイドライン作りに乗り出すことになり、対応が遅れたとはいえ歓迎できます。その後の取り組みとしては、厚生省など他の管轄の児童遊園や自治体が独自に設置・管理する公園などにも適用できるよう、運用基準の制定やガイドラインの定期的な見直しも必要になるでしょう。

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■化粧品の全成分表示へ/各社、来年3月めど

 資生堂、鐘紡、コーセーなど化粧品各社は、化粧品の全成分表示に向けた成分名の業界基準を作成することにしました。
 中堅化粧品メーカーではすでに全成分表示を始めているところがありますが(ASPニュースNo. 48号に関連記事掲載)、ようやく大手メーカーでも対応することになり、鐘紡が今月16日に、資生堂が今月21日に全成分表示の製品を発売しました。
 欧米では全成分表示が主流ですが、日本では指定成分表示だけの化粧品がほとんどでした。厚生省は国際整合性を図るため96年に諮問機関「化粧品規制の在り方に関する検討会」を設置して、成分の規制や表示などについて検討してきました。同省ではこの検討会の最終とりまとめを受け、2000年度中に法改正を行い全成分表示に移行することにしており、化粧品各社の基準作りはこれに対応するものです。
 全成分表示があっても読まない人はいますが、皮膚の弱い人などにとっては大切な情報として生かされるでしょう。情報の開示はある種のバリアを取り除くもので、ハードのバリアフリー商品に対して情報開示はソフトのバリアフリーとも考えられ、行政、企業ともに業種を問わず積極的に推進してもらいたいものです。

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■畳メーカーでISO9001取得/トータルタタミサービス

 タタミ製造販売業のトータルタタミサービス(長野県北安曇郡小谷村)は27日、品質管理の国際規格ISO9001の認証を取得しました。畳業者の同規格取得は珍しく、県畳商工組合では「県内ではこれまで聞いたことがない」と話しています。
 同社は社員7名、作業工程は機械化され流れ作業で行っているものの、品質がばらつくこともあったと言います。このため「誰が作っても同じ出来にしたかった」と考えた深沢利幸専務(33)が昨年秋にISO規格の存在を知り、今年1月から社内に品質管理チームをおいて準備を進め、このほど(財)日本品質保証機構の認定を取得したものです。
 「社員それぞれの作業手順のいいところを採用」(深沢専務)して、工程ごとに17冊の手順書を作成し、畳1枚1枚に識別番号を設け、品質管理を徹底してきました。 同社は木炭入りのシートを畳表の下に敷き、除湿効果を高めた「炭入り畳」を独自開発するなど意欲的ですが、これからは品質を売り物にし全国展開の営業を検討し、2年後には松本市に工場を建設する計画でいます。
 安定した品質を顧客に提供したいと思う気持ちからISO取得につながったものですが、品質の維持・管理のツールとして自主的にISO規格を受け入れたことが他の中小企業の励みになることでしょう。取引先から要請されたためにISO規格を取得する中小企業が多かったのですが、これからは顧客に対して還元できる利益(品質)の観点から取り組む企業が増えてくるのでしょう。。

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■商品の返品・返金OK/大手スーパー、顧客本位のサービス

 ダイエー、西友など大手スーパーが相次ぎ、一度販売した商品の返品や返金に積極的に応じることになりました。商品の不備などでは今までも受け付けていたのですが、顧客が購入後に気が変わったものや、サイズが違った、というものでも応じるものです。西友は全店で「返品・返金サービス賜ります」というポスターを10月から掲示し始めました。期間は特に定めておらず、音楽CDやプリペイドカードなど一部の商品は除くもののほとんどの商品の返品・返金に応じます。色が気に入らないなど顧客が商品に満足できない場合、レシートがあればその場で返金します。レシートが無くても商品が自社で販売したものであることが確認できれば、後日郵送で返金されます。
 ダイエーでも店頭に「5つのお約束」というポスターを掲示して「商品の返品・交換のご要望におこたえします」と表示しています。食品や衣料、日用雑貨などについて顧客が満足できなかった場合、原則購入後2週間以内であれば応じるものです。「サティ」などを展開するマイカルも昨年から商品券などを除き、同様の取り組みを実施中です。各社とも「今までも受け付けていたが、顧客サービスを徹底するため改めて明確に打ち出した。従業員に徹底する意味もある」と説明しています。
 大手スーパーの動きの中、九州に店舗展開する食品スーパーのサニー(福岡市)はユニークです。ここでは主力の食品についてより具体的に示し、鮮度、日付、添加物、色、においなどに不満があれば「食べかけでも交換・返金OK」と店頭やチラシなどで消費者に知らせています。
 「自分の目で見て買ったのだから」となかなか言い出しにくい消費者心理をとらえ、積極的に顧客本位にサービスを見直すスーパー各社の取り組みは歓迎できます。

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■紛失航空券、払い戻しに応じる/全日空

 全日本空輸とグループのエアーニッポン、エアー北海道の3社は、航空券を無くした場合でも代金の払い戻しに応じるサービスを12月から始めます。航空券の払い戻しは従来、当該航空券との引き替えが条件で、どの航空会社でも紛失は対象外でした。払い戻しの対象航空券は、予約した便の翌日から10日以内に届け出たものと、オープン券では発行日の翌日から100日以内に届けたものです。紛失届の提出先は航空券の購入店舗で、手数料などを除いた金額が振り込みで払い戻されます。全日空によると「紛失事例が月間300件と多いため、今回の導入に踏み切った」としています。
 月間300件もの紛失があり、紛失した全ての客は泣き寝入りであったことは驚きです。航空券を購入する客は、名前などの情報を提供するので、このようなサービスが今までなかったことが不思議です。他社の追従が待たれます。

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■お歳暮廃止、日本的儀礼の見直し/セイコーエプソン

 セイコーエプソンは16日、取引先との歳暮のやりとりを今年から廃止することを明らかにしました。同社はすでに95年、中元のやりとりを廃止しており、今回の決定もグローバルスタンダード(世界標準)の時代にそぐわない日本的儀礼の見直しの一環としています。取引先の祝い事への祝儀についても原則廃止し、祝電のみで対応することにしました。
 また、役員の飛行機を使った出張についても「世界の企業のトップはビジネスクラスの利用が一般的」とし、これまでのファーストクラスから、ビジネスクラスへの利用に切り替えました。
 同社は現在グループ全体の従業員が5万5,000人いますが、海外の従業員が4万4,000人にも上ることから「世界で企業活動するためには、世界標準に照らし合わせた行動が必要だ」としています。確かに従業員1人あたりのコストと生産性などを考えていった場合、国内工場と海外工場との一人当たりの経費の差が大きいのでしょう。
 お中元、お歳暮のシーズンともなれば、企業のCMやデパートなどの広告で力の入れようも分かるのですが、はたして日本的な良い慣習なのか疑問に思うこともあります。送る側の気持ちの中に自己の利益をもくろんでいるのであれば、限りなくわいろに近いものとなり、先進諸国の慣習には相いれないものであることは明らかです。したがって、エプソンの取り組みが他企業にもすぐ波及しそうなものですが、さてどうでしょうか…。

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■スキーバス、全車禁煙に/ビックホリデー、女性に配慮

 スキーバスツアー大手のビッグホリデー(東京・文京)は今シーズンから首都圏発のスキーバスを全車禁煙にします。スキーバス離れが進んでいますが、同社は今シーズンから値下げや学制割引の導入といった価格面だけでなく、お客の住んでいる最寄りの駅から東京・池袋のスキーバス発着場まで送迎するシャトルバスの増便などサービスを強化しています。このサービスの一環として、利用者にアンケート調査したところ、7割強が禁煙希望だったため、踏み切るものです。
 長時間乗るバスの中でのたばこの煙が髪や服にしみつき、それをいやがる女性客など多いので、たばこ嫌いの人にも乗りやすい環境を提供することにしたものです。また、同社では未成年者の喫煙に対してその対応に悩んでいたことから、その効果もありそうです。

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■米たばこ訴訟、25兆円で和解/大手4社、2025年までに

 米国各州がたばこによる健康被害でメーカーに補償を求めた訴訟で、フィリップモリスなど大手4社は16日、2025年までに総額2,060億ドル(約25兆円)を州政府に支払う和解案で合意したとニューヨークやカリフォルニアなど8州が発表しました。他の38州からの同意を得た上で、最終的な和解を目指すことになります。
 合意内容は、すでに400億ドルの支払いで和解しているミネソタなど4州を除く46州に対し、1998〜2025年の間に4社合計で2,060億ドルを支払うものです。各州はこの財源で禁煙に起因する疾病の治療費用に充てたり、教育・キャンペーン活動を行うことになります。これとは別に、今後5〜10年にわたって禁煙教育などの基金に年14億5,000万ドル、調査研究基金に年2,500万ドルずつ拠出し、広告宣伝も大幅に規制されます。
 12日にはカナダ西部のブリティッシュコロンビア州政府による、インペリアル・タバコ、ロスマンズなど大手たばこ企業5社を相手取るタバコによる損害賠償訴訟が起こされました。これからは米国の訴訟を参考に各国で同じような訴訟が増えてくるかも知れません。しかし、それでもタバコメーカーは事業撤退しないのは相当儲かるからなのでしょう?

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■電車内のベビーカー使用/安全性など鉄道各社、東西で温度差

 電車内のベビーカー使用について論争になっているようです。ベビーカーの車内持ち込みについて鉄道各社はこれまで安全性の問題などから、駅構内や電車内ではベビーカーを折り畳むよう利用客に呼びかけていました。
 ところがこの11月から関西の鉄道会社5社(阪急電鉄、阪神電気鉄道、山陽電気鉄道、神戸電鉄、神戸高速鉄道)は、従来の「お願い事項」を変更し、ベビーカーの使用に関して他の乗客の迷惑にならない範囲で、利用者個人の判断に委ねることにしました。「ベビーカーを使うお客にも、鉄道を利用しやすい環境づくりを目指した」というのが理由ですが、関東の鉄道会社は安全性への不安からか慎重のままです。
 ベビーカーを製造するアップリカ葛西(大阪市)では「ベビーカーは電車内に持ち込むよう作られていない。安全を確保すするためには車椅子とほぼ同じ形状、重さなどの安定性が必要」としています。国内で販売されているベビーカーで、人気の高いのは重さ4キロ前後で折り畳めるタイプです。同社では「もともと、狭い玄関にもじゃまにならないようにとの考えからコンパクト化が進み、電車などの車内で使用することを想定しては作っていない」ともいっています。また、関西鉄道各社の動きをきっかけに「今後は商品に“電車内では使用しないで下さい”などの注意書きを加える予定」であることも表明しています。
 関東の鉄道会社もメーカー側も万一の事故のときの責任を負いたくないことから、過剰防衛となっているようです。海外では、車椅子専用スペースと同様にベビーカー専用スペースを設け、揺れても安全なように、車内にベビーカーを引っかけるフックが付いているところもあるようです。
 現実に電車内にベビーカーを持ち込むニーズはかなりあるようですし、企業の責任逃れだけでなく「どうすれば電車の中でも安全にベビーカーを使用できるか」を企業、消費者で考えなければならないでしょう。電車の設備の対応といったハード面と、各人に「自分の安全は自分で確保する」といった自己責任を確立させることの両面の対策が必要になるでしょう。

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終わりに

 電気製品を使わないときでもタイマー表示や、リモコンを受けるために消費される「待機電力」が問題になっています。何でもリモコンで、便利になった気がするのですが、リモコンを使うことに慣らされてしまったようです。照明もリモコンでON/OFFできるなど、本当に必要なときは年に数えるくらいかも知れません。
 テレビ番組などでも節電方法として、「使わないときには電源プラグを抜くこと」を奨めています。しかし、個々の製品の電源コードをこまめに抜くのは大変なことです。最近見かける「手元スイッチ」は電源コンセントと製品のプラグの間に使い、手元で製品のON/OFFができるものです。このスイッチを利用して複数のAV機器の電源をまとめて切ることもできますが、タイマーの設定が無効になるなど使い勝手は今一つです。
 ここにきてソニー、松下電器産業、パイオニアなどが待機電力削減の方針を打ち出したのは良い動きです。現在1〜12ワットあるものを、2000年には1ワット以下にするようです。CO2などの環境対策とはいえ、新製品の買い換え需要を狙っているのかも知れません。
 ところで最近コンデンサーメーカーのエルナーが開発した、待機電力を百分の一以下にするユニットは既存の製品にも利用できるようです。来春からの出荷が楽しみです。

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