1998.7 No.55  発行 1998年7月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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運転員の操作ミスで「ふげん」自動停止/科技庁発表
一般廃棄物処分場に放射能汚染物質相次ぐ/動燃東海事業所
東急車輌、車両脱線検知装置を開発
衝突安全テストでアウディ、VW、ルノーが最優秀/FIAとAIT
レジオネラ菌、温泉の湯の67%で検出/長野県衛生公害研究所調
 査
本田、24億円の罰金で合意/米排ガス規制違反
トリクロロエチレンに汚染/東芝、名古屋工場
トリクロロエチレン分解物質、基準の7倍/名古屋、三菱重工跡地
 で検出
テトラクロロエチレン、基準値の9,400倍/大阪・高槻の松下系の
 工場
街路樹剪定の枝を再利用/広島市、土壌改良材などを生産
パソコンソフトの4割が違法コピー/損害額114億ドル、BSA、SPA
 調べ


6月のニュースから

運転員の操作ミスで「ふげん」自動停止/科技庁発表

 福井県敦賀市にある動力炉核燃料開発事業団(動燃)の新型転換炉「ふげん」で、5日午後原子炉内の中性子減速材の重水の水位が急激に低下し、原子炉が自動停止する事故が起きました。科学技術庁は8日になり「事故は運転員の作業ミスが原因である」と発表しましたが、これによると「ふげん」の計画停止の作業中、水位の調整弁の機能が不調でヒューズを抜いて強制的に閉じる操作をする際、誤って別のヒューズを抜いてしまい水位を下げる弁が働いてしまったようです。異常時の緊急操作と考えられる今回の操作では、操作を誤らないようなシステム環境(ハード的対策や操作員を複数人とする体制をとるなど)が求められ、また確認作業も厳格に行われるべきものです。どうやらそのような作業を行うことはなく、機械の知識のある運転員が臨機応変に対応した結果のようです。そうでなければあまりにもお粗末です。
 しかも動燃がこのミスを把握したのが5日午後5時過ぎであるのに、科技庁への報告は7日午後3時頃と2日近くも報告が遅れた事実も明らかになりました。故意?に報告を遅らせる体質は相変わらずのようです。

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■一般廃棄物処分場に放射能汚染物質相次ぐ/動燃東海事業所

 茨城県東海村にある動燃・東海事業所の埋設処分施設の点検作業で25日午後、プルトニウム汚染びん2本が発見されました。びんの1本は法規制の基準を越える汚染でした。作業員3人の服や靴が微量のプルトニウムで汚染されましたが被爆はなかったとのことです。この施設は同事業所のプルトニウム燃料工場脇の廃棄物貯蔵ピットで、縦横5メートル、深さ2.5メートルのコンクリート製の地下室です。ここには約30年前に同工場内から出たビニールやガラスなどの放射能汚染の少ないごみを捨てて、その上に土をかぶせていました。
 これだけならば大した問題ではないのですが、実は同施設では17日にもウラン放射性廃棄物が発見されていたのですが、故意に報告を遅らせていた事実が判明しました。事件は17日、同事業所の作業員がアクリル性のびん4本を発見し調べたところ、放射能が検出されたために詳しく調べたところウランであることが判明、ところが現場の担当課長や工場長は29日の会議まで10日以上もこの事実を東海事業所長に報告をしないでいたものです。
 一般廃棄物貯蔵施設に法規制の基準を越える汚染されたびんがあること事態、安全を確保する適切な作業・管理が行われてないことになりますが、同じような管理ミスの発覚が続いたので隠そうとする体質はいまだに健在です。国民にショックを与えたナトリウム火災・爆発のニュースはまだ記憶に新しいものですが、動燃全体が「懲りない病」に汚染されているようです。
 この秋にも新法人へと移行する動燃ですが、このままでは中身は変わらないかもしれません。こうなると新法人では職員全員の総入れ替えが必要で、そうでもしなければ過去から引きずってきた管理意識は変わらないと思います。

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■東急車輌、車両脱線検知装置を開発

 東急車輌製造は瞬時に脱線を検知する「車両脱線検知装置」を開発したことを明らかにしました。これは加速度センサーで車体変異と特異加速度を評価する装置で、車輪一輪が脱線したときの車体の沈下70〜80ミリと電車走行時の揺れによる車体の上下動20〜30ミリを比較して脱線を検知するものです。また通常走行時の揺れと違う特異加速度を検知したときも脱線と見なす装置です。この装置により異常が検知されたときは、自動ブレーキを作動させ運転手への警告も行うものです。 ドイツの高速鉄道「インターシティー・エクスプレス(ICE))の脱線事故の原因はまだ調査中ですが、車輪の破損によるものとの見方が強まっています。車輪、車軸、線路の不具合が発生したときに車両が安全に停止するフェールセイフ設計は難しく、日本の新幹線では車軸の温度が140度に達すると自動停止させる軸温検知装置があるものの、まだ脱線に対して自動停止させるシステムはないのが現状です。
 今回の車両脱線検知装置の開発は、フェールセイフの効かない部品の不具合で起きる脱線を、車両全体の変化で検知するものとして注目されます。制御系の安全システムでは全体を考慮した設計をとれますが、車輪などの機械部品では信頼性を高める方法で対処しているようです。
 点検・整備は予防安全として非常に重要ですが、車両全体で感じ取るセンサーを導入するフェールセイフ設計も可能な訳です。今回の装置が実用化されれば世界初の脱線検出装置となるのですが、発想的には今までなかったのが不思議なくらいです。

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■衝突安全テストでアウディ、VW、ルノーが最優秀/FIAとAIT

 国際自動車連盟「FIA」と国際ツーリング連盟(AIT)は、中古型の量販車12モデルについて衝突安全テストを行いました。その結果アウディA3、VW・ゴルフ、ルノー・メガーヌが最も安全性の高い車として選ばれ、特にメガーヌは全面衝突とサイドクラッシュの両方のテストで優秀な成績を収めたようです。
 このテスト結果を基に、道路交通の安全向上を目指して設置されたユーロ・NCAPは、A3、ゴルフおよびメガーヌの衝突安全度を四つ星と評価しました。シトロエン・XSARA、プジョー・306、トヨタ・カローラが三つ星となっています。ホンダ・シビックと現代自動車のラノスも三つ星ですが、頭部と胸部を負傷する危険が高いという注釈付きとなりました。フィアット・ブラバ、現代自動車のアクセント/ブラバ、三菱ランサー、スズキのバレノは二つ星という結果でした。

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■レジオネラ菌、温泉の湯の67%で検出/長野県衛生公害研究所調査

 長野県衛生公害研究所が県内約100カ所の温泉旅館や公営温泉施設の湯を調べたところ、67%の湯からレジオネラ菌が検出されたことが判明しました。
 96年から97年にかけて県内39の温泉施設で102の浴槽を調査したところ、30施設の68浴槽(67%)の湯からレジオネラ菌が検出され、そのうちの23浴槽(23%)からは、100ミリリットルあたり1,000〜10万個の菌が見つかりました。これは全国旅館環境衛生同業組合が95年に定めた「レジオネラ症防止指針」の「必要に応じ殺菌、洗浄が必要な要注意範囲」にあたるものです。
 注目すべきは温泉の湯を機械で濾過、循環させる75の浴槽からは、77%にあたる58カ所から菌が検出され、循環式でない浴槽24カ所中9カ所(38%)の2倍にもなります。レジオネラ菌で一時問題になった「24時間風呂」を思い起こします。健康志向で温泉を楽しむ若い人が増えていますが、温泉入って逆に不健康になっては困ってしまいます。
 調査した県衛生公害研究所の小山敏枝研究員は「源泉からは検出されなかったので、入浴者の体についていた菌が増殖したことが考えられる」と分析しています。「温泉の効能も細菌には効かない」ということを知っておくべきでしょう。

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■本田、24億円の罰金で合意/米排ガス規制違反

 アメリカン・ホンダ・モーターは8日、排ガス制御を監視するシステムの検知機能に不備があったとして大気浄化法違反を認め、総額1,710万ドルという過去最大の罰金を支払うことで連邦政府、カリフォルニア州と合意しました。米国では排ガスの制御を車に搭載したコンピューターで監視することを義務付けていますが、ホンダは誤動作を防ぐため、ある条件の下ではエンジン失火検知の機能を停止するシステムにしていました。米当局はこのシステムについて失火を検知しないおそれがあると判断し、97年1月にホンダに通告、両者で対応を協議してきたもので、今回本田は当局の指摘を受け入れ、連邦、州政府に対し合わせて1,260万ドルの罰金と環境保護用の基金として450万ドルを支払うことで合意したものです。対象となるのはアコードなど174万台で、司法省によると部品点検や交換に応じることでさらに2億5,000万ドルの費用が必要になるとされています。
 また司法省、環境保護局は、フォードのエコノラインによる排ガス制御装置の規制違反でも250万ドルの罰金と環境保護基金として530万ドルの支払いでフォードと合意しました。
 米国では法律や規制の解釈および技術的な対応の甘さが、高額な罰金につながることと考えなければなりません。

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■トリクロロエチレンに汚染/東芝、名古屋工場

 昨年10月、名古屋市西区の東芝愛知工場名古屋分工場の敷地内外で環境基準を800倍と大幅に越える発ガン性物質トリクロロエチレンが検出されたことが明らかになりましたが、調査を続けていた名古屋市の対策検討委員会(座長・植下協中部大教授)は6月2日、地下水から基準値の1万5,670倍ものトリクロロエチレンが検出されたと発表しました。
 東芝側は「今回の汚染は当工場が原因とは考えられない」として、「東芝は15年前から工場内でトリクロロエチレンを使用していないが、今回は比較的新しい汚染と考えられる」と述べています。新しい汚染とする根拠として、地下9.5メートルの地下水からのみ検出されたことや地表の土壌に含まれるガスにはトリクロロエチレンが検出されていないことを挙げていました。ところが4日になり東芝から名古屋市への報告では、東芝工場から東に約60メートル離れた土壌中のガスからこれまで最高の580ppmの気化したトリクロロエチレンが検出されたことが明らかになりました。このため汚染は工場敷地外にも広がっており、土壌中のガスから検出されていることからかなり前に汚染された地下水が存在していたことになります。これで東芝のいう「比較的新しい汚染」だけでなく古い汚染場所も存在することになったわけです。この地点と東芝工場の中間には金属製品製造工場があり、18年前までトリクロロエチレンを使っていたことから汚染源の特定は簡単ではないようです。昨年10月の汚染ニュースではインターネットの環境庁のホームページに、東芝の社員と見られる者から寄せられた告発がきっかけになっていて、企業の姿勢を正すための人や環境が変わってきたことを感じます。東芝に限らず企業はこのような告発を、単純なリスク管理の発想で対処するのではなく、リスクを生まない、つまり“ミスを隠さない”ことによる社会的責任を果たして欲しいと思います。

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■トリクロロエチレン分解物質、基準の7倍/名古屋、三菱重工跡地で検出

 名古屋市は8日、名古屋市東区にある三菱重工業の大幸工場跡地で行われた市の調査で、トリクロロエチレンが変化してできる物質の「シス―1、2―ジクロロエチレン」が環境基準の7倍検出された、と発表しました。
この工場跡地は昨年12月24日に名古屋市が土壌中に0.083ミリグラムという高濃度のPCBを検出し、汚染した土壌は産廃 処分場に持ち込める濃度を10倍以上も上回っていることから、土壌をコンクリートで固める処理が必要になっていました。このためさらに広範囲の調査を行っていたのですが、これでは跡地利用として名古屋市のスポーツセンターなどが入る市営の施設は当分着工できないでしょう。
 三菱重工では「検出された場所ではPCBを使った施設はなかった」としていて、今回も「トリクロロエチレンは専門業者に引き取ってもらい、処分していた」と話しているようですが、どうなのでしょうか?名古屋市は敷地内約5万平方メートルの土壌や地下水の調査をするよう、跡地の所有者である三菱重工業に指示を出し、今後調査が進むことで原因が特定できるでしょう。その結果別の化学物質でも汚染されていることが判明するかもしれません。
 自治体にとっては工場跡地の利用には注意が必要ですが、企業や業者間の転売では汚染の実態が表面に出てこない恐れがあります。土地の評価に環境要素が入るのは当然ですが、土地の前・現所有者による地下水や土壌の検査レポートが作成されることは、どのくらいあるのでしょうか?

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■テトラクロロエチレン、基準値の9,400倍/大阪・高槻の松下系の工場

 大阪府と高槻市は23日、松下電器産業の子会社、松下電子応用機器・高槻工場敷地内にある地下水から、発ガン性が指摘されるテトラクロロエチレンが環境基準の約9,400倍の高濃度で検出されたと発表しました。また、松下電子部品本社工場(門真市)と松下電池工業本社工場(守口市)では、「シス―1、2―ジクロロエチレン」がそれぞれ環境基準の約500倍と約160倍の濃度で検出されました。そのほか東芝大阪工場では環境基準の約3倍の濃度のトリクロロエチレンが検出されたと発表しました。
 「松下のように遅れはしたものの自主的に報告をする企業はまだましで、汚染を放置している企業が多い」との指摘もあります。我が国を代表する企業ですら自社工場の環境汚染についての認識と対応がこの程度なのですから、おそらく多くの企業では汚染を放置しているのでしょう。法律がないからといって、工場を取り巻く環境である自治体や住民に報告しないという企業の論理があるのならば、それは明らかに企業の社会的責任を考えていないものだと思います。
 日本では国際環境規格であるISO14000の認証を取得する企業が増えていて、認証取得事業所数では現在世界のトップを走っています。しかし企業の過去から現在に至る生産活動が与えた環境の負担に対する検証と反省がなければ、環境ISOの取得は単なる営業戦略的活動でしかないように思います。

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■街路樹剪定の枝を再利用/広島市、土壌改良材などを生産

 広島市はゼロエミッション構想の目玉として、公園や街路樹の剪定で出る枝葉を土壌改良材や肥料に再生するための専用処理施設を99年3月に完成させることを決め、この8月から着工します。剪定枝の再利用では、福岡市が96年度から廃木材と合わせて家具の心材などへのリサイクルを行っているものの、焼却処理している自治体がほとんどで剪定枝専用の施設は珍しいものです。
 剪定枝リサイクル施設は回収した剪定枝の保管場所と1日5時間稼働で最大25トン処理できる破砕・粉砕装置、堆肥発酵設備などで構成されています。この施設で年間4,000トンの回収枝から竹や根などの不適物をのぞいた全量をチップ化します。そのうち約900トンはマルチング材と呼ばれる土壌の栄養・保気水材として公園などに還元します。残りの約2,600トンは7ヶ月程度コンポスト発酵させ、公園や街路樹に肥料として施し、周辺の農業協同組合を通じて、農家や一般家庭向けへの販路も開拓するようです。
 市町村も環境の取り組みにおいては、単にリサイクルだけでなく、環境ビジネスに参入する企業と同じような視点を持ち始めたようです。

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■パソコンソフトの4割が違法コピー/損害額114億ドル、BSA、SPA調べ

 パソコンソフトの違法コピーは相変わらず多いようですが、97年に全世界で使われている違法コピーは2億2,800万本で著作権侵害による損害額は114億ドルに上ることが、ビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)とソフトウェア・パブリッシヤーズ・アソシエーション(SPA)の調査で分かりました。パソコンの普及につれて本数で300万本ほど前年に比べて増えてはいますが、違法コピー率は少しずつ減少しているようです。
 国別の違法コピー比率ではベトナム(98%)、中国(96%)が特別高く、インドネシア、オマーン、ブルガリアでも93%となっています。低い方では米国(27%)、英国(31%)、オーストラリア、デンマーク、日本(32%)、ドイツ(33%)の順になっています。
 ASPニュース37号で紹介した95年の日本の違法コピー比率は55%であることから、ずいぶん改善されたことになります。これでようやく先進国並の水準になってきたようです。とはいうもののBSA、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の3団体の調査によると、上司や経営者の指示で違法コピーをしている割合は94年調査の4.9%から97年調査の7.5%にアップしているというデータもあり、モラルの欠如が見られます。
 ACCSでは刑事告発のほか民事訴訟の措置を強化する姿勢を明らかにし、学校や公共団体での違法コピーが多いことから、自治体などに対してソフトの購入予算の計上を求めていく考えです。また法律の整備などについても関係機関に要請するとしています。

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終わりに

 私たちが子供の頃からなじんでいたキューピー人形で損害賠償訴訟が起こされています。キューピー人形をキャラクターに使用している日本興業銀行は、今年2月に原作者の死後著作権を管理していた「ローズ・オニール遺産財団」(米ミズーリ州)から訴えられました。6月にマヨネーズの「キューピー」を訴えたのは、ローズ・オニール遺産財団から著作権の譲渡を受けたキューピー人形の愛好家で作る「日本キューピークラブ」会長の会社役員北川和夫さんです。
 キューピー人形を企業のキャラクターとして長年使用しているので、てっきり著作権の問題などないと思っていましたがそうではなかったのですね。

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