平成30年  万葉カレンダー

 完成された「カレンダー」を、いくつか載せてきましたが 今回は趣向を変えていわば
「舞台裏」を紹介したいと思います。
 印刷される2~3か月前から、今年はどの歌を載せるかの「選考」が始まります。
「万葉集」は全20巻ですが、毎年の講義で扱うのは2~3巻です。その中から受講生
それぞれが、自分の好みなどで何首かずつ選びます。それをまとめて「初案」が
できます。
 その後、講師(※)の先生と写真を提供してくださる鴻上修さんとの遣り取りがあり
次第に「最終案」が決まっていきます。
 この年の「初案」は 次の20首でした。あなたなら、1~12月にどの歌を割り振
りますか?追体験してみるのも一興かと思います。
 ①我が心為む術もなし 新夜の一夜もおちず夢に見えこそ(巻12)
 ②忘るやと物語りして心遣り過ぐせど過ぎずなほ恋にけり(巻12)
 ③愛しと思ふ我妹を夢に見て起きて探るになきが寂しさ(巻12)
 ④思いつつ居れば苦しも ぬばたまの夜に至らば我れこそ行かめ(巻12)
 ⑤我が命し長く欲しけく 偽りをよくする人を捕ふばかりを(巻12)
 ⑥魂合へば相寝るものを小山田の鹿狩田守るごと母し守らすも(巻12)
 ⑦ひさかたの天つみ空に照る月の失せなむ日こそ我が恋止まめ(巻12)
 ⑧なかなかに何か知りけむ 我が山に燃ゆる煙の外に見ましを(巻12)
 ⑨露霜の消やすき我が身老いぬとも またをちかへり君をし待たむ(巻12)
 ⑩忘れ草垣もしみみに植えたれど醜の醜草なほ恋にけり(巻12)
 ⑪物思ふと寐寝ず起きたる朝明にはわびて鳴くなり庭つ鳥さへ(巻12)
 ⑬紫は灰さすものぞ海石榴市の八十の衢に逢へる子や誰(巻12) 「衢」(く)は辻。
 ⑭明日よりは恋つつ行かむ今夜だに早く宵より紐解け我妹(巻12)
 ⑮草枕旅行く君を一目多み袖振らずしてあまた悔しいも(巻12)
 ⑯久にあらむ君を思ふにひさかたの清き月夜も闇のみに見る(巻12)
 ⑰白袴の袖の別れを難みして荒津の浜に宿りするかも(巻12)
 ⑱冬こもり春去りくれば朝には白露置き夕には霞たなびく風の吹く木末が下にうぐいす鳴くも(巻13)
 ⑲母父も妻も子どもも高高に来むと待ちけむ人の悲しさ(巻13)
 ⑳鈴が音の駅家の堤井の水を給へな妹が直手よ(巻14)
※「講師」は、安積高校の校長先生だった「梅田 秀男」先生。  

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