平成31年        万葉カレンダー
    (2,019,令和元年)

1月 昨日こそ年は果てしか 春霞 春日の山に早立ちにけり (巻10 柿本人麻呂歌集)
    
つい昨日、年は暮れたばかりだというのに春霞が春日の山に早くもたなびきはじめた。

2月 
このころの我が恋力 記し集め 功に申さば五位の冠  (巻16 作者不明)
    
このところの恋に捧げた俺の労力を記し連ねて功として願い出たなら軽く五位の冠さ。

3月 人もなき空しき家は草枕 旅にまさりて苦しくありけり 
(巻3 大伴 旅人)
    
人気もないがらんとした家は、旅の苦しさにもまして何ともやるせない

4月 あかねさす紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る  (巻1 額田 王)
   
茜色のさしでる紫草の生い茂る野、立ち入りを禁じて標を張った野であなたはそんなに袖をお振りになったりして、野守が見てしまいます

  (ここから「令和」元年)
5月 君が行く道の長手を繰り畳ね 焼き滅ぼさむ天の火もがも (巻15 狭野弟上娘子)
    
あなたが行かれる長道を手繰って折り畳んで焼き滅ぼしてしまう天の火があったらなあ

6月 ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に溜まれる水の玉に似たる見む (巻16 右兵衛の役人)
    
空から雨でも降ってこないかなあ蓮の葉に溜まった水がきらきら光るのを見たい

7月 秋去らば我が船泊てむ忘れ貝 寄せ来て置けれ沖つ白波  (巻15 遣新羅使人)
    
秋になったら船をここに泊める 忘れ貝を寄せてきて置いておくれ、沖の白波よ

8月 梨棗黍に粟つぎ 延ふ葛の 後も逢はむと葵花咲く  (巻16 作者不明)
    
梨,棗、黍それに粟と次々に実っても君と逢えないけれど葛のように後にでも逢うことができるようにと葵(逢ふ日)の花が咲いている
      

9月 安積山影さへ見ゆる山の井の浅き心を我が思はなくに  (巻16 前の采女(作者名不明))
   
  安積香山の姿さえも映し出す清らかな山の井、私は浅はかな心でお慕い申しあげているわけではありません

10月 天離る鄙にも月は照れれども 妹ぞ遠くは別れ来にける (巻15 遣新羅使人)
    
田舎にも月は照っているけれど愛する妻と遠く離れて来てしまったなあ

11月 君が行く海辺の宿に霧立たば 我が立ち嘆く息と知りませ  (巻15 遣新羅使人の妻)
     
あなたが旅行く、海辺の宿に霧が立ち込めたなら私がお慕いして嘆く息だと思ってください

12月 ぬばたまの黒髪濡れて沫雪の降るにや来ますここだ恋ふれば  (巻16 作者不明)

      黒髪もしとどに濡れて、粉雪の降る中をお帰り下さったのですね、私がこんなにお慕いしたので

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