六    月

   セーラー服の 後ろから
   コスモスの花を そっと見せ
   ときおり教室を のぞいては
   クスクス笑う 女の子
   二、三歩歩いて 立ち止まり
   コスモスを 高く高くあげて
   行っちゃった

                   

         故郷へむかう 旅人は
     遠いあの日に 帰ろうと
     遠いあの日に 帰れると
     星空ながめて 口ずさむ
     旅立ちに
     忘れな草を ホームの片隅に投げおいて
     飛び乗る夜汽車の 汽笛の中で
     忘れていた 深い 深い

       涙との再会


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