哀雪の町

 舞雪中に 秘められし宴あり
 髪にふりかかりし白音の露
 肩にうもれし熱情の
 いまだ放たれぬ悲しみ

 まといし乙女の胸の
 紅くして さめやらぬに
 木々に かしづきたりとも
 とどまらぬ 白積花

 宴につれそひし 身なし草の
 なおも燃えし 袖々に
 長からんとは いのらぬものを




   雨が舞う

 西の空には 夏の入陽が
 降り注いでいるというのに
 雨が舞う
 音もない そのリズミカルな
 流水に
 ふと ひそかな喜びが
 あふれる
 音もなく 去りし雨々
 わが胸の内にも 
 真夏の足音が しのびよる


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