汚れちまった悲しみに
              中原中也
    「汚れちまった悲しみに・・・」
    汚れちまった悲しみに
    今日も小雪の降りかかる
    汚れちまった悲しみに
    今日も風さえ吹きすぎる

     汚れちまった悲しみは
     たとえば狐の皮衣
     汚れちまった悲しみは
     小雪のかかってちぢこまる

    汚れちまった悲しみは
    なにのぞむなくねがうなく
    汚れちまった悲しみは
    倦怠のうちに死を夢む

      汚れちまった悲しみに
      いたいたしくも怖気づき
      汚れちまった悲しみに
      なすところもなく日は暮れる

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