令和2年カレンダー    7~12月

 7月 天皇の御代栄えむと東なる陸奥山に金花咲く  (巻18 大伴家持)
    (すめろきのみよさかえむとあづまなるみちのくやまにくがねさく)
     天皇の御代が今後益々栄えるしるしとして、このたび東の国にある陸奥の山から、
     黄金が出たよ。黄金の花が咲いたよ。

 8月 大船に真楫しじ貫きこの我子を唐国へ遣る斎へ神たち (藤原太后 光明皇后)
     (おおふねにまかぢしじぬきこのあこをからくにへやるいはへかみたち)
     大船の船べりの右にも左にも櫂をいっぱい取り付けてやり、この愛し子を唐国に
     遣わします。守らせたまえ。神たちよ。

 9月  我がやどの萩咲きにけり秋風の吹かむを待たばいと遠みかも (巻19 大伴家持)
     (わがやどのはぎさきにけりあきかぜのふかむをまたばいととおみかも)
      我が家の庭の萩が咲き出した。秋風の吹くのを待っていては、ずいぶん先のことになる
      ので待ちきれなかったからであろうか)  (注;6月15日に萩の早(はつ)花を見て作る)

 10月 韓衣裾に取り付き泣く子らを置きてぞ来ぬや母なしにして (巻20 小県の郡の他田舎人大島)
     (からころもすそにとりつきなくこらをおきてぞきぬやおもなしにして)
      韓衣の裾に取りすがって泣く子ら、ああ、その子らを家に残しておいて来てしまった。
      母親のいないその子らを。

 11月  家ろには葦火焚けども住みよけを筑紫に至りて恋しけ思はも (巻20 橘樹の郡物部真根)
      (いはろにはあしふたけどもすみよけをつくしにいたりてこふしけもはも)
       我が家では葦火を焚いて暮らしている。そんな貧しい生活だけれど、それはそれで
       住み心地はいいのだ。こんな暮らしを遠い筑紫に着いてから恋しく懐かしく思われて
       ならないだろうなあ。

 12月   移り行く時見るごとに心痛く昔の人し思ほゆるかも  (巻20ー4483 大伴家持)
       (うつりゆくときみるごとにこころいたくむかしのひとしおもほゆるかも)
        次々と移り変わってゆく季節の有様を見る度に、胸もえぐられるばかりに、昔の人が
        あの人もこの人もしきりに思い出されてならない。(注;757年6月23日の宴で詠んだ)

               白毫寺の萩
         

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