令和3年カレンダー 7~12月
7月 父母が頭掻き撫で幸くあれて言ひし言葉ぜ忘れかねつる (巻20 防人丈夫部稲麻呂)
(ちちははがかしらかきなでさくあれていひしけとばぜわすれかねつる)
(防人に立つため家を出る時)父さん母さんが俺のこの頭を撫でて
「元気でな」と言ったあの言葉が忘れられない(※「て」は「と」、「ぜ」は「ぞ」の方言)
8月 鮪突くと海女の燭せる漁り火の穂にかい出ださむ我が下思ひを (巻19 大伴家持)
(しびつくとあまのともせるいざりびのほにかいださむわがしたもひを)
鮪を突いて獲ろうと海女が灯している漁り火のように
はっきりと表に出してしまおうか、この胸に秘めたあの人への思いを
9月 防人に立たむ騒きに家の妹が業るべきことを言うはず来ぬかも (巻20 防人茨城郡若舎人部広足)
(さきむりにたたむさわきにいへのいむがなるべきことをいはずきぬかも)・・※方言「さきむり」→「さきもり」
防人に立つに当たって、その騒ぎに取り紛れて留守中に妻がすることになる 「いむ」→「いも」
農事の手立てについて何も言わないできてしまったなあ。
10月 西の市にただひとり出でて 目並べず買いてし絹の商じこりかも (巻7 作者未詳)
(にしのいちにただひとりいでて めならべずかひてしきぬのあきじこりかも)
西の市にただ一人で出かけて、見比べもせずに衝動買いしてしまった絹、
その絹は大変な買い損ないであったよ(西の市は薬師寺のあたり)
11月 我が家ろに行かも人もが 草枕旅は苦しと告げ遣らまくも (巻20 防人大伴部節麻呂)
(わがいはろにいかもひともが くさまくらたびはくるしとつげやらまくも)
(故郷の)俺の家に行く人でもいたらいいのになあ
「(草を枕にしての)旅は苦しくてならぬ」と知らせてやりたいんだ。※「行かも」→「行かむ」
12月 いざ子どもたはわざなせそ 天地の堅めし国ぞ大和島根は (巻20 内相藤原朝臣仲麻呂)
(いざこどもたはわざなせそ あめつちのかためしくにぞやまとしまねは)
さあ皆の者よ。ふざけたいい加減な振る舞いだけはしてくれるな。
この大和島根の国は天地の神々が造り固めた国なのだ
桜井市 檜原神社