令和3年カレンダー   1~6月

   1月  初春の初子の今日の玉箒 手に取るからに揺らぐ玉の緒  (巻20 大伴家持)
       (はつはるのはつねのけふのたまはばき てにとるからにゆらぐたまのお)
       新年の最初の子の日の今日 この玉箒を、ああ手に取るやいなや
       ゆらゆらと揺れ音を立てるこの玉の緒よ
   
   2月  春日山霞たなびき心ぐく 照れる月夜に一人かも寝む  (巻4 坂上大嬢)
      
 (かすがやまかすみたなびきこころぐく てれるつくよにひとりかもねむ)
       春日山に霞がたなびいていて晴れ晴れしくなく、月もうっとうしく照っている今宵
       こんな宵に私はたった一人で寝ることになるのであろうか
  
   3月  あかねさす紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る  (巻1 額田王)
       (あかねさすむらさきのゆきしめのゆき のもりはみずやきみがそでふる)
       茜色のあの紫草の生えている御料地をあなたはあちらに行きこちらに行きして歩いていらっしゃる。
       野の番人が見咎めるではありませんか。あなたは私にそんなに袖をお振りになったりして。
   
   4月  潮騒に伊良湖の島辺漕ぐ舟に 妹乗るらむか荒き島廻を   (巻1 柿本人麻呂)
       (しおさゐにいらごのしまへこぐふねに いものるらむかあらきしまみを)
       潮騒がざわめく中、伊良湖(渥美半島)の島辺を漕ぐ舟に
       今頃あの娘は乗っているであろうか風が強く波が荒い島のあたりを
   
   5月  山吹の花の盛りにかくのごと君を見まくは千年にもがも     (巻20 大伴家持)
       
(やまぶきのはなのさかりにかくのごときみをみまくはちとせにもがも)
        山吹の花の真っ盛りの時に、このように我が君にお目にかかることは
        今後千年も長く続いてほしいものです。
  
   6月  春過ぎて夏来たるらし白栲の衣干したり天の香久山    (巻1 持統天皇)
       
はるすぎてなつきたるらししろたえのころもほしたりあめのかぐやま)
        今や春が過ぎて夏がやってきたらしい。あの香久山に真っ白い衣が干してある。
        それを見ると夏到来が実感できる。  ※「らし」は根拠のある推定

       三輪恵比寿神社 初えびす
   

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