角川短歌賞応募作品 (一部です)
『言葉の旅』
我が歌よ 言霊となり高らかに地の果てまでも時を越え行け
たと おりびと
例ふれば我は織人言の葉を祈るがごとく紡ぐ者なり
ことだま
言の葉よ言霊となり 願はくば心を繋ぎ生きる力となれ
つと
苞多きことを祈りてただ一人言葉の旅に出でなむ「いざ!」
地図もなき一人旅なれど いつか着く言葉の旅の終着駅に
言の葉の旅の終はりにさりげなく身の丈ほどの辞世を詠まむ
山河あり ただひたぶるに雪が舞う 会津の里は冬真っ盛りなり
あめつち しる
天地の叫びの声を耳澄まし聞き取りながら書き記しゆく
天の時 地の利 人の和 重なりて成功すると哲人の言ふ
み
爽やかな希望の光 天に盈つ 地に沸き上がれ 歓喜の歌よ
すが
運命に逆らはないで生きて行く そう決めた日の清しさ思ふ
しはい
座右たる言葉求めて本を読む 我が眼光よ紙背に徹すべし
こた
蠟梅に息吹きかけて応え待つ 「なぜこんなにも早く咲いたか?」
臨終に手を握りしめ拍動の止まるを待てり 父との別れ
遠ざけし焼かねばならぬ日のことを 老いゆく母見て覚悟を決めた
うち う
「なぜ家は貧乏なんだ」と泣きじゃくる子を僕つ拳わが身に返る
「貧乏は不幸ではない」といつか知る 幸も不幸も心が決める
苦しみを逃げることなく身に受けよ 笑う者泣き泣く者笑う
迷ふ時天候すらも偶然も意味あるもののごとく思はる
ならい
集まれば「お前何期?」と誇らかに問ひかけ合ふは安積の慣習
さと
「悔いのない今を生きよ」と諭したる恩師の手紙 掌の中にある
学問は「問いを学ぶ」と書くんだよ 「なぜ?」が始まり暗記ではない
君の眼を開いて見なよ 今の世は物で栄えて心で滅ぶ
思いっきり生きてみなさい君らしく 一度しかない人生だもの
ここんとこ下向いてばかり 雲外に蒼天あること忘れていたよ
本当に「生きた証し」を残せたか 自らに問う「人生の意味」
ひとひ ひとひ ひとすじ いのち
今日という一日一日を噛み締めてただ一筋に生命を刻む
こころざし
被災地で健気に育つ孫たちよ「事物求めず志持て」
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