大滝村(現 秩父市大滝)は自然豊かな所だが
人口が少なく、過疎化が進んでいる。
廃校になった小学校を滝沢ダムの取材の途中で、3年程前に訪れた。
正月の雪焼けの9時半頃だった。
動かぬブランコの座の真下は雪が無く、地が見えていた。
今は、この辺に住む子供たちは
市の援助で、タクシーで送迎されて登校している。
最寄の学校が遠く、昨今のいやな事件などに配慮してであろうか。
歓声も無く何も言わぬ、閉鎖された小学校・・。
当初は、この感慨を描こうとしていたが
それでは『ああ、悲しいねえ』
『時代だねえ』『このブランコの影が物語っているねえ』
などの印象で終わってしまうと感じるようになった。
そうしたものは、モノクロの銀塩の写真で
骨太に撮影して残していただいたほうがより伝わるだろう。
でも絵という表現の作品は、私しか見えない印象や
願いのようなものが入ってこそ、呼吸すると信じている。
それで制作を進めている内に、こうした絵となった。
風の子供たちは、誰も遊ばぬブランコで遊んでいる・・
それだけで描けば、ホラーチックになっちまう(苦笑)。
でも、そうではなく仕上がったと思う。
とても良い学校だった、きっと長い間楽しい時間を産み出し続けて
ここで育った子供たちは、決してこの受けた育みを忘れない、
今は僕たち(風童)が風を起こしてブランコを揺らし
古タイヤに乗って後押しして勢いを付けて、
楽しませてもらってるよ・・といった印象の出来になった。
今も、浦山小学校を取材した時の晴れた空と広大な庭を思い出す。