いちまいの絵



2008年2月
200802
『風童の廃校ブランコ』

紙に交響水彩

大滝村(現 秩父市大滝)は自然豊かな所だが
人口が少なく、過疎化が進んでいる。
廃校になった小学校を滝沢ダムの取材の途中で、3年程前に訪れた。
正月の雪焼けの9時半頃だった。
動かぬブランコの座の真下は雪が無く、地が見えていた。

今は、この辺に住む子供たちは
市の援助で、タクシーで送迎されて登校している。
最寄の学校が遠く、昨今のいやな事件などに配慮してであろうか。

歓声も無く何も言わぬ、閉鎖された小学校・・。
当初は、この感慨を描こうとしていたが
それでは『ああ、悲しいねえ』
『時代だねえ』『このブランコの影が物語っているねえ』
などの印象で終わってしまうと感じるようになった。
そうしたものは、モノクロの銀塩の写真で
骨太に撮影して残していただいたほうがより伝わるだろう。

でも絵という表現の作品は、私しか見えない印象や
願いのようなものが入ってこそ、呼吸すると信じている。
それで制作を進めている内に、こうした絵となった。

風の子供たちは、誰も遊ばぬブランコで遊んでいる・・
それだけで描けば、ホラーチックになっちまう(苦笑)。
でも、そうではなく仕上がったと思う。
とても良い学校だった、きっと長い間楽しい時間を産み出し続けて
ここで育った子供たちは、決してこの受けた育みを忘れない、
今は僕たち(風童)が風を起こしてブランコを揺らし
古タイヤに乗って後押しして勢いを付けて、
楽しませてもらってるよ・・といった印象の出来になった。

今も、浦山小学校を取材した時の晴れた空と広大な庭を思い出す。