前日から多くの人々がブサキ寺院に集まり始めていたため、当日は大勢の参拝客や観光客でごったがえすのではないかと懸念されたが、招待客制を採用した事と事前に作成されたパンフレットが功を奏し、特に混乱もなく儀式は執り行われていった。 太陽が高さを増した頃、寺院内にはルジャンの踊り子たちが待機していた。通常行われるルジャンは、黄色い布を前に垂らしているルジャン・レンテンと呼ばれるものだが、踊り子の中には白い布をつけた者も居る。これはルジャン・デワと呼ばれ、神々を迎えるために行われるが、今では滅多にお目にかかることはない。
ブサキ寺院には、行われる舞踊によっては専用の場所が設けられている。そのうちの一つであるバレ・パガンブアンという舞台では、古典舞踊のガンブ−が行われていた。ガンブ−はジャワに伝わるパンジ物語を題材とした宮廷舞踊劇で、台詞も古代ジャワのカウィ語が使われている。楽器はスリン・ガンブ−と呼ばれる大きな竹製の笛やルバブという弦楽器が中心となり、非常に重厚で繊細な音を奏でていた。
儀式に関わった人々は一様に安堵の笑みを浮かべていた。ふと空を見上げると、青空はもうどこにも見当たらない。儀式が終了した時から急に雲が厚くなり始め、ブサキ特有のどんよりとした空に戻っていたのだ。参道を歩いていると、時折雲の境目から雷光が見える。降るかも知れないと思った次の瞬間、ポツリと雨が落ちてきた。そして目の前の道路はあっと言う間に川のようになっていった。 「重要な儀式が行われている間は、特別な力で雨を降らせないようにしているんだ。」 |
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