Seratus tahun sekali (Once a century)

100年に一度

写真・文 大木 信哉

1996年3月、バリ・ヒンドゥ−の総本山であるブサキ寺院で、100年に一度の儀式「エカ・ブワナ」が行われた。
この儀式の目的は世の中を浄化する事、つまり祓いの儀礼である。過去に行われた最大級の儀式では、1979年(サカ暦1900年)の「エカ・ダサ・ルドラ」や1989年(サカ暦1910年)の「パンチャ・ワリ・クラマ」なども同じ祓いの儀礼として知られているが、これらはバリ太陰暦であるサカ暦に基づき、それぞれ100年周期と10年周期で行われている。ところが、今回のエカ・ブワナに関しては、その筋の権威である高僧達により行う時期が決められていた。

image1私がブサキ寺院に到着した時は、いつもの閑散とした雰囲気とは一変して、多くのバリ人達により儀式の準備が進められている最中だった。大勢の女達がバレと呼ばれる壁のない建物に腰かけ、供物や飾りなどを作っている。寺院の中をひと回りしてみると、今回の儀式が随分と大掛かりなものである事に気付いた。普段苔むした割れ門や塀などは皆の手で丁重に磨かれ、参道では修復工事が行われている。トイレも新たに設置され、さらには仮設の食堂まで完備されていた。その食堂で働く高校生や修復工事をしている人、そして準備に携わるすべての人々は皆ゴトン・ロヨン(相互扶助)により無償で働いているのだ。
とは言っても、傍から見ると皆とても楽しそうで、何となく微笑ましい。

image2儀式が始まると、いつもは笑顔を絶やす事のないバリの人達も、一転して真剣な表情に変わる。それは神の存在がより身近なバリ人にとって、まったく自然な事であり、バリの人達が、日常生活の中で神の存在を素直に受け入れている証拠に他ならない。実際のところ私もバリ島に来ると、その独特の空気感から特別なものを感じていた。それは街の様子や風景からではなく、明らかに他の土地とは違う「何か」が存在しているように思えた。

儀礼の途中、突然一人の女性が大声を上げ始めた。どうやら霊が取り憑いているようだ。すぐに二人の若者が取り押さえたが、両腕を前に延ばし、女性とは思えない低い声で何やら喋っていて、もの凄い迫力だ。しばらくして場内の一人が大声で何か叫ぶと、一瞬場内はどよめいた。今日の供物は十分であった事が確認され、プマンク(僧侶)がマントラを唱えながら、その女性にティルタ(聖水)を振りかける。顔に墨が塗られるとその女性は正気に戻ったが、暫くは何が起きたのか解らない様子だった。こうした出来事もバリでは珍しい事ではないのか、儀式は何事もなかったように進められていった。

>>>つづく>>>


| Directory | ONCE A CENTURY | Panca Bali Krama '99 |

メールはこちらへ
Send a message to artisfoto@bekkoame.ne.jp

The World Wide Web Artis foto Gallery
Copyright (C) 1998 Nobuya Ohki (Artis foto), All rights reserved.