晴れゆく霧

正男が石を集めているとさっきの男が追ってきた。
??? 「ったく、さっきのところにいないと思ったら・・・」
正男 「んっ?あっお前はさっきの。」
正男のその様子に男は呆れながら、
??? 「おい、あんた話は聞いてたか?勝手に動くなと言ったはずだが?」
正男 「なんで初対面の奴にそんなこと言われなきゃなんねぇんだ。俺が何しようといいだろ?」
??? 「・・・あのな、普通の場所ならそれでいいが今の草原はこの霧が覆っているんだ。
    この霧の中にいたら消えてしまうからと俺はあんたに石を・・・んっ?」
男はそのとき、正男の手にある石に気がついた。
??? 「・・・それはどうした?」
正男 「・・・あぁ、お前がどっか行ったあとに見つけたんだよ。あっ、言っとくがやらねぇぞ、もしかしたら売れるかもしれないし。」
??? 「売るなぁ!・・・じゃなくて、でかした!」
男はツッコミつつも喜びの声をあげた。
正男 「・・・?何がだ?」
それを見て正男は首をひねる。
??? 「それを貸せ!持ってる石全部だ!」
正男 「何を!?渡すわけなぇだろ!これは俺のだ!」
??? 「いいから渡してくれ!それがあればこの霧を晴らすことができる!」
正男 「霧を?・・・石なんかで霧が消えるわけねぇだろ?それによく見たらお前だって持ってるじゃないか。
   それだけあれば十分もうかると思うぞ。」

正男は石を手放さない。その様子を見て男はひらめいた。
??? 「・・・俺はさっきこの霧のせいで草原が消えてしまうと言ったよな?」
正男 「言ってたな。でも霧なんかで何か消えるわけないだろ?」
??? 「消えるんだよ、放っておいたらな。」
正男 「・・・?」
??? 「・・・正直な話、俺もまだすべて知っているわけじゃない。だがこの霧に包まれたものは消えてしまうということは事実なんだ。」
正男 「・・・で?なんでこの石がいるんだよ?」
正男は拾い集めたオレンジ色の石を見せる。
??? 「それは『太陽片(たいようへん)』、太陽の力の一部を持つ石だ。この世界では至る所にあるだろ?」
男は霧に覆われて真っ白になった空を見上げる。
??? 「この世界の太陽は神聖なものだ。このくらいの霧はかき消すことができるが
    ・・・どうやらこの霧の力も強いみたいでな、地上からも太陽の力を発揮しなければ霧は晴れないようだ。」
正男は少し頭が痛くなってきた。男は構わず続ける。
??? 「この石は元々太陽の一部だ。一個では力を発揮できないが集まれば小さな太陽ともいうべきものになる。
    太陽が2つあれば霧は晴れるかもしれないそうだ。」
正男 「・・・本当だろうな?」
男はうなずく。そして言った。
??? 「もし放っておけば金も消えるぞ。」
正男 「わかった、渡してやるよ。」
正男はあっさりOKする。男としては石を渡してくれることに異存はないのだが少々呆れる。
正男 「・・・ところであんた誰?俺は正男だが。」
正男は初歩的な質問をする。男は石を袋に詰めながら思い出したように言った。
ブライト 「あぁ、俺はブライトだ。この草原の近くにある『木漏れ日の森』に住んでるんだ。」
正男は聞いたことない場所だと首をかしげる。そして気づく。
正男 「・・・?そういえば俺今までにそんな石見たことねぇぞ?」
ブライト 「・・・太陽片を知らない?・・・。」
ブライトは少し不審がる。しかしすぐにまじめな顔になって石をつめた袋を持ち上げる。そして、
ブライト 「・・・っだぁ!!」
袋を空に向かって投げ上げた。そして次の瞬間、
正男 「うぉ!?」
袋、正確には袋の中の石がすさまじい光を放った。まるで太陽のように直視できないほどの光が。
正男 「さっ先に言ってくれよな・・・おぉ!」
ブライトに不満を言いながら正男はゆっくり目を開けて空を見る。するとそこには青空が広がり太陽が輝いていた。
ブライト 「これでひとまず安心か・・・。・・・んっ?」
ブライトはつぶやき正男を見る。しかし正男は唖然としている。
ブライト 「どうした正男?」
ブライトが声をかける。
正男 「・・・おいブライト」
ブライト 「・・・?」
正男 「・・・ここ・・・どこだ?」
石を集め始めたときから少し違和感は感じていた。草はいつもの草原と違う気がしたし動物は初めて見るものばかりだった。
正男の目の前に広がっている草原は正男の知っている場所ではなかった・・・。


トップへ/ 正男トップへ/ ストーリー正男トップへ/ White To Zeroトップへ