YACHT
  ここでは「Firebug」と、CLC17LTの左右にアウトリガーを付けた[Sailing Kayak」の2つを紹介します   Build a boat and learn to sail.
Firebug-#840
合板を用いたヨットの設計、製作で画期的な成果を挙げたJohn Spencerが晩年改めて初心に戻り自作者のために生み出したディンギー(Firebug build-it-yourself plywood sailing dinghy)です。ボート製作の初心者のために驚くほどの工夫があちこちに施されており工作には特に難しいところはありません。絶対的に低価格でまともに乗れるディンギーです。同等のディンギーを手に入れるのと比べると約1/3~1/2というところでしょうか?
バルクヘッドとなるフレームを立て、ガンネル材、チャイン材を取り付け、ボトム・サイドに合板を貼ります。コクピットを合板で囲めば全体像が出来上がります。ちょっとした工作上の要領は必要でしょうが。
マスト・ブーム、艤装品、セール等には少なからぬセーリングの知識が必要になります。がそれらはセーリングを始め、楽しむためにはどうしても身につけておくべきものです。

 
(注) Firebugは船つくりの、セーリングの初心者向けのクラスとしてデザインされました。初心者向けとはいえ制作上においても、またそれ以上にセーリング(特にクラブレースやクラスのレースにおいて)する際のためもにデザイナーの開発趣旨に添うようにクラスルールが定められています。今までこの点にはあまり考慮しないでこのヨットに自分なりの考えで艤装を施してきました。いまもそのままでセーリングしています。しかしこのままではルールを知らないのかまたは敢えて無視しているかのようなことになってしまいますので出来る限りクラスルールについても触れておきたいと思います。(2010/07/04~)

1.設計図とマニュアル

 協会から購入した1/10縮尺の設計図付小冊子とラダー他の原寸図1枚からスタートする。
 
 (クラス協会 http://www.firebug.co.nz Wooden Boat Magazineにも図面の紹介があります)
            

2.船台(造艇のための)
 前後のトランサム(⑥と①)と2枚のバルクヘッド(④と②)、2枚のフレーム(⑤と③)の6枚を船台に固定する。スターン側から①②③‥⑥とすれば①と⑤、②と④は同型で③を中心に対称となっている。よってコクピットの側板も③を中心に前後が対称になり工作がたやすくなるように工夫してある。
        

3.ストリンガー取付
 ガーダー(センター)、チャイン、ガンネル等7本の縦通材(ストリンガー)をエポキシとねじ釘で固着する。全工程の中では最初の難所である。ビルジチャインのストリンガーは形(断面)を整えてから付けるか、はってから削るか。どのフレームでもボトム・ビルジ・サイドのなす角度がバウからスターンまで一定なので切りだし易いしパネルをはり易い。デザインの重要ポイントの一つだ。
      
 ビルジチャイン材は私は下図(左端)のように加工してから取り付けた。設計マニュアルとは違った方法である。
        
 

4.外板貼り
 エポキシとねじ釘で固着する。ボトムパネルはなんと9mm厚で、4'x8'を真っ二つに切った2'x8'そのもの。サイドとビルジ両パネルは4mm厚、ボトム・ビルジ・サイドのつくる角度が一定(上記)なのでねじれのない曲面であり貼り易い。
        

5.デッキはり準備とコクピット
 船台から抜いて正置してからコクピットの側板の固着とデッキ補強の棧を入れる。艇体内側の防水処理をする。コクピットのまわり(前後左右)は浮力タンクで100kg超でも乗れることを確保している。
デッキは面一(つらいち)なので貼り易い。この時点でハイキングベルト取り付け用の木片をパネル②、④に裏打ちしておくこと。デッキを貼ってしまうとハッチの位置によっては面倒な作業になってしまう。
     

6.デッキ貼りと表面処理
 固着後ねじくぎを抜き、爪楊枝処理を行う。凹部分をパテ埋めした後、サンディングをする。
   

7.白ウレタンの塗布
 濃いめの木地部分と真っ白のデッキ・底板、ブルーの外販のコントラスを狙いました。ハイクアウト時に膝うらが当たるコクピットの角(カーリン)は斜めになっている。
ハッチは2個
(注:コクピットの前後壁に取付けることがルールで決められている。クラスルール1.8条 Inspection Ports)で、コクピット後部のパネル中央部と前方デッキ部にしここには内部を状にして水密の物入れに使用することにする。
      

8.外板の塗装
 華やかなブルーに白ラインとする。ついでにマスト・ブームは木地、セールは白である。ここまででハルの製作は一段落し艤装を残すのみとなる。
      

9.センターボードとラダー・同ケース
 9mmx2=18mm厚の板を作る。圧着方法は
大型の火打ち金物で挟みクランプで締め込む。間にグラスクロスを入れることもある(注:センターボードは合板を使うならグラスコーティングをしたときのみ許可-クラスルール3.1条 Centreboad)。前後にベベルをとり 塗装して完成。ラダーのUP/DOWNでは一工夫してみた。
センターボードケース・ラダーケースも9mmx2=18mm厚の板を用いて製作(
クラスルールでは単板の使用となっていて合板は不許可)。
    

10.CBケーストップ、ラダー、トローリー
 センターケースのトップは堅木で木目を気にして工作。ラダーケースは分解式(ボルト留め)。トローリーは600円タイヤとイレクターで‥軽量ボート台車のワンパターン!タイヤのバルブは始めから日本製に交換したほうがよい。
    

11.艤装品
 Firebugに特有のものはt=1.5mmのステンレス板から切出し加工した。切断・曲げ・穴あけなど大変で1.0mmでもよかった。グースネック・マストステップ・ピントル&ガチョン・他。トランサムとラダーケースの双方ともガチョンとし6mmのステンレス棒を通して連結する方式にした。通常のピントルの工作が難しいため。
    

12.マスト・ブーム
 アルミのマスト・ブームは高価なのと1セットの輸入では送料がばかばかしい。というよりやろうとしていることは極力木製であるべきで初めからウッドと決めている。写真の2,3枚目はテストピース。4.2m梨型の中空・グルーブ付きマストを1.8mの桧材で作る。断面は4枚の貼り合せ。貼り合せにはビスケットを奮発した。
セットした1.8mの3本を2箇所のスカーフ継ぎで4.2mのオンデッキマストにする。バードマウス方式もあるがこの方法も面白いのではないか?ステーの取付部より上はわずかにテーパーにしている。ブームは2.1mの円棒形。ニス塗りが望ましいがエポキシ塗り。
     
     

13.艤装
 小さいながらも一通りの艤装をする。ボート作りの初心者用にとデザインされたヨットだが、さすがに一流のデザイナーの深慮もあって全てのコントロールが出来るようにしてある。決して初心者用だからといって手が抜かれてはいない。
マスト位置は3段階で前後に、スタンディングリギンはラニヤードを用いてマストレーキを調整、ブームバング・カニンガム・クリューアウトホールは当然で、さらにはワンポイントのリーフも出来る。ブームバングは小さい子にも引けるように強力にした(マスト・ブームが耐えられるかなーちょっと心配)。 (注:ブームバングには仕様が定められており写真のようなテークルは不可-クラスルール2.6条 Kicker)。
あとコクピットにハイキングベルト(高さ調整可)を付ける。一見してフルハイクアウト時にガンネルでふともも裏は厳しそう

    
デッキに無風対策の貼付のパドルを取り付けている。
デッキ面にあるハッチは内部が袋にしてあり宝物(飲み物・携帯電話・工具等)を隠す。
写真の2・3枚目はFirebug の他に壁面にOP・スコウモスが、手前にセーリングカヤック・Bob's Special16が並んでいる。
     
14.進水
 工房で作るボートサイズはカートップのできるボートにしている。どこでも下ろせてセーリング‥‥がいい。
ディンギーは浜からで結構。写真は琵琶湖の真野浜-琵琶湖大橋の直ぐ北にある水泳場で水もきれい。遠くにレース中のクルーザーのスピンネーカーが見える。
 

   
15.艤装の拡大写真 
 デッキは完全なフラット。3本のステーでオンデッキマストを支える。マストステップは3ホールありラニヤードの長さの調節と相まってマストのレーキ、ヘルムの調整が可能。子どもや大人が一人で乗るときや親子の2人で乗るときに、また風波の状況に合わせて微調整ができる。もちろん調整にはかなりの知識と経験があってのことだが。デッキのフラットを利用してパドルを密着収納する。まったく邪魔にならずに済む。一人前のメインシートブライドルを艤装している
(注:メインシートブライドルはセーリング中の調整はしてはならない-クラスルール2.7条 Mainsheet Bridle)
   

 ハルサイズに対してセールのエリアが4.5㎡あるのでブームバング(キッカー)は十分に機能するようにテークルを増している
(注:ブームバングのブロック・シーブ・レバー等の使用は出来ない。というより決められた仕様でなければならないことになっている。セーリング中はメインシートの操作の際に合わせてバングを調整すること以外には操作してはならない-クラスルール2.6条 Kicker)。
カニンガムはワンポイントリーフと兼用できるようにした。セールには予めワンポイントのリーフグロメットが付けてある。クリュ-アウトホールもきっちりトリムできるようにした。タックとクリュ-はきっちりとマスト・ブームに密着させることも重要である。
メインシートはメインシートブライドルを介してブームに沿いダガーボードの前方のブロックから手元へリードされる。マスト添いの細いロープはセールのハリヤードでちょうどマストから外へ出てきたところ。コイルしてクリートに取り付ける。
   

 ハイキングベルトの長さ(高さ)は子どもと大人では大きく異なるので調整できるようにしなければならない。後端はバルクヘッド(コクピット後部)に12cm浮かせてボルト留め。前方はバルクヘッド(コクピット前部)に12cm浮かたところに12mmのアイをボルト留めし、ベルト端からロープにつなぎアイを通したロープの長さを調整してエイトノットし抜け止めとする。ハイキングベルトの不使用時にはボトムに添わせておく。使用時はベルトの下をくぐらせた前後のショックコードを引き締めてベルトをボトムから10cmほど浮かせた状態にする。
ラダーのup/downはコントロールロープでティラーの手元で操作、ジャムクリートで固定する。
    

     
 マストは自作の木製でアルミマストほどのテンションをかけることは出来ない(と思う)のでマストのベンドはあまり期待できない(ハイキングベルトを十分には生かしきれない)。アルミマストを前提のセールは木製マストとの取り合わせには少々問題があるかもしれない。
 マストの右側デッキに水密インスペンションハッチ(点検窓)をセット。中は袋状にしてある(自作)のでもの入れとしても使用。見えている内容物はシャックルキー・小型プライヤー・予備のシャックル・6mmナイロンナット・同蝶ナット・携帯電話収納用の水密ケース等。後は出艇直前におやつ・飲料ボトル・曳航ロープ・雑索等を入れる。6mmナット・同蝶ナットとは? ラダーケースはボルト留めにしてありいつでも分解可能、ケース上にティラーを2個のボルト留めにしてあるため。前側ボルトを抜き後側ボルトを支点としてティラーを跳ね上げトランサムとラダーケースのガチョンを合わせ上部からピンドル(6mmステン棒)を通す。ティラーを元に戻すとピンはティラーと干渉して抜け落ちない。
(注:インスぺクションハッチはバルクヘッドの#2と#4に取付けることになっているのでデッキのものは物入れと呼ぶことにしよう)

      

16.セーリングシーン
 写真集
A:風が弱くほとんど波のない穏やかな日のセーリングで初心者には良い練習日だった。近江富士が見える。上3枚:真夏の雲ひとつ無い快晴の日、下6枚:爽や  かな秋の日
    

    

    
B:厚い雲の下、腰のある風と波が残っているある夏の日のセーリング。4才・7才と一緒なので気を抜けない。ヤング達は慣れてくるとキャーキャーと喜んでい る。合計100kg超の成人2人でもセーリングできるのがうれしい。普通のジュニアー用のヨットとはデザインの意図が違うことがわかる。
   

   


連絡先:
akt1007@mwe.biglobe.ne.jp  または akichanyan@gmail.com
     TEL:090-7348-9255


                   フィッティングへ    BOATへ   Sailing Kayakへ   トップページへ