本文へジャンプ
バスで行く「奥の細道」(その55) 最上川下り(山形県) 2020.11.15


   

(写真は、最上川下りの船からの紅葉)   



「新庄」の豪商であり俳人の「風流」の邸宅に泊まった芭蕉は、新庄の「本合海」(もとあいかい)から、最上川下りに乗船しました。

(新庄での芭蕉については、「新庄」を見てね。)             

                                                                                                                                                                                        

本合海(もとあいかい)は、かつて、最上地方と庄内地方との間に陸路がなかった時代に、舟運の中継地として栄えていました。

芭蕉は、実際に舟に乗ってみて、最上川の風景に心を揺さぶられ、「奥の細道」に以下の様に記載しています。

「左右山覆い、茂みの中に舟を下す。   

 白糸の滝は、青葉の隙(ひま)々に落ちて、仙人堂、岸に臨んで建つ。

  水みなぎって、舟危うし。 

  ”五月雨を(さみだれを) 集めて早し 最上川”」

 



私は、銀山温泉に1泊した翌朝、宿泊している旅館に、最上川下りの送迎バスが迎えに来ました。

送迎バスの車窓から、芭蕉が乗船したという「本合海」(もとあいかい)の渡船場跡を見ます。



本合海の渡船場跡には、芭蕉と曽良の像と、芭蕉の句「五月雨を 集めて早し 最上川」の句碑が建っていますが、私は、送迎バスの車窓から、
この像と句碑をチラリと眺めただけで通り過ぎました・・・



また、「本合海」の川向うにある、上の写真の鳥居のある山の中腹に「矢向(やむき)神社」があり、上陸した義経一行はこの神社に参拝しました。

 

 

送迎バスに揺られること約1時間で、最上川下りの乗船場である「船番所」に着きました。



写真は、「船番所(古口番所)」で、最上川の舟運のいわば関所跡で、関所番人の役宅が公開されています。 





ここから舟下りは、「草薙」(くさなぎ)までの約12キロ、所要時間1所間ほどです。



説明版によると、

「ここ古口(ふるくち)より下流は、最上峡と呼ばれる峡谷で、ここから先は陸路がなく、全て最上川の舟運に頼らねばならないため、新庄藩の船番所が置かれていました。

 古口の船番所の役人は、二本差しの帯刀を許されて200石を与えられ、川舟の荷物の出入りを監視していました。

 なお、1623年に新庄藩主に戸沢政盛が任ぜられて以降、明治の戊辰戦争で廃城となる迄の250年もの長きにわたり、1回の国替えもなく戸沢氏が統治しました。」

と、あります。



懐かしいNHKドラマの「おしん」もマスクをしています。

チケットを買い指定された時間まで、乗り場の土産屋で待ちます。






時間になると、船頭さんが迎えに来て、「最上川芭蕉ライン」の舟まで案内してくれました。



船内は、掘り炬燵の様になっていて、屋根も付いています。

船が出発すると、船頭さんが、山形弁で色々と説明をしてくれます。

















出発地点に戻る舟とすれ違います。



上の写真は、岸辺に建てられた小屋で、本来は、土産物や食べ物を売っているそうですが、現在は、残念ながらコロナで閉鎖中です。











小さな滝が所々にあります。

  















この辺りは、NHKドラマ「おしん」で、舟に乗せられて売られて行く「おしん」を、父がこっそり見送る、というシーンが撮影された場所だそうです。 





川原で鳥の群れが戯れています。





急流らしさを感じるところを通過!

富士川、球磨川と共に、日本三大急流の一つに数えられる最上川ですが、季節によって異なるのでしょうか、その実感はほとんどありませんでした。



下船場が近くなり船頭さんの”最上川舟唄”が入ります。 



舟下りの最後の見どころ、上の写真の「白糸の滝」が見えます。



上の写真は、白糸の滝の近くの「仙人堂」で、源義経一行が、兄の頼朝に追われて、奥州平泉に落ちのびる途中に立ち寄ったといわれるお堂です。

義経の家来の一人の「常陸坊海尊」は、この仙人堂で、義経一行と別れ、義経の追手をここで防いだそうです。

義経一行は、下流の清川という所からから舟に乗り、舟に帆を張って、最上川を遡り、「本合海」(もとあいかい)で下船しました。

つまり、芭蕉は、逆に、義経が下船した所から舟に乗ったことになります。

源義経一行が最上川を遡ってから500年後、芭蕉は最上川を舟で下り、「仙人堂」に参拝するために舟から下りました。

そう、芭蕉の旅は、義経の足跡を訪ねる旅だったのです。

(芭蕉の義経の足跡を訪ねる旅については、有名な「平泉」以外にも、「塩釜神社」や「医王寺」等があります。)  

                                                                                                                                                                          



「白糸の滝」を過ぎると草薙の下船場はすぐです。









(下船場の出口の芭蕉像)