第7話 反抗

「瞳のお父さんが なぜ 年頃の娘に男女交際を 許さんないのかと思うでしょ

武君は 中学は居住地区の関係で瞳と違う中学だよね

だから瞳が中学三年生の時に 起こった運命を変えた事件のこと知らないのよね」

 

俺は 瞳の過去を聞こうとみお乗り出した  と その時だった。

廊下から窓越しに俺たちを 覗き込む視線を感じる。

二人とも会話を止めて、廊下の方へ目をやると男は 顔を隠すように走り去った。

「誰だ?」

「あれっ 確か 瞳のクラスの 加藤哲君ょ」

「知らないなぁ 〜 どういう奴なんだ?」

「あぁ いゃーだぁー なんか怖い 彼 問題ばかり起こしている、評判の不良少年

「マジで ? 奴が 不良少年だなんて...そんな風には 見えなかったぜー

どっちかと言うと 勉強の出来る秀才タイプに見えたけど」

ビンゴー ! 彼 学年一の秀才なの

けどね  ...あんな顔してハッカーやったり盗聴したりして、補導されてるのよ

なんでも中三で 学校のコンピューターに入り込んでテスト問題と回答を読み取り

その情報を 成績の良くない生徒に横流したりしたらしいよ。」

「何のために?」

「自分のハッカーの才能を誇示するためじゃない 

この種の連中は捕まらずにどこまで極秘情報を盗むかがプライドみたいよ」

「そんな男が なんで俺なんかに興味もつんだ?」

「 たぶん 瞳と ...あっ やばい

私どうかしてる 武君のことまだ 何も知らないのに 瞳の秘密をバラそうとするなんて・・・最低

武君 今日はもう 帰りな

じゃ ギターもっと確り練習て こいよ

また明日ここで逢おうね バイバイ」

「おい おい どうするんだよ 歌のこととか 軽音のこととか?」

道子は 笑って手を振り逃げるように俺から去っていった。

まるで道子とデートの約束をしたような錯覚に陥る。

それはたぶん瞳に逢いたい気持ちがあるのに瞳の父の事があるので心の葛藤が生まれ

感情の代償を友達の道子に求めていたのかもしれない。

 

夕方になって気持ちが落ち着くと 瞳の方からケイタイが入った。

「たける君 〜♪

デート楽しかったよ \(*^▽^*)/

なんか いやなこと皆忘れられた

ありがとう 

あっ  それから

帰りが遅くなった事、お父さんに怒られなかったよ、だから心配しないで 

じゃまた(^ ^)V」

 

「了解 歌がんばろうぜ(^^)/♪

ほんじゃ またね〜★」

 

翌日も、こんな調子で二人はケイタイのやり取りをして

道子と三人でとりあえずバンドを組ことにした..

学校では瞳と直接、逢わないよう心がけ軽音楽部教室で道子と二人で段取りを決めた。

学校がひけてからケイタイで瞳と連絡をとりあうようにしたのだが...

滑り出しは順調のように思えたが

予想どおり.瞳にバンド活動での問題がもちあがった。

それは生ギターの練習が家で、できないということだ。

部屋でギター練習していたら、その音が漏れて父親にみつかりそうになり、言い訳に相当苦労したとか...

 

「たけ 大変〜

昨日 二階でギター弾いてるの危うくみつかりそうになったぁー

なんかこれからヤバくなりそうな気するだ !! どうしょう  (@_@;) 」

 

この瞳からのメールが気になって仕方ない

翌日の授業の吉田先生の話しも全然頭の中に染み込まず 上の空〜

終了のチャイムが鳴ると 居た溜まれず、ついに俺は 掟やぶり に走った。

 

隣の組のの所 へ駆け寄った。

休み時間で、半数近くが席を立っていなかったが、瞳は窓際から離れた反対側の奥の列で、一人自分の席に座り

両耳塞ぐように小さく丸くなってうな垂れていた。

窓際には小さな円形の陣を作って女子の一団が、時々大声で嘲るように笑いながら 何やら駄弁っている。

それも話しの内容は どうやら瞳のことらしい

「がり勉小町ちゃん 昨日も夜遊びみたいよ 凄いねー」

その異様な雰囲気に包まれて瞳 孤立していた。

「瞳ー」

「あっー 武 学校で近づいたら、だめだって あんなに言ったのに」

と瞳は 顔を揚げて涙目で、言葉とは反対に俺の救いを求めている表情を見せた。

よく見ると瞳は 指先から血を滲ませている。

その滴り落ちた血が机の上のノートにまで流れ

無数の赤い染みを作っていた。

「瞳 指先から血が・・・」

「大丈夫よ 武 さっき筆箱を 開けようとしたらチャックの所から画鋲の先が飛び出していて

刺しちゃったの・・・傷は小さいから直ぐに止血するはずよ」

 

「何で 筆箱の中に画鋲が入ってんだょ

それおかしいだろ?

いったい誰が入れたんだ?」

窓際の円陣を組んでいた女子集団の小太りの背の低い道子に少し似た可愛らしい一人が、俺に近づき

嘲笑うような目つきで俺に話仕掛けてきた。

「確か 隣のクラスの武君ね

ちっと君 何勝手に怒っての?

 何にも知らないんだね

瞳お嬢様はね、そんなこと 最近なってさぁ 毎日あるのよ

表向きはクラスの美人の福委員長で 皆から一目置かれているように見えても

担任の先生の目届かない所では

いじめの的で 皆より付きたがらないのよ

なぜだかわかる

瞳ちゃんに近づいた男はねっ

そのうち父親から呼び出しくらって、何だかんだ理由つけられて、この高校から永久追放されちゃうよ。

経歴にも傷つけられちゃうかもねー

どんなに 美人で優等生でもさぁ 親がこれじゃね

「ざまみろー」って感じよね

それに 寄ってくる男に ありもしな嘘を平気でついて

翻弄させるらしいよ 

だから 瞳ちゃんの もう一つの綽名は 夜遊び小町なの知ってる?

そんな子 早く捨てて、他の子に乗り換えた方がいいよ」

 

「デタラメ言うじゃないょ

そんなこと絶対信じないぜっ

俺は 瞳と本気で交際しているんだ。

文句あるのか?

「あんた さぁー 相当な ばかね」

俺はこの時、睨みつけながら怒鳴った。

「言いたい放題 言いやがって

うざいんだょ 豚猫小町ー

飯くって 家で大人しく何もしないで豚寝しろ!

堪えた笑い声が円陣の女達から 漏れる。

怒りった女は 

本性剥き出しに顔を赤らげて

「武君ね 瞳ちゃんいくら綺麗だからってね

父親じゃなくても 監視人がきっと君をボコボコにするよ」

 

すると隅で聞いていた男が その子に近づき

ちゃん もう止めとけよ 武君の言い分の方が 正しい」

「章 委員長〜」

と呼ばれた女は 子猫のように純心な顔つきを装って、大人しく無言で円陣に戻って行った。

「瞳 」

俺は机にうずくまった瞳の手握って叫んだ。

 

「今日  学校ひけたら俺とデートしてくれ。

楽器や行って瞳のお気に入りになりそうなギター一緒に探そう

約束どおり 二人でギター練習ぜー

瞳は 涙目の笑顔で頷いた。

二人は この瞬間から少しのチャンスがあれば一緒にいたいと願ったと想う...

 

そこに休憩を 終えた例の  が教室に戻ってきた。

すると教室の雰囲気は一変してしまった。

 

円陣を組んでいた女子団は蜘蛛の子を散らすように、慌てて散り散りに席に着き

正義の象徴のように構えていた委員長までが、逃げるように自分の席に着いた。

 

「武君 哲です よろしく

君の話しは 廊下で全部聞かせてもらいました。

本物の恋は 自分の気持ちに正直であることが唯一の条件だと僕は思う。

その意味で・・・君の勇気に敬意を評します。

君が羨ましいよ

僕は 君達の仲を今のところ邪魔するつもりはないから

これからも、どうか僕を 失望させないで欲しい。」

と目線を合わせて話しかけてきた。

「 ?」

 

今までに感じた事の無い異常な緊張感で俺は 固まってしまったが・・・

次の授業のチャイムが鳴って俺はこの危機から救われた。

 

最終科目の授業が終わって、俺はなぜか吹っ切れた気持ちで、瞳といっしょに楽器屋に直行した。

瞳は 一台一台丁寧に見て回ってピンクのテレキャスターモデルが気に入ったみたいだが..

俺が昼休みに用意した資金には、後二万二千円足りなかった。

事情を正直に話して別棚に飾られていた、手作りキットの白いテレキャスターなら買えると告白した。

お嬢様の瞳は お金には困った事が無いはずなのに 言葉を濁して

「ありがとう 

でも...そんな高価なもの とても貰えないわ

無理しないで 気持ちだけで充分だから

それに私の小遣いじゃ足りないし...」

「大丈夫だよ 瞳

このお金は今年の夏に、どうせ勉強なんか全然しなくて、

うだうだ過ごすかもしれないと思ったから、そんなら、いっそのことはコンビニの他のもう一箇所、短期のバイトしようて決心したわけ。

で、前から新しいギターが欲しかったんで働いて積み立てたんだ。」

 

「ええっ   ? たける そんな大事なお金なら   全然大丈夫じゃないじゃない 」

「俺  お金に関してはどんなに苦労しても欲しいものがあるとルーズなんだ。

    きっと親父の遺伝子かも」

 

「・・・・遺伝子

子供みたいに正直に言うのね

私 わかったは

・・

私の為に 使っていいのね」

「 喜んで 」

「もうー

まいっちゃうな  そんな無邪気な笑顔で言われると・・

たける 見てて  絶対 毎日練習して上手なるからねっ

 

俺はギターなど作った事が無いのに、説明書を片手に3日で 学校とバイトがひけてから徹夜して組み立てて

出来上がりを 瞳に手渡した。

瞳は手製のパープルのショルダーストラップを用意して、ギターに取り付けてくれた。

 

 


 

(瞳の視点で)

私は 一人舞台に立っていた。

スポットライトを一斉に浴びせられて目が眩む

足元のエフェクターを押してギターを弾こうとする、アンプから音が聞こえない 

どよめく観衆

『どうしょうー』

「ひとみ〜」と舞台の袖口から武の声がエコーする

振り向いて手を伸ばした瞬間 〜

 

 

右手がけたたましく鳴り響く目覚まし時計に当たって現実の世界に舞い戻る

続きを見たくない夢だった。

乱れた呼吸を和らげるために、まだ紫に染まっている夜明けの街が見わたせる窓 をゆっくり開けて澄んだ秋風を 胸に流し込んだ。


部屋の中に 視線を移すと

たけるから貰った手作りギターがベットの横にきちんと立てかけてあつたが

机の上は 酷く乱れていた。

ギターのペンタトニックスケールレッスンの楽譜が広げたままで散在して、その楽譜の真ん中あたりに、日記帳が捲れたまま状態で 置いてある。

 たける  たける   たける 」と武の名前だけ書いてあるが、書いた記憶がぼやけている。

柱の鏡に目をやると、私は制服を着たままだし、胸のボタンが取れてはだけた感じだ。

 

「昨日は 私 何やっていたんだっけ...

えっと スケールレッスンで右手と左手のシンクロかなり頑張ってて

喉が渇いたので、下に降りて冷蔵庫の中のジュースを探していたら

父に呼び止められて

 

「お前 最近二階で何やってんだ 変だぞ」って話しになって

ヤバかったからキレてしまったまでは覚えているけど・・・

その後がどうしても思い出せない

 

私は 自分の胸に顔を 寄せて私以外の体臭が 無いか祈る思いで嗅いだ。

どうやら私の匂いしかしないと判ると・・・ベットの横のギター

自分の膝の上に垂直にして乗せ、ネックとボディーに手を絡ませて

たけるの匂いを体に刷り込ませるように思いっきり抱きしめて

 

       『たける』 と擦れた声で その名を

       白いブラウスが涙で染みができるまで呼び続けたまま

       また意識を無くすように、その場で浅い眠りについた。

 

翌朝、心配していたことが、とうとう現実となった。

朝食の時

「瞳 お前 武と言う青年と付き合っているらしいな」

と聞いてくたから、私 素直に事実を認めた。

 


(武の視点で)

 

瞳の父親に二人の交際がバレて、クラスで噂がひろがっても

          なぜか?

呼び出しをくらって絶交をせまられることはなかった。

父親の態度が 今までと違うことに、瞳は少し性格が変わったように思えるくらい強気の女になっていった。

『父には負けたくない』という言葉をメールで何回も伝えてきた。

それも最初の内だけで瞳の親への反抗はエスカレートしていった。

 

「たけると付き合ってると 「誰が」父に通報したのかしらね??

武が あれほどおおびらに皆の前で宣言したんだから覚悟してたけど

 

家で ギター練習するのもう難しいみたい。

でも たけるに迷惑が掛かるのは 絶対に 絶対に いやー

たける 私 決めたんだ。

父に止められて気がついたの、こんなんじゃーこれから先、私の人生なんて 無も同然よ (゙ `-´)/

家出したっていいから 自分のやりたいことやることにしたの。」

 

「瞳 落ち着けよ 

気持ち よく判るけど

ギターの練習より俺達の交際を続けることの方が大事だと思わないか?

二人で 方法考えようぜ」

 

「そうねっ

私も キレルと危ないタイプなのかなぁー

私 弱いの 

たけるだから 本音言えちゃうけど

また 連絡するね」

 

結局 瞳とのメールのやりとりから、瞳の意見も取り入れて、

「瞳の父親を これ以上刺激するのは まずい」という結論なり

三人で練習するのは 周2回ぐらいで土曜と木曜にする予定だったが、バイト先のシフトが変更になって

土曜は練習できなくなったので火曜と金曜の夜にすることにした。

道子からの提案で、できたら「他の仲間も探したら、いいんじゃないか」 ということになった。


(軽音楽部教室での武と道子の会話)

道子とは音楽室で毎日逢うようにした。

瞳に直接伝えたいこと意外は道子を通して連絡することも増えてきたのだ...


「部長 歌が上手くてギター弾ける仲間 見つかった?」

「心当たり 一人いるけど、  ね・・ ボーカルは保留しておかない?

焦らない、焦らない 武君も、じっくり探しみてよ 」

「一人いるって どんなやつ?」

「五組の佐久間勇輝よ...その子ちっと、尖がっているところがあって

不良少年じゃ・・・ないかもしれないけど、突っ張り一匹狼みたいな雰囲気なの

噂によると一人で曲作って

土曜の夜に遊歩道で路上ライブもやっているみたい?

最近は、やっと単独行動しなくなったみたいだけど...

ネットで仲間集めたりして音楽活動やっているみたいだしさ

頭さげても、

「お前達かったるいぜ!」て言われそうな気がする」

「だめで元々じゃん 声かけてみたら」

「私ね これでも女の子よ 彼の場合ちょっと辛いわ 武君誘ってみてよ 」

「俺でいいの??俺まだ正式に部活やってないんだけど?」

「細かい事言わないの」

「いいけど・・・・部長って案外そういうところ、いい加減なんだな

じゃ聞くけど部活の担任先生だれ?」

「白井和美先生よ」

「あーあの人のね」

「白井先生てとても軽音楽部にとっては都合のいい先生なの

活動報告と部費の資金管理さえ確りしていたら

「何やっても自由です・・君達で軽音楽部を作っていきなさい」

て、いつも言ってるの だから 練習場所は私のお母さんのビアノ教室にするわ

あそこだったら、7時からだったら週のうち三回は自由に使えるし防音で、鍵もかけられるし

とりあえず、瞳のことも安心だし

それでなんとかなりそうな気がしない?」

「それいいじゃん、瞳の場所さえなんとかなれば、あとは俺も本気で部活するから」

俺は瞳のことで、光が見えてきたので、少しだけ調子にのったのかもしれない。

「じゃ、部長の携帯教えてよ」

「たける君・・・勘違いしないでね」

道子は怒ったような悲しいような複雑な顔で俺を見つめた。

「悪用しないで」

と携帯の番号メモを手渡してくれた。

 

第8話 秘密の扉

 

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