第13話 異変

翌日の夜、俺は洋子には 軽い気持ちで

体は何とも無い 安心して欲しい 』と一言だけ告げようと洋子に電話した。

 

 

「もしもし洋子さんですか? 早川です。」

 

「Yes・・・・洋子です」

 

「昨日の件ですが、一晩たっても体は何とも無いので、もう気にしないで下さい。」

 

「 Really・・・よかったです。

あーあの時は慌てまして..ほんとに ごめんなさい

あーAnd・・言い忘れた心配な事が一つ有ります。」

 

「何ですか?」

 

「My boyfriend哲のことです。

・・・実は彼は人間関係のスペシャルな部分で

つまり YOU KNOW

男女交際とかとてもシャイで、自分の気持ちを素直に伝えられないみたいなの


それ以外のことはとても優秀な高校生なんだけど...

普段は自分の家に閉じこもり一日中コンピューターのソフト開発をしている青年なの。

そのせいか・・とても変なことに拘り・・最近わかったんだけど、異常に嫉妬心が強いみたいなの。」

 

「彼が コンピューター関係にスペシャルだってことは 聞いてるょ」

 

「貴方に、また迷惑が掛からないように願っています。

どうか・・大切なデータ管理に注意してください。 」

 

「如何いうことて゜すか?

つまり ハッキングとかのこと?」

 

「ええっ 武さんも 彼がネット犯罪暦があること知っていました?

 

「噂程度のことは」

 

「もしもし・・・私の・・日本語の発音だいじょうぶかしら?」

 

「問題ないよ」

 

「よかった・・私は・・

Papaの仕事で、ロスに住んでいたのそれで・・1年前に私の教育の為に、帰国したの

Mamaの名は「美紀」と言って

日本人だけど、向こうの三世で Papaと学生の時アメリカで 知り合ったの

 

『えっ 美紀??

偶然かな・・よくある名前だから...』

 

「何 ぶつぶつ言ってるの?」

 

「いや・・・別に

話し

続けて」

 

ok・・

それでね

Mamaも日本語が少しだけなのだから交際も最初は大変だったみたいで・・

学校では日本からの留学生を積極的に受け入れる体勢が出来ていてPapaも新潟から集団で留学したらしいの

・・・

哲から聞いて判ったんだけど

飯田さんという武さんの今付き合っている瞳さんのお母さんと友達だったらしいの」

 

えっ 

やっぱり 瞳のお母さんが瞳の出生の秘密を打ち明けた人に違いないー。

なんか ヤバそうだ

話しを 逸らさなきゃ』

 

へー

哲君は 瞳の家庭のことにも 随分詳しいみたいだね

まさかそんな情報も ハッキングした?」

 

「そこまでは まだ哲のことわからないわ 

それに、mamaも私も日本住むなんて、思ってもいなかったの


そそっかしいけど優しくて尊敬しているのMamaのこと

私の友達のように、いつも話し掛けるの日本語の勉強も、Mamaと笑いながらなんだよ

私ね日本語上手に成る為に好きな歌ばかり歌ってたの

そんな私に・・

Mamaが家庭教師を 雇ってくれて

同年代の方が教わりやすいし すんなり学校生活に馴染めるじゃないかって

Mamaの思い出で、学生時代の友達の飯田さんが紹介してくてね・・

それが・・哲と知り合ったきっかけ

彼は今まで、友達のいない青年


でも・・付ききりで・・日本語を教えてくれた

そう、そうなの・・  
  
OH・・・How deep he love me!

only me・・・・

私は・・・何て・・ひどい女でしょう・・・今わかりました。」

 

電話口で彼女が大声で泣き出した。


「・・なぜ・・彼の過去を許せないのでしょう

なぜ・・信じてあげられないの・・・

すみません・・これ以上は言えません」

 

「よくわかりません」

 

「そうですね・・今の言葉、取消です。

あーできないですね・・

あー・・・・・・・・・わざわざ電話いただきまして

ありがとう ・・・ざいました。 」

 

可憐な笑顔の彼女が

大粒の涙を流してる様子を想像して、俺はそれ以上は追及できなかった 。

 

翌日の夜、不審なメールが一通届いた。

差出人は RoseWater

件名が「瞳を知る男より」となっている。

当然、気になり削除できなかった。

セキュリティーソフトは安全の表示をしめしていることを熟慮して開くと

 

    真っ赤な 薔薇 の花が咲き中からメール文字浮かび上がるという凝ったメールだ。


 

「君は 僕の庭に大切に育てた 一本の薔薇を 軽々しい気持ちで見つめ

その花びらを自分に向けた」

 

意味がよくわからない??

ただそれだけの、文面だけだったが、言葉の意味を考えてしまって

いつまでも消えない微かな苛立が・・徐々に息苦しくなるくらい胸の奥に引っかかっていた。

 

最近の瞳との交際範囲は、オレンジエードのバンドとしての活動に限られるようになり、

集まりも週二回がメンバーの予定でギリギリになっていった。

その日も 道子の教室の秘密の扉を開くと、いきなりけたたましいギターの歪んだ音が、俺に浴びせかかってくる。

決まように俺達より先に来て、ギターを弾いている。

その横が顔は 夢中でボール遊びをする幼子のように無心だ。

 

『瞳のギターの腕前のレベルアップが加速するほど、

俺と瞳のなにげない会話は減っていることに気づきはじめたが

意識するとなお更話しずらくなってくる・・・どうしたらいいのか?』。

 

たぶんそれは俺の方に原因があると感じている。

瞳の才能を 認めて伸ばしてあげたいという気持ちと

たまには音楽から離れて普通の高校生らしい街でのデートとか願望と


入り混じって

瞳が親父さんのことで問題を抱えていることなどすっかり忘れ

自分の気持ち中心に瞳を見つめ

取り残されていく不安を沸き立たせる。

 

『ほんとうに 俺のような男と付き合っていいのか?』

 

瞳に気づかれないように扉越しに佇んでいると...背中を押して 

真由美が生き咳き切って駆け込んできた。

オスー    武君 何  ぼーと立っているの !

中に 入ればいいじゃん??」

屈託なく微笑む真由美の顔見て、思わず ほっとする。

「なんだよ また 踊り見せに来たのか?」

「武君 ベースまた教えて」

 

『もしも 瞳よりも先に真由美に出会っていたら

俺は もしかしたら、真由美と付き合っていたかもしれない』

 

そんなとんでもない妄想が一瞬横切る...

 

「まいったなぁー

俺なんかのベースおそわるより 瞳からギター教えてもらえょ」

「・・・・

あっーそ じゃそうする」

と思ったよりも、あっさり承諾する。

二人の会話に気づいてた瞳が ギターを立て掛けるそこなって床にころがしながら

立て掛け直しもしないで、慌てて俺に近づく

「武 来たの どうして声掛けなかったの?」

 

視界を塞いだ前髪を掻き分けもしないで、俺と真由美に視線を交互に往復させて

心配そうな顔する瞳の顔に

さっきの妄想が吹き飛び、瞳のことでまた頭がいっぱいになる。

『孤独で純心な少女 一途なギターを置いたまま俺に 向かってきた』

 

「どうしたの 武 へんな顔して 目赤いよ?」

 

「ばかやろー 最近 寝てないから あくびで涙目になったんだ」

 

と瞳の肩に手を回し抱き寄せ、真由美を 後ずさりして壁の方を 向けさせてしまった。

俺は照れ隠しで、こんな強引な行動をすることは無かったはずなのに..

何かが俺の中で 変わり始めている。

瞳は 真由美の顔色を伺ってから・・・当然だろうけど、反射的に身を引いた。

「武 変よ」

「・・・悪りー                 ・・・・・・・・練習しょぜ」

心配する瞳の視線を無視するように 瞳の顔を見ずにベースを肩に掛けて

アンプコードをジャックに差し込んだ。

仕方なさそうに瞳が、ギターを持つと演奏の準備をした。

が・・

チューニングしようと弦を引いたが、音が全然でない。

アンプの電源をチェックしてもパワーランプは点灯している

「やべー 音でない」

念のために瞳のギターアンプにも繋いでみたが、やはり音はでない。

「マジかょー 昨日は全然 楽に音でたのに どうなってんだ?

そのうち道子や龍馬や勇輝が学校から直行で集まってきた。

俺が ベースの音が出なくなった事を告げると、

エレキ楽器に詳しい勇輝が、一日預かってピックアップマイクの回路チェクしてみてやると言ってくれた。

その日は 仕方ないけど練習に参加できないので、遊びに来た真由美といっしょに肩を並べてメンバーの演奏を見学していた。

俺が 居ない方がなんだか練習がスムーズに進んでいる。

いつの間にか視線をそらして、床をじっと見つめてしまった。

息の掛かるくらいの距離居た真由美が、

「ペースのこと 気にしすぎょ 武君」

と肩を叩く

「そんなんじゃないよ ・・・

 

ベース今度教えてやるよ」

「あっさっきの話しね・・・でも

ほんと、もういいの..」

リードを弾いていた瞳が ちらっとこちらを見た。

真由美は話すのを止めて、俺に背を向け龍馬のドラムに視線を移した。

瞳のリードがリズムが外れて、演奏が中断してしまった。

サイドギターを弾いていた勇輝が大声で叫ぶ

「瞳 何やってんだー

やる気がないなら俺帰るからなぁー」

と言って瞳を 叱り付ける。

俺が駆け寄るより早く道子が、瞳と勇輝の間に入って

「今日は 練習これで止めよう

武君のベースのこともあるし、・・・

トラブル続きで上手くいかない日も あるよ

また来週気持ち入れ替えてやろよ 勇輝君」

部長の一言で、その日は 練習中断

道子のおごりで最近出来た美味しい「ラーメン屋」で急遽ミーティングに予定変更になった。

俺は瞳と並んで座り、真由美はテーブルの反対側の隅に座った。

瞳は暫く黙り続けていたが、

薄味の醤油ラーメン食べリラックスできたのか?

それとも俺との会話を避けたのか?

「ねー道子 インストの曲やカバーもいいけど

オリジナル曲 みんなで作ろうよ」

積極的にミーティングの主導権をにぎって話しを前に進めた。

メンバー全員もオリジナル作りに賛成してミーティングは終わった。

俺は その夜瞳の気持ちを思ってなかなか寝付かれなかった。

11時を過ぎた時に ケイタイが鳴り出し

トラブル続きなので

『こんな深夜の電話なんて ころくなことがない』と思い

躊躇いがちにケイタイの受信を押した。

「武君 大変なの・・・」

一瞬 誰からか判らないほど涙声の道子からの電話だった。

「私の大事な音楽室が荒らされちゃったの」

「荒らされたって??」

「ドラムのヘッドが引き裂かれてたり、

ギターアンプが金属性の硬いもので叩かれて壊されたの

ピアノだけはかすり傷ひとつなかったけど・・・」

「なんだって・・・いったい誰がそんなひどいことを??」

「・・・・」

これ以上会話できほど、道子はショックを受けている様子だった

俺は 明日改めてオレンジエードのメンバー全員を集めて道子から話しを聞く事にした。

 


休憩

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(2011年8月12日 金曜日)

 ここまで読んでくれてありがとう・★

貴方に、ときめきの小さな灯りが、悪戯な風に惑わされて、消えないように願っています・・・続く

Hiko・★