Dr.遠藤のピジョンセミナー



 12.シーズン・オフはデスクワークの季節   科学者と勝負師
  
  鳩の生理学を踏まえた形で作出・競翔について述べてきましたが、振り返ると数多くの説明不足が
 
  目につきます。
 
  鳩特有の現象・表現も多く、多数の読者に理解しやすく、稿を進め得たかを考える時、不安な感さえ
 
  致します。
 
  いずれにせよ、正直に、後進の研究課題となり得るよう念じて稿を重ねたつもりであるので舌足らずの
 
  分については御容赦の程お願いしたいと思います。
 
 
  鳩レースで勝利する為には、周到な分析のもとに種鳩を採用し、整理された管理・訓練を経て、
 
  レースに臨めばよいのである。
 
  その一つ一つが実に多くの枝葉を有し、複雑で難解な事が多いのには閉口してしまいます。
 
  まとめてみれば、とにかく頑健で良い鳩を作出することが第一の条件、次にコンディションの調整に
 
  かかる部分が多いと思います。
 
 
  このコンディションの調整はコンディションを一度下降せしめ、然る後に上昇せしむるという鳩の
 
  バイオリズムと連動させるような調整が必須になってくると思います。
 
  この調整には舎外運動での体調の上昇、下降、飼料の内容と量での調整、あるいは放鳩訓練による調整、
 
  さらには駆虫剤を含む薬品類による調整など種々の方法が挙げられ、それぞれによる基本的な考え方を
 
  述べてきました。また、これらの一つのみを用いる場合、さらに複数をコンビで用いる場合等々、
 
  レーステクニックには多くの方法が考えられます。
 
  しかし、どの方法が自分に適しているのか?どの方法が体調を一番把握しやすいかについては、レース
 
  マン個々に個体差があり、それぞれ会得せざる得ないという障壁があります。
 
  実際にレースシーズンでない時期に、試験をしてデータ−を取っておいてレースに用いる事が大切です。
 
  聞きかじりや、猿真似では決して好成績は残し得ません。
 
  試す、然る後に用いるという周到さが必要でしょう。 要は科学者としての慎重でかつ正確な眼と、
 
  勝負師としての思いっきりの良さ、勇気と、人間としての鳩に対する愛情の三位が一体となった時、
 
  あなたの鳩は十分に力を発揮する事でしょう。 これは鳩と人との健康が最前提であり日常の生活が
 
  健康的に営まれている事が大切であろうかとも思われます。
 
  健康を損ねる原因の大きなものであるストレスが一番大きく作用すると言われる人と人との争いなどは、
 
  ましてや平和を愛する鳩界人の鳩を媒体としての係争などは全く言語道断であって、無心に鳩を愛して
 
  純粋に楽しんでいる愛鳩家に鳩界に対する嫌気を起こさせ、鳩界を徒らに衰退に導いているような暴挙
 
  でもあります。
 
  鳩界人は純粋に鳩を楽しみ、健康的に生活を営めるように努力して欲しいと念ずるものであります。

                                              
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