Dr.遠藤のピジョンセミナー



 11.秋レースの戦い方とそのメンテナンス   若鳩レースの調整法
  
  鳩舎の将来を担う。"明日のエース達"の初陣、秋レース戦法を教示する。
 
  発達途上の若鳩だけに、成鳩とは異なったメインテナンスが必要だ。
 
  健康管理、レース間の休養とトレーニングの方法、性能検定……
 
  自鳩舎の飛び筋発見のための若鳩レースを総括!
 
  
若鳩レースの調整法

  舎外訓練、法鳩訓練と慎重に努力して体力、精神力を鍛錬してきた若鳩選手鳩群は、いよいよその力を
 
  発揮すべく桧舞台へと登場することとなるが、秋季レースは春季レースに比し、中距離レースがメイン
 
  レースとなる。 また、中距離レースがメインレースだからといって、来春のレースがあることも頭に
 
  入れておかなければならない。 まずレース前に絶対に必要なことは駆虫である。回虫、毛様虫
 
  ともに・・・ことに回虫が若鳩にとって最も悪影響を及ぼすものであるからまず実行して欲しい。
 
  レース開始の一週間前をタイムリミットとして実施することである。
 
 
  百キロから三百キロ程度までは、鳩を絞り込んで軽く仕上げないことである。若鳩の場合、絞り込んで
 
  しまうと、それが短距離の場合、異常な精神状態になって失踪することが多い。 距離感覚、集団性
 
  などから、飛び越し、あるいは逆方向に向かう別の集団へ迷い込み等、考えられない事項から大量の
 
  失踪をする場合がある。やや重目で好スピードには乗れない状態であれば、短距離は必ず帰還する。
 
 
  百キロから三百キロまで飛翔するうちに適度に絞られて、宮杯、レジョナルの頃には理想的な体に
 
  なるものである。これをあらかじめ絞り込んであるとキールが下がり腹間がなくなり、もはや飛翔困難
 
  となってメインレースに行くことになる。従って、早く仕上げたい気持ちはわかるが、じっくりと
 
  メインレースでベスト体調になるように計画的に進めるのである。
 
 
  三百キロレースが終了して、次のメインレースまで二週間の間隔があったと仮定しよう(ほとんどの
 
  団体がそうであるから)。まずそれまでのレースがハードであったかイージー(容易)であったかを
 
  考えて、もしハードなもので、若鳩の体がビッシリと絞られているような状態であれば、相当の疲労が
 
  残っているものと判断し、レジョナルまでの二週間は休養を主体とした調整をする。 
 
  また、イージーレースの連続で鳩体に変化の状態が見えないものについては逆にビッシリと舎外、

  放鳩訓練等で体を絞らなければならない。
   
  普通の状態にあったものについては、特別変わった飼育管理をしなくても、ベストに自然に仕上がる
 
  ものである。
 
 
  よく経験的にレースに臨む調整法を述べる方も多いが、鳩レースだけはケースバイケースで、去年この
 
  方法で成功したからといって今年もその方法で成功する保証などどこにもない。偶然に成功するのは
 
  まぐれだが、計算して手段を講じて成功した時ほど嬉しいものはないのであって、これが鳩レースの
 
  難しい事象である。 従って「現在の自鳩舎のレース鳩の体調が、レースをするのに如何なる状態に
 
  あるのか」を見極めることが何より先決である。重ければ絞ればいいし、軽すぎれば休養をとればいい。
 
  丁度良ければ維持すればいいわけで、その状態がどんな状態かがわかならければ、どうしたらいいか
 
  わからないのは自明の理である。
 
 
  コンデション調整法等を述べると、良く「どの鳩舎にもあてはまるものではない」とのお叱りを頂戴する
 
  こともあるが、そのように述べる人ほど、自鳩舎の鳩群の状態を把握していないものであって、毎
 
  シーズン失敗を繰り返す人達でもある。 強豪といわれる人は、いかなる些細なことでも、常に良い
 
  方法はないものかと前向きに、しかも驚くほど率直に究めているものである。為すは難しく批判は
 
  容易だけれども、批判が目的の批判はなにも生み出さないものである。 研究、そして研究が成功の
 
  唯一の道である。
 
 
  秋のメインレースまでの二週間は自鳩舎の鳩群の体調を分析し、その結果、重め残りで鈍重な感じで、
 
  素軽さが感じられない場合は、強制舎外を実施して、ニ週間の間に三回程度五十キロ以上の訓練を実施
 
  すると良好に仕上がるものである。 また若鳩は発達途上にあるわけだから、連闘はいいものである。
 
  休養、休養より、連戦した方が好結果が期待される場合が多い。
 
 
  また軽すぎる鳩はニ週間の中の一週間を休養とし、鳩なりの舎外を実施して、約一週間前より、濃厚
 
  飼料(脂肪)を与えて調子の上昇を画する。 再々にわたって炭水化物の必要性を説いているが、若鳩の
 
  軽すぎる鳩の増量には脂肪を与えて水を飲ませて増量する以外に方途がないのである。 要は持ち寄り
 
  時に、十分な食欲を見せる上昇期の体調に持ち込めればレースは半ば成功と判断して良いだろう。
 
  しかし、成鳩では若鳩と違って脂肪を与えることは良くない方法で、あくまでも炭水化物をベースに
 
  することである。脂肪分を若鳩に多く与えると精神状態が興奮状態に陥ることが多いが、これも失踪と
 
  密接に関係するので注意してほしい。
 
 
  秋の中距離飛翔はそのほとんどが若鳩である故に、成鳩のそれとは異なり方向判定その他に無理もある
 
  ので、疲労の蓄積もことのほか多いような気がする。さらに疲労状態でエネルギー消費の多い冬を
 
  迎えるためか、疲労の回復も遅いようである。 従って、秋に活躍した鳩が、意外に春の活躍鳩と合致
 
  しないものである。やはり未完成な鳩体に大きな負担をかけて将来性を損ねるより、秋季は訓練程度に
 
  考えて、ニ百キロ、三百キロ程度を飛翔させ、ストックして順調な鳩体完成をはかり、その後、春季
 
  レースに活躍を期すのが常道に思うのだが・・・・。
 
 
  極端な鳩舎は秋レースには参加せず換羽が終えた後に、自鳩舎でニ百キロからニ五○キロ程度の訓練を
 
  実施して春レースに備えている強豪も多い。
 
  これなどは鳩を順調に生育せしむための妙手であると筆者も考える。

                                            
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