Dr.遠藤のピジョンセミナー



 10.秋レースに向けての放鳩トレーニング   換羽と放鳩訓練

  
秋レースに向けての放鳩トレーニング
 
  若鳩の初レース、秋季の戦いに向けてのトレーニングの関門は、"換羽"である。
 
  この問題について考えながら、放鳩訓練のメゾットを考察!
 
  集団放鳩、単羽放鳩それぞれの違い、訓練時のメインテナンスについて述べる。

  
 
  換羽は鳩体にかかるストレスのうち、かなり大きなストレスである。
 
  ストレスは自然現象、あるいは人為的現象、生理的現象などさまざまなファクターを有する訳だが、
 
  換羽は鳩体の副翼を除き、ほとんどの羽毛が交換する。
 
  しかも短期間にこれを終わらせるわけであるから、極めて大きなストレスとなる訳である。
 
 
  このストレスが負荷として鳩体そして精神的な部分へとかかる訳であるし、さらに若鳩にとっては
 
  初の経験であり、換羽期間中も若鳩のトレーニングを併行して実行せねばならない事もあって乗り
 
  越えること自体が大きな関門でもある。
 
 
  すなわち換羽によって栄養バランスが崩れ、その補給がままならなかった場合は体調を崩し、成長を
 
  阻害し、レース鳩としての将来性を完全に失ってしまうし、この換羽時期に放鳩訓練等を実施すると
 
  失踪しやすい時期でもあるし、誠に厄介なものである。
 
 
  換羽時期の栄養はとりわけ濃密なものである必要は全くないが、必要不可欠なものは鉱物飼料である。
 
  それも鉱物飼料を与える容器に入っているからまだ大丈夫というのではなく、余っていても毎日毎日、
 
  新鮮なものを追加していくのである。
 
  市販の鉱物飼料には、鳩が実際に欲する必要とするものが少ないものもあり、その様なものを与えて
 
  いる場合はなお一層、大量の補給が望まれる。
 
 
  マグネシウム、カルシウム等のいわゆる骨材補給微量元素が換羽の良、不良に大きな関わりを持つ
 
  ものである。 むろん各種アミノ酸も必要な事は言を持たず常識の範囲であろう。
 
 
  換羽(主翼)が六枚目に到達した時、全若鳩はチェックされなければならない。
 
  すなわち、六枚目終了後になると将来の骨格がほとんど確定する。

 
  著しくバランスの悪い鳩、極端に重かったり、あるいはやせすぎていたりする鳩も除外すべきである。
 
  その際に換羽を終えた主翼を細部にわたって観察する必要がある。羽軸の強靭さ羽毛の伸びと開きの
 
  良さなど、注意深く観察すると一羽一羽が微妙な差異を有するものである。
 
 
  いずれも十分に栄養を汲み、強さを感じるものを良しとする。
 
  この六枚目終了以前に放鳩訓練をやや長い距離から実施すると失踪の憂き目を味わう原因となる。
 
  六枚目以前の放鳩訓練は、十キロ程度の近距離基礎訓練に終始すべきであろう。
 
  また顔面領域に換羽がおよんでいる場合はことの他、失踪の確率が高いので注意が肝要である。

  
  また顔面が換羽のときに放鳩カゴまたはコンテナに入れるとつつかれて血を流す事にもなり、鳩は
 
  顔面の換羽の時は必要以上にデリケートになっているので失踪する事になるのでは・・・・と考えて
 
  いる。
 
 
  羽毛はシルキータッチが最も良いのであって、これは乾燥状態に鳩体があって脂粉がしっかりと
 
  乗らないといわゆるシルキータッチにはならない。
 
  ボサボサした感じや、濡れて汗をかいた感じの鳩はどこかに体の変調があって、換羽が極端に遅れたり、
 
  あるいは伸びてきた羽毛の質も悪いものである。
 
 
  全体的な健康度の問題を述べれば、羽毛の質の悪いものは当然、筋肉・骨格いずれも良いものが
 
  あるはずがなく、羽毛質の弱い鳩すなわち虚弱鳩と極言して差し支えなかろう。
 
 
  欧州では主翼の裏羽根について、大きな判断基準を有しているようだが、
 
  やはり健康な鳩は裏羽根をも質量とともにクリアーしているものであろう。
 
  裏羽根は翼の抑えに極めて重要な意味を有する羽毛でもある。

                                            
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