Dr.遠藤のピジョンセミナー



  8.梅雨期の管理と若鳩の基礎トレーニング   若鳩の基礎トレーニング考
   
  梅雨期の若鳩のトレーニングはあくまでも基礎体力の醸成に意を注ぐべきであって、ハードな
 
  トレーニングは全く必要としない。
 
  飛翔トレーニングを開始する前段階として、鳩舎の周囲を何分か旋回する程度の体力をつけさせ、
 
  周囲環境を良く認識させる事が大切である。
 
  ともすると何日か連続して舎外運動を続ける事によって、突然、遠征したり、舎外飛翔時間が長く
 
  なったりするが、若鳩は集団について飛んで、帰舎する事ができなかったりする場合が発生するので、
 
  ちょっと長く飛んだら一日は舎外を見合わせ、約一ヶ月間は過度の飛翔をせしむる事のない様に配慮
 
  したいものである。
 
  早期に飛ばしこんだ鳩は完成するのも早い様に思うが、じっくりとステップを踏んで仕上げた鳩に
 
  比較して、成長過程での無理がたたって、長じて大成する鳩の少ない事が多いように思える。
 
  成長はゆっくりと、しかも着実に進める事が大切である。
 
 
  前にも述べたが、この時期の若鳩は全てが初体験で、様々なストレスを受ける訳であるから、何度も、
 
  何度も鳩舎に入って、鳩を掴んでで見るとか、籠訓練などといって掴んで籠に入れるなどのストレスを
 
  与えない様にしたいものである。
 
  籠馴れは巣立ちの際に何日か籠の中に入れて給餌しておけば十分である。『三つ子の魂百まで』である。
 
  とにかく鳩舎内環境を静かに保ち鳩舎内が給餌される場所であって鳩舎内が最も安住の地である事を
 
  認識させておかないと後で鳩が失踪したり、弊害が数多く起きる原因となる。雛鳩のうちは静かに
 
  育てる事が肝要である。
 
 
  梅雨が開けたら本格的な若鳩のトレーニングシーズンが訪れる。 若鳩はどんどん運動して筋肉を
 
  増加し、細胞を発達させる。 この時期になれば、タンパク質主体の餌にして、どんどん運動させる。
 
  運動すればするほど筋肉が発達する。その為の栄養源としてのタンパクは効果的なものである。
 
  飛ばしこんで疲労してくると、飛翔時間が短縮してきて鳩舎内での態度を見ても疲労しているのが
 
  わかるようになる。 そうなったら大麦などの血液浄化作用を有する炭水化物主体の軽い餌を与えて
 
  内臓の負担を軽減してやる。
 
  二、三日も軽いエサを与えると再び活発な動きを回復し、また飛翔時間とスピードが増加する。
 
  このパターンを繰り返していくのである。 少々の雨や風には臆する事なく飛ばしこむ事である。
 
  "疲れたから休養"は、筋肉を強化している期間中は禁物である。
 
  疲労や、ストレス、あるいは細菌感染、外傷など、体調が下降した鳩は、どんどん鳩群からはずし、
 
  強い鳩だけで鍛えこむ事である。
 
  どんなに数多く作出しても、本当にレースで活躍できる強い鳩はほんの一握りなのである。
 
  例えば千羽スタートの団体があったとする。途中のレースで消えに消えて最終レースで一割の帰還を
 
  見る連合会、支部はほとんど皆無か、もしあっても楽なレース展開のシーズンの場合のみである。
 
  厳しく鳩レースを見つめると、ピジョンスポーツは消費のスポーツ、サバイバル・スポーツの感さえ
 
  抱く程である。
 
  そんなことを考えると、少々ハードなトレーニングで弱さを露呈する鳩では到底、好成績は望む
 
  べくもない。淘汰のスポーツと呼ばれるゆえんである。

                                            
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