Dr.遠藤のピジョンセミナー



  8.梅雨期の管理と若鳩の基礎トレーニング   梅雨期の管理
   
  日本の南海上に停滞前線ができると、梅雨模様となり、東北地方ではヤマセと呼ばれる北東風が吹き、
 
  低温となる。
 
  この時期は湿度の高い日が連日続き、さらに曇天、雨空のために日照時間が著しく減少する。
 
  太陽光線は地球上の動植物に限りない恵みを与える。
 
  まさに、「太陽」であるが、この太陽を暗雲がさえぎると動植物に危機が到来する。
 
  すなわち日光浴ができない為に、ビタミンの吸収が阻害され、体の乾燥も多湿のために思うに任せず、
 
  細菌の繁殖は旺盛になり、体調が低下する為に感染発生の確率が上昇する。
 
  特に、抵抗力の弱いヒナ鳩は病気に罹患しやすくなるのである。
 
  この時期は若鳩が親鳩から巣立ちして自分で栄養をとり成長する大切な時期なので、この時期に順調に
 
  成長させないとレース鳩の性能を著しく低下せしむる事となる。
 
  従って、この時期の管理の成否が、鳩舎のレースでの成績を左右する大きなファクターである。
 
 
  しからば、いかにして貴重な若鳩達を感染から守り、鍛えて優秀な選手鳩に仕立てていくかであるが、
 
  それぞれのレースマンがそれぞれの方法を用いているであろうと思われる。が、まず、感染の予防の
 
  為に、最初に回虫を駆除して欲しい。
 
  その後、飲水にヨードチンキ類を滴下して与えるか、黒酢を飲水投与して与える等の方法を用いて、
 
  経口感染から守ってやることである。
 
  感染予防の為に、抗生物質を投与する人もあるが、抗生物質は治療薬であって、予防薬でない事、
 
  使用方法を誤ると肝臓等の臓器に蓄積残留して体調の上昇しない鳩になってしまう事そのうえ耐性株が
 
  できて、さらに強力な細菌を繁殖せしむる事などの理由にとって好ましいものではない。
 
  従って予防は健康の増進をはかって、それに対処する方法がベターである。
 
 
  次に鳩舎内の清掃である。
 
  乾燥時期には少々清掃を休むような事があっても、梅雨シーズンは駄目である。
 
  毎日掃除を励行して、週に一度は薬液を使用して床面や止まり木等を消毒する事である。
 
  この時期だけはクレゾール石けん液、あるいは逆性石けん液を水浴の水に滴下して、天気の良い日を
 
  選んで水浴させる事も実行したいものである。
 
  羽虫除去の為を考えてネグホン等を使用するレースマンもいるが、濃度を誤ると危険なので、あまり
 
  進められない。
 
 
  次に雨天の日は雨が鳩舎内に絶対に吹き込まない様にする事。
 
  雨が吹きこむと鳩舎内の湿度が否応なしに上がり中がむれる状態になって鳩にとって最悪な状態環境
 
  になる。
 
  従って通風は雨が吹きこまない所から風を採り入れ、雨の吹き込む所は窓を閉じておく事が肝要である。
 
  また太陽がのぞく好天の日は、窓を十分に開放して、鳩社内に太陽光線をいれて殺菌し、乾燥させ、
 
  雨の日は閉じて雨を入れない。この繰り返しをまめに実施する事である。

  好天時の窓の閉じっ放し、雨天時の雨の入れっ放しと同じ程度の害を鳩に与える事も十分に感知して
 
  おきたい事である。
 
  好天時の窓の閉じっ放しは、内部が温室となって鳩のムレにつながるので絶対にやめるべきである。
 
 
  この時期に作出している種鳩は巣皿および巣皿周辺が濡れるため、数多くの清掃と、巣皿の交換を
 
  実施する事である。巣皿は石膏製のものはどうしても吸湿しやすいので素焼きのものか紙製のものを
 
  使用すると良い。
 
  筆者は紙製の巣皿をディスポーザブルと考えて使い捨てている。
 
  貴重なレース鳩を巣皿の交換を渋ったために、駄目にしたくないからである。
 
  巣皿を掃除した後は、石灰を散布して湿った部分を消毒すると良い。
 
  しかし、注意しなければならない事は、間違っても湿った部分以外には散布しないい事である。
 
  散布した後に掃除機等を用いて、空中に飛散する恐れのあるものを除外しておく事である。
 
  もし大量に空中を舞って、鳩が呼吸によって吸引してしまったとすれば鳩の気管を著しく害する事に
 
  なるので注意が肝要である。
 
  しばしば鳩舎の通風が、鳩舎条件の第一に挙げられる場合が多いが、これは糞が乾燥したり脂粉が
 
  鳩の羽ばたきによって空中に舞い上がりそれを呼吸によって肺に吸ってしまうとの理由であろう。
 
  これが長期間に亘ると、鳩の運動に重要な意味をもつ心肺機能が低下するので好成績に結びつかない。
 
  要は鳩舎内のほこりが外に出るから通風は良好な方が良いのである。
 
  どこの鳩舎も窓は開放されているので、間違っても鳩の呼吸にとって酸素が欠乏するなどという事は
 
  ないのである。
 
  新鮮な空気は、それ自体酸素を十分に含むので、むろん健康のために良いことは当然だが、それよりも
 
  むしろ汚れたホコリの多い空気を除外する事の方がより先決であろうと考える。
 
  また、通風はあくまでも空気を汚れたまま停滞させる事のない様にする為のものであって、鳩体に
 
  風が当たる事を良しとするものではない。
 
  鳩体に風を直接当てると、体温の低下となって体調の下降原因ともなる。
 
  鳩は暑さにも、寒さにも強い動物とはいえない。体温の急上昇につながる原因および急低下につながる
 
  ファクターは厳に除外しなければならない事柄である。 
 
  
  梅雨期の管理で注意しなければならないもう一つの重要な事は飼料管理の問題である。
 
  鳩舎環境と同様に飼料も高湿の影響を受け、カビが生えやすくなる。
 
  このカビは種々の病気とりわけ消化管の疾患の原因となって、下痢症状等の原因不明の病気となる
 
  ケースをひきおこす場合が多いので細心の注意を払わなければならない。
 
  特に大麦、小麦等の繊維質の多い餌にはカビが発生しやすい部分が多いので、天気の良い日に日光に
 
  当てて十分に殺菌乾燥をする必要がある。
 
  またこの時期に自分で飼料を配合比率している人は、大麦、小麦を除外して、マイロ、キビ等を
 
  これらの代用に当てるのも良い方法である。ピカピカに磨いたエサでも、高圧の空気でゴミを飛ばした
 
  エサでも、この時期の大量の買い込みは注意したいものである。
 
  エサは小単位で買って新鮮なものを与えたいものである。
 
  保管の際にもできる限り乾燥する場所を選んでほしいものである。
 
  鳩舎の管理と飼料の管理を第一の課題として考えることである。
 
                                           
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