Dr.遠藤のピジョンセミナー



  7.シーズン・オフのメンテナンスとその方法  種鳩の作出終了後のメンテナンス 作出時疲労の除去
   
  種鳩は作出によって疲労する事は少ない。
 
  しかし、高齢鳩、あるいはメス鳩の度重なる産卵によって、若干の疲労は否めない事実でもある。
 
  しかし、春季の作出は、鳥類、とりわけレース鳩にとっては極めて自然な営みであるので、自然環境の
 
  影響をほとんど受けない種鳩には、そう大きな負荷がかかるものではない。
 
 
  逆に高蛋白、高脂肪の飼料を常時摂取して、体中に排泄不能な老廃物が蓄積したり、体調が悪く
 
  なっている場合が多いので、選手鳩同様に含水炭素主体の燃焼効率の良いエサを与えて、血液の浄化を
 
  はかると同時に黒酢を飲水投与して、蓄積脂肪等の分解、排泄を試みなければならない。
 
 
  新陳代謝を活発にする為の水浴をこまめにし、日光浴も十分にし、鉱物飼料も多目に、早目、早目に
 
  追加して与える事である。
 
  鉱物飼料であるが市販の鉱物飼料はほとんどが、カキ類をベースにしたものに塩分、その他小石を
 
  加えたものである。が、鳩が本当に必要とする物の含有は少なく、与えたから十分と考えてはいけない。
 
  その中から鳩は必要なものだけを拾って食べるのであるから多目に与える事が肝要である。消化の為の
 
  筋胃中に含まれる石は角の尖った石英で、これが不足すると鳩は絶対に不健康となる。鉱物飼料の中に
 
  含まれていない場合は追加しておく事である。
 
  木炭のかけら、アスファルト舗装の砕いたクレオソートなど、鳩は喜んで食べて、胃腸の調子を
 
  整えている様である。特にアスファルトのかけらはクレオソート成分で、人でいえば"正露丸"と
 
  同一成分と考えられる事から、鳩が欲するのも至極当然ともいえ鳩の整腸特効薬として生活の知恵でも
 
  ある。
 
  また、葉緑素をも十分に摂取させなければならない。
 
  生命の根源は水で、光、葉緑素等は必須の条件である。各種ビタミン類の摂取も、自然界のものより
 
  摂り入れるのがより効果的である。
 
 
  換羽は当然、蛋白分を必要とするが、鉱物飼料等をしっかりと与えてあれば、羽毛も光沢のある
 
  シルクタッチのものに換羽される。
 
 
  豆類等の高蛋白飼料を与えなければ換羽が不完全だと考えるのは誤ちである事を理解してほしい。
 
  毎日毎日の管理の中で、静かに落ち着かせて、しかもしっかりと観察、把握する事が肝心である。
 
 
  ヒナ鳩を作出して見て、どうも子出しが悪かった時などは早期に除外しておく勇気が必要である。
 
  次のシーズンはいいだろう。いつかはいい子も出すだろう、などと甘い考えを持つ事は禁物である。
 
  強豪鳩舎への道を阻むものは、自らの甘さにある事をしっかりと心にとどめるべきである。
 
  満足程度の高い、性能評価の高い鳩ですら好鳩を作出する頻度が低いというのに、いわんや欠陥鳩を
 
  やである。
 
  好鳩というものは子鳩の時期から、雲の切れ間から見える太陽の様に、どこかに光るものが見える
 
  ものである。
 
 
  結論的にいうならば、疲労回復を計る尺度は、選手鳩、種鳩を問わず少し食い込ませると、すぐに
 
  ぜい肉が乗ってくるようになれば完全に近く、内臓を含めた疲労は回復されたと判断して間違いない
 
  ものだ。
 
 
  疲労の回復の機序を理解して、間違いのない様に管理してこそ、来たるべきシーズンの活躍も期待
 
  できるというものである。
 
                                           
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