Dr.遠藤のピジョンセミナー


  1. 総論、鳩体の構造   骨格・筋肉
         
  レース鳩は、本来の鳩の源鳩から、飛ぶ為に特に長時間、長距離を飛び続ける為に進化、改良されて

  きている訳であるが、分速千メートル前後のスピードで飛翔した場合、鳩体の受ける風圧は、かなりの

  強さであろうことが想像できる。

  すなわち、実験的に自動車を時速60Kで走らせ、窓を明けて手を出してみるがよい。
 
  かなりの風圧を手は受けるであろう。この速さ<60K>が分速千メートルのレースなのである。
  
  逆風が吹き荒れた時にはさらに強い風圧を受けるであろうし、追い風の際には鳩体の推進力こそ
 
  減少しても、やはり風圧というより、むしろ空気圧を受けねばならない。
 
  前置きが長くなったが竜骨<キール>で代表されるが鳩の骨格は驚くほど合理的でかつハードに組まれて
 
  いる物である。 
 
 
  頭骨はその内部に脳を有するだけでなく流線型をなし、空気抵抗が可能な限り少なくて済む様な形態
 
  (新幹線の最前部車両の様に空気抵抗の少ない形)を有し、かつ頭蓋骨の内部には多くの洞があって
 
  重量を軽くしてある。
  
  前述の竜骨は、シギ類と同様に良く発達しており、羽ばたき飛翔の為の胸筋の発達によるものである。
 
 
  翼骨格は前肢の特化したもので鳥類、特に鳩では烏啄骨の発達が顕著で烏啄骨の先には鎖骨と肩甲骨が
 
  関節して、ここに三骨孔を形成する。
  
  この三骨孔の中を、小胸筋(翼を上に持ち上げる筋肉)が関節し、飛翔に重大な影響を及ぼす。
 

    
  レース鳩の筋肉は、飛翔に耐えられるべく量、質ともに十分に発達している。
 
  特に胸部の竜骨に付着する大胸筋と小胸筋が代表である。
 
 
  大胸筋は翼を下方に下げる、いわゆる収縮量の大なる筋肉で赤みを帯びている。
 
  小胸筋は大胸筋の深部に付着し白色を呈している。この筋は特に翼を上方に上げる時に作用し連続的に
 
  収縮を繰り返しても、疲労が少ない様に、エネルギー効率の良い白い筋で出来ている。
 
  ササミがこれである。 蛇足ながらレースで鳩が帰舎した後に翼をダラリと下げる鳩があるが、これは
 
  小胸筋疲労によるものである。小胸筋を鍛えておかないと連続飛翔に耐えられない鳩となるのである。
 
  
  大胸筋、小胸筋と並んで背筋も重要な筋の一つである。
 
  最近チャンピオンバードの背筋が一様に発達しているのを数多く見るが、背筋の発達は後天的要素が
 
  多く、筋肉の発達する因子を有した鳩を鍛えて獲得する形質に思える。
   
 
  腹筋はタテ、ヨコ、ナナメに裏打ちされた筋肉で、鍛錬する事によって強度を増す。
 
  竜骨の後端から恥骨までの空隙をおさえる訳であるから強度がないと竜骨の風圧による後退を抑える
 
  事が出来ない。
 
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