Dr.遠藤のピジョンセミナー



  4.実践作出論   孵化時のチェック・脚環挿入時のチェック
  
  孵化した頃のチェックも意義を有するものである。
 
  即ち臍帯(ヘソの緒)の切れの悪いものは無条件で淘汰である。
 
  この種の鳩は卵黄の未吸収な鳩に多く、長じて普通の鳩と外見上、なんらの変化も見られない様に
 
  なっても、確実に体質の弱さを潜在的に有する事になる。

 
  次に産毛(うぶ毛)も良鳩判定の基礎になる。 産毛は大別すると、うすい黄色、黄色、黄金色
 
  (オレンジ)とあるが問題なのは色のうすい白身がかった産毛を有するものである。
 
  黄色のツヤのある産毛のヒナと黄色味がかった白い産毛の鳩とを並べて比較すると、白い方が動き、
 
  皮膚の張り、骨格等、明確に虚弱である事がわかる。 筆者でのデータ−では、この種の産毛の鳩で、
 
  後に選手鳩として、あるいは種鳩として、活躍鳩となった例は皆無である。 何れにせよ生物界では、
 
  弱いものが活躍する例は少ない。
 
 
  このチェックの時に、脚の色を良く観察すると、色の黒いものとそうでないものがある。この黒い
 
  脚を持ったものも、レースその他で検定してみると、あまり好結果が残らない様である。
 
  しかし、この脚の色は、産毛による選択より優先するものではない。
 
  何故なら、この黒い脚の鳩で、後に活躍した例が、筆者の十七年間のデータ−中で二回あるからである。
 
  従って皆無とはいえないデータ−ではある。
 
  
  

  五〜六日で脚環を入れる適期となる。 この時に、皮膚の張り、棒毛の太さ等を観察してほしい。
 
  皮膚にシワの多いものコロコロと太った状態にない鳩など良く見ると、この時期でさえ弱い鳩を選別
 
  できる。
 
  前額部の張りもこの頃になると良く分かる。メス・オスの別なく、前額部の張りのないものは、運動・
 
  知能ともに能力に乏しく、種鳩にも、選手鳩にも不向きである。
 
  かつてオランダのヤン・アールデン系の系源鳩舎のスカウトレンが脚環装着時程度のヒナを淘汰する
 
  様子をビデオで見て記憶している。
 
  多分、彼の場合もヒナのバイタリィティーと前額部の張りに注意して淘汰している様に思えた。
 
  特に近親交配鳩には頭部の狭小なものが出やすく、また雑種交配をした場合にも出やすい事を筆者は
 
  経験で実証している。
 
 
  次に、背中の棒毛を見て欲しい。
 
  背中に三〜五本ずつ斜めに並んでいる棒毛があるはずである。
 
  三本ずつ並ぶのは、皮膚が弱く、五本以上並ぶものは、羽質が悪くなる。
 
  羽質、丈夫さともに四本ずつ並ぶのがベストであろう。
 
  ただし三本毛は白系の鳩、五本毛は黒系鳩に多く、それらを種鳩として使用する場合は有益であろう。
 
  また脚の大きさも重要な判断の一つである。 一般的に脚の大きなものに頭脳の優秀なものはなく、
 
  スタンスも不良なものとなる場合が多い。"馬鹿の大足"とはよく言ったものである。

        
                      
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