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4.実践作出論 交配日の決定 | |
さまざまな検討を加え次代の選手鳩を作出すべく配合を決定したならば、それを実際にどの時期に 実施したら良いかを考える必要がある。 自然条件下において日本列島は南北に長く緯度差もかなりあるので、九州と北海道では春の訪れが 二〜三ヶ月も違う。 従って、それぞれの地で春の訪れが感じられる目安を決める事である。 鳩界の大先輩並河靖先生は『雀がさえずり、巣作りを始める頃』を適期とされる。 筆者も自然条件下に飼育されて鳩であれば、それを適期と考えるが残念ながらレース鳩は鳩舎の中で 暮らし考えられないほどの濃厚な飼料(自然条件下では)を与えられ運動量も少ない事から、巣作り、 発情は、雀のそれよりもずっと早い時期に始まる様である。 考えるに、自然に生活する雀は、実りの秋までに換羽を終え、穀物が穫れる秋に、米などを食い込み、 厳しい低温の冬場をしのぐ為に皮下に脂肪を蓄積する。 しかし、積雪その他の自然の悪条件化では採餌する事さえままならない状態の下、蓄積した皮下脂肪を 消費し終え、素軽くなった頃に繁殖適期を迎えるという自然のサイクルができている。 これに対し、レース鳩のエサはトウモロコシ、大麦、マイロといえども自然の中では濃厚な栄養食品で ある。 いわんや豆類、アサノミ、ナタネなどの高蛋白、高脂肪の飼料は人が与えなければ、一年中で ほんの一時期しか自然界では食することができないものであるはずである。 このような飼料を年中採餌している鳩は、考えてみれば一年中発情状態にあると断言できよう。 しかし作出は種鳩の発情状態のみでは決して論じる事はできず、ヒナ鳩が生育(順調に)する為の 外気の温度をも考えなければならない。 即ち、ヒナ鳩がフ化し、体温維持のためにカロリーを消費する訳であるから外気温が低ければ低いほど、 体温維持にカロリーが消費され、生育にブレーキがかかる事は自明の理であろう。 このような観点から、作出の適期は九州で二月、北海道では四月初旬が妥当であると考えられる。 換羽が秋のレース時にスムーズにいかないから交配作出を早くするとか、あるいは遅くするとかの 理論を展開する方もあるが、筆者はそれらは全く、飼育者の都合であって、本当に良い鳩を作る為の オーソドックスな方法ではないと確信する。 また実際に配合する日であるが、好天の日の午前中に実施する事である。 悪天の日には本来、鳥類は動きが鈍く、食も細く、発情も活発でない。 さらに、午前と午後とでは確実に午前、それも朝のころが活発なものである。 従ってこれらの自然の摂理に合致した方法を模索した方が成功への早道といえるであろう。 −17− |
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