Dr.遠藤のピジョンセミナー



  3.交配の方法   交配前の準備
  
  
交配前の準備

  実際に交配する前に、種鳩を健康な状態におかなければならない。 
 
  ひと口に「健康」というが、これがなかなか難しい。
 
  項を別にして、薬品やら補助的食品やらを詳述するが今項では、交配論にあわせて、交配前に必要な
 
  主な細菌の駆除方法を記す。
 
  しかし、鳩の健康は、不断にキチッと管理していれば、鳩自身に抵抗力がつき、容易に状態のおちる
 
  ものではないのだが、筆者が見る限り、真に健康状態で管理されている鳩舎は少ない。従って交配前に
 
  回虫、毛様虫、コクシジウム、サルモレラ、トリコモナス等の駆除を徹底して実施してほしい。
 
  その際に最も重要なことは、検便を実施して、どのような細菌に感染しているかをまず認識することで
 
  ある。 これだろう。あれだろうと乏しい知識で推測することが一番危険な方法である。
 
  薬品は本来使用せずに済めば、使わない方が良いのである。
 
 
  もしも、検便によって感染している細菌が判明したら、今度は薬品の使用方法を間違えないでほしい。
 
  あたりまえだと笑うだろうが、これがなかなかできないことのようである。
 
  勝手に指示量の倍以上を服用させたり、効いたようだからといって、指示期間途中で投薬を中止したり
 
  するケースは厳に避けなければならない。 薬は病気には有効だが、使い方を誤ると害にもなる。
 
  いわば「両刃の剣」である。 正しく使って、最大の効果を得るようにしたいものである。
 
 
  一般に薬品を用いる順序(表A参照)は回虫、毛様虫の駆除が最優先である。
 
  これに罹患していると以後にコクシジウム、その他を駆除しても腸管からの栄養吸収が悪いため、
 
  なかなか健康状態に回復しない。 先ずは回虫を除去し、その後にサルファ剤を用いてコクシジウム、
 
  然る後に抗生剤を用いてトリコモナス等の順で実施してほしい。サルファ剤と抗生剤を面倒だから等と
 
  一緒にしたりすると、重篤な症状に陥り、回復が難しい程のダメージを受ける事になる。 
 
  サルファ剤と抗生剤の同時投与は、人間の場合でも禁忌であって、鳩のような小動物はなおさらである。
 
 
  抗生物質は治療薬であって、予防薬ではない。 予防のために、濃度を薄めて投与したりすると、
 
  耐性菌が出来て、より広範囲の抗菌スペクトルを有した抗生剤を用いなければならなくなり厄介な
 
  ことになる。 絶対にして欲しくないことである。
 
 
  薬品を用いるには薬品を用いる基礎知識が絶対に必要である。 どうも昨今の鳩界は薬品流行で、
 
  目茶苦茶な使用方法から鳩の健康を損ねている鳩舎が多いと筆者は警鐘を鳴らしたい。
 
 
  細菌の感染とは別に、交配時に障害となることは、種鳩の太りすぎである。鳩は秋になると冬の期間に
 
  備えて内蔵、皮下に脂肪を蓄積する本能がある。従って、秋の喰い込む時期にエサを喰わせると過剰な
 
  脂肪が蓄積されて、交配しても卵道が圧迫されたり、無精卵が出たりで、順調な作出が妨げられる。
 
  従って、種鳩の太りすぎが目立つ鳩舎は、餌を絞るなどの対策をたてて、交配時にベストの状態に
 
  しておく必要がある。
 
 
  薬品の項に追加して付記するが、薬品の投与は交配をする一ヶ月前には完全に終えておいて欲しい。
 
  体内の臓器に抗生剤等の薬品が排泄されずに蓄積されていては、到底好鳩の作出は望むべくもない
 
  からである。
                
  
まとめ
  
  本稿では、交配に関わる考え方を述べ、さらに交配前の準備について、その主な部分を記した。
 
  交配論についても様様な考えがあり、百パーセントの論は現在ないが、鳩レースは確立のスポーツで
 
  あるとの認識から、筆者の考え得るベストの論を記した。 鳩レースに近道はなく、絶ゆまぬ努力こそ
 
  最大の成功の要因だと確信する。
 
  今春の作出の参考に少しでもお役に立てばと考え本項の稿を閉じる。  
         
                      
                       −15−