Dr.遠藤のピジョンセミナー



  3.交配の方法   眼による交配
  
  
眼による交配

  眼の種類による交配も、交配作出の際の補助的ポイントとして大きなウエートを占める。
 
 
  多くの先人が、この魅力的な鳩の目の構成から、遺伝的法則を引き出そうと試みたであろうことは
 
  想像に難しくない。 筆者も多くの論文を読んでみたが、確実な結論は下されていない。
 
  従って、浅学非才の筆者が、片手間の研究によって、この難解な問題を解こうなどという大それた
 
  考えは微塵もない。だからと言って避けて通ることもできない問題であるので経験的な部分で論述する。
 
 
  経験的には、柿目系統の鳩に石目(銀眼)系統の交配がベターであるといわれている。
 
  筆者もこの説は否定しない。 理由は柿目と石目をそれぞれ純系と仮定すれば、この交配は、前段の
 
  雑種強勢の理論と妙に合致するからである。
 
  柿目×石目の交配によって、両者の有する性能的特徴が、優勢遺伝すると解釈すれば良いだろう。
 
 
  また、柿目×柿目の交配は、緑色系の色素が、簡単に発現・増加し、能力の劣悪化をたどりやすい。
 
  しかし、石目×石目の交配は、色素が淡くなる率も比較的低く、劣悪化は極端ではない。
 
 
  レース鳩の眼は、鮮明で輝きがあり、英知が感じられ、かつ、鋭さから勇気が感じとれるものであって
 
  ほしいと考える。 逆に、色素の濃い眼は、種鳩向きといえる。 もし、あなたが、色素の濃い鳩を
 
  多く作出できる技量ができたなら、成功へのスタート台に立ったといえるだろう。
  
  なぜならば、選手鳩は種鳩から作出するからである。
 
 
  前項に記したが、アイサインも重要な要素である。瞳孔周囲をぐるりと取り囲むアイサインは帰巣性の
 
  安定した粘り型で、低分速スピードバードに多く、逆にクチバシ寄りに1/3程度浸みたアイサインを
 
  有した鳩は、高分速スピードバードに多い。
 
  低分速スピードバード同士を交配すると、瞳孔の絞りが大きくなり、スピード性能がさらに低下するし、
 
  高分速スピードバード同士を交配すると、瞳孔を極端に絞る神経質な鳩が多く作出され失踪の危険性が
 
  増加する。
 
 
  体の色、眼の色素の交配を順次述べてきたが、眼だけは同色同士を回避し、柿目×銀眼(石目)で
 
  雑種強勢を図った方が賢明で、アイサインにおいてもぐるりと瞳孔をとりまくアイサイン鳩には、
 
  クチバシの方に1/3程度浸みたアイサイン鳩を配した方が好結果が得られる。
 
  なぜに眼だけをといぶかる方もあると思うが、眼は知能、頭脳部分であるからである。
 
 
  しかし、やむを得ぬ場合は、石目×石目の交配程度までの血族交配は可能であって、特記すべき性能の
 
  変化の事象は少ないようである。 
 
  ただし、くどいようだが柿目×柿目の交配は絶対に回避すべきものだと確信する。
 
 
  これまで記したことを参考に、交配までの期間を十分に検討し、どのような鳩を作り出すのか強く
 
  イメージすることである。 交配的に完全であっても、どのような鳩を作り出すのだという強い意識を
 
  持たないと、不思議に好鳩は作出されないもののようである。
 
  芸術、スポーツ全てに共通なことは目的意識を強く持ち、ひたむきな思い入れである。
         
                      
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