Dr.遠藤のピジョンセミナー



  2.種鳩の選鳩   筋肉・翼・まとめ
         
  筋肉は、飛翔するうえで、重要な部分である。
 
  最近の走査型電子顕微鏡(マイクロスキャナー)の開発、発展によって、その研究は飛躍的な進展を
 
  とげた。
 
  NHKテレビなどにも紹介されたが、すでに筋肉には遅筋(赤筋)と速筋(白筋)がある事は、今日的
 
  常識とさえなっている。
 
 
  ところが、ピジョンスポーツにおいては、それぞれの鳩がいかなる筋肉構成をしているか切片標本を
 
  作成して鏡検して判断する訳にはいかない。
 
 
  他方、手で握って判断する場合、鳩は握られた事によるストレスで筋肉を収縮させ、あまつさえ、
 
  骨格さえも変化を生じさせるほどである。
 
  したがって、この様な条件下で、手に触れて柔軟性を確かめる事は難しいことである。
 
  しかし、ベテランは鳩を握る時、鳩にストレスをかけない様、包み込むように、そして鳩を浮かす様に
 
  持ち、しばらく落ち着かせ、鳩の恐怖心を除外して各部の観察をするのである。
 
  筋肉には適度な柔軟性が必要な事はもちろんだが、筋肉の付着量は骨格の形状に左右される場合が多い
 
  点に留意すべきである。
 
 
  一般に、竜骨の浅いメス鳩は、竜骨の横に筋肉が、あたかも竜骨が埋まるように付着し易いものだし、
 
  逆に竜骨の高いものは、竜骨周囲に大胸筋の付着量がすくないように思われるが、これは錯覚である。
 
  なぜならば、竜骨の高低によって、筋肉の絶対量をはかれないからである。
 
 
  大胸筋は翼を下方に下げる、すなわち推進力を起こすものであり小胸筋は翼を上方にあげる際に使用
 
  するものである。
 
  さらに体の中のエネルギー源であるグリコーゲンを蓄積する重要な場所であるので、その量は豊かで
 
  あった方が好ましい。しかし、重量があるものであっては、浮力がそこなわれるので、軽いもので
 
  あってほしい。
 
  一般に黒系鳩は骨太で筋肉も重く、白系鳩は骨が細く、筋肉も軽い鳩が多い。


   
  しばしば形状とか、大きさとかが問題とされるが、その事は、前途したように風によって左右される。
 
  短・中距離鳩と長距離鳩では翼の形状が異なり風の抱え方も違ってくる。
 
  短・中距離鳩は副翼よりも主翼が発達し長距離鳩は浮力を利用する為に主翼より副翼の発達したものが
 
  多い。
 
 
  しかしレースがつねに同一条件下で実施される訳でなく向い風、追い風を問わず飛翔を続けねば帰巣
 
  できない。
 
  したがって、飛びにくい条件下では耐えしのぎ自分の飛びやすい条件の時に十分な能力を発揮できる
 
  ものでなければならない。

  
  筆者も含め、追い風、向い風のオールマイティー型を作りたいと希望するものであるが、中間的な型の
 
  鳩を作ると、レース結果もえてして中間的なものになりがちだ。
 
 
  羽軸の強度、柔軟さも、もちろん重要な問題の一つではあるが、鳩舎に帰るという意志力と、風雨に
 
  耐えて飛ぼうとする精神力に優るものではない。
 
  多くのレースをこなし、かつ好成績を残した鳩は、多くの面で理想に近い鳩体構造を有し、健康で
 
  バイタリティーに溢れるものである。

 
  
  種鳩の条件は、まず、地元で淘汰された飛び筋ベースに、それぞれ希望とする距離に見合う骨格を
 
  有した鳩を据えかつ、体の色が黒系鳩と白系鳩を持つ事である。
 
  それらの鳩の体型的条件に優先して、信用のおける人格を有した人物が作出した、できるだけ多くの
 
  好成績鳩祖先に持つ血統構成の鳩を選ぶことがポイントである。
 
  この場合活躍鳩それ自身でなくてもむしろよい場合が多い。
 
  要は鳩を買うより人を買え、ということに尽きる。

 
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