H24.8.3〜8.5 剱岳

 
岩と雪の殿堂と形容される山、そして、かつては険しい山で、人が登る対象ではなかった山、「剱岳」の頂に立つことができた。新田次郎の「剱岳<点の記>」を読んで、この山に憧れてきた。映画化されて知る人も多いと思うが、山好きの人は、槍ケ岳・穂高岳と並んで、剱岳も一度は挑戦してみたい山だ。

8/2(木)0日目

夜11時15分名古屋発の富山行き深夜バスで出かけた。今回は、山の会東京組7名、名古屋組1名(小生)での山行だ。東京組も1名が前日泊で6名が深夜バスでの富山入り。


8/3(金)1日目

全員集合して、富山駅6時30分発の室堂直行夏山バスに乗車。9時前に室堂に到着。富山から信濃大町までのアルペンルートのなかでも最高地点であり、観光客も多い。また、剱岳だけでなく、立山への登山客も多くいるようだ。4年前小生も、雄山・大汝山・別山と縦走した。室堂は今回2回目ということになる。

準備を整えてさあ出発。本日は、別山乗越を越えて、剱岳の登山口である剣山荘までの予定だ。天気は最高、室堂から東に浄土山、雄山、大汝山、別山と連なる立山連峰、西に奥大日岳が、澄み切った空の青と緑の中ところどころに残る雪渓の白が映える。室堂からみくりが池を経由して、雷鳥沢へ一端150mほど下る。雷鳥沢の浄土川の橋を渡ると本格的な登山道になる。ここから、別山乗越(標高2760m)までは、約450mの標高差がある。
 
 
室堂から「雄山」

 
雪解けで満ちる「みくりが池」


雷鳥沢を登ること約2時間、剱御前小舎へ12時過ぎに到着した。剱岳がその姿を現わした。小休止して、今度は剣山荘まで下りだ。剱沢経由と剱御前側の道があるが、剱御前側の道を選んだ。徐々に剱岳が迫ってくる。数か所の雪渓を横切り下っていく。剣山荘に到着したのは13時40分だった。
 
別山乗越から「剱岳」

 
剣山荘から「別山」


8/4(土) 2日目 

5時30分過ぎ、剣山荘を出発。まずは、一服剱を目指す。40分程度で一服剱に到着するが、まさに一服しただけで武蔵のコルまで下ったところに適当な場所があったので、朝食にした。しばらく休憩して、次は前剱を目指す。本峰剱岳はまだ姿を現さない。足元の悪い登りだ。前剱大岩の鎖場を慎重に登る。鎖場もいくつかあって番号を付けたプレートがつけられているが、覚えられないほとあるし、また、鎖がなくてもけっこう厳しい場所は多い。
 
「前剱大岩」の鎖場

 
「武蔵谷」

やがて、前剱(2813m)の頂上に到着。本峰剱岳が大きく迫ってきた。前剱からまた下ることになる。ここの下りによく滑落事故があると聞いている。気を抜くところはまったくない。慎重に下って行って平蔵のコルに到着。ここで一息入れる。

さあここからだ。剱の難所「カニのたてばい」と呼ばれる50mのほぼ垂直に登る岩場だ。渋滞していて15分程度待ってから、登りにさしかかる。かなり緊張するが、足場のないところは鉄杭か打たれていて、しっかり3点確保して慎重に登れば、心配することはない。ここを通過すれば、頂上までゴロゴロした岩の上を登って頂上に到達する。頂上(2999m)に立ったのは9時15分だった。
  

平蔵の頭から「剱岳」 

 
「カニのたてばい」緊張します

日本の山の中でも難関と言われる「剱岳」の頂上に立つことができた。感無量だ。頂上からは360度の展望だ。東に双耳峰の鹿島槍ケ岳、昨年登った五竜岳、白馬岳、東南の方向に南アルプスの山々、そしてその向こうに富士山が遠望できる。南には槍ケ岳、穂高連峰、笠ヶ岳と、北アルプスの山々が連なる。西に目を向けると白山がすそ野を広げている。これがあるから山はやめられない。


剱岳山頂の「祠」 


山頂から双耳峰「鹿島槍ケ岳」

約30分の頂上からの展望を楽しみ、下山することとした。下山道も気が抜けない。下りは「カニの横ばい」と呼ばれる難所がある。実はこの「カニの横ばい」を一番不安に感じていた。安全ベルトとシュリンゲ・カラビナで安全確保の準備もしてきていた。しかしここも10分以上渋滞しており、その原因がハーネス・安全ベルトの装着のためだ。

せっかく準備してきたのではあるが使用しなかった。後ろの人に迷惑をかけることと、もう一つ、そもそも一般コース(本格的な岩登りではない)でこれらのハーネスや安全ベルトを使用する必要があるのかということだ。もっと言えば、これくらいのところ(本当はちょっと怖い場所だけど)を普通に通過できなければ、この山に来る資格がないとも思っていた。それでも確保を選ぶかは難しいところだ。

それにしても、高度感は相当なものだ。一歩間違えれば命はないと思うが、まさに「カニの横ばい」のように、鎖をしっかり握って、一歩一歩足を進めていけば意外と普通に通過できるものだ。


山頂から「五竜岳」


 
「カニのよこばい」


前剱、一服剱と戻ってきて、剣山荘到着は12時30分だった。まだ、今日の仕事は終わっていない。雷鳥沢の山小屋まで別山乗越を越えていかなければならない。メンバーも少し疲れているようだ。別山乗越 剱御前小舎14時30分。雷鳥沢ヒュッテに到着したのは、16時30分。本日は、11時間の山旅だった。
 
   

「チングルマの群落」 ほっと一息


 
「チシマギキョウ」 和ませてくれます




8/5(日)3日目

本日は、雄山往復が計画されていたが、小生風邪をひいてせき込んでいたし、熱もあるのでそのまま帰宅させてもらうことにした。昨日の剱岳アタックも本当は危なかったのではないかと思っているが、緊張の連続で風邪を気にしている暇がなかったと言ってもいいだろう。



今回の山行、一般ルートとは思えない難所の多いコースだったし、体調不良にもかかわらず、頂上に立つことができたのは、メンバーのみなさんのお陰と思っている。一人ではとても成功していなかっただろう。
山を登るたびに、ひとつひとつ勉強させていただいている。

 
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