竹で作った「醤油差し」W96 2007年2月〜6月 制作 孟宗竹の一節で作った醤油差しの工作記録です 45φ × 95h mm
拭き漆工房 翠簾洞 素舟齋 |
卓上に置いてアクセサリにもなるような、竹の醤油差しを作ろうと考えました。醤油差しの注ぎ口を曲げるのに数個作ってみて、やっとコツがわかりました。また、この注ぎ口を本体に貼り付けるのに苦心しました。醤油が空になったときや洗った時に液体が残っているとカビが生えやすいので、内部の凹みや狭い隙間をウッドエポキシで塞ぎました。しかし、実際に使ってみると、卓上ではいろいろなものがぶつかるので倒れやすいことが判り、もう少し太い竹を使うべきだったと思いました。
![]() |
2005年暮に竹林で伐ってきた孟宗竹を、2年間風通しの良い日陰に置いて乾燥させました。 その中から細めの竹の一節を選んで切りました。 |
![]() |
![]() |
竹の表皮は3層になっているそうですが、その表面には油分があるようで、漆を塗ってもちょっと固い物に当たると剥げてしまうことがあります。 そこでサンドペーパーで表面を軽く荒らしてから、地塗り(じぬり 最初の下塗り)をします。 地塗りが終わると素材の表面は堅く締まって、水を吸い込んだりしなくなります。また次の工程(下塗り)の漆がよく竹に馴染むようにもなります。 |
![]() |
注ぎ口には布袋竹の筒を選び、精密鋸でV字型に5本の切り込みを入れ、蝋燭の火で炙りながら曲げました。 曲げて固める時に、接着剤を押し込んで隙間を埋めるようにしました。 |
![]() |
![]() |
本体に注ぎ口を差し込む穴を開けました。 それから蓋にする部分を切り取りました。 これで大よその形が出来ました。 |
![]() |
注ぎ口を取り付けるのには そこで内側に手が入るように |
![]() |
![]() |
まず最初に注ぎ口を本体に固定します。 注ぎ口が本体に入り過ぎたり弛んで取れたりしないように、切り口に工夫をしてあります。 水糸で固く縛って硬化するまで1昼夜ほど待ちます。 |
![]() |
![]() |
注ぎ口の取り付けが うまく出来ました。 |
![]() |
醤油を注ぐ時に、蓋が落ちないように斜めに切ってありますが、より安定するように更にコルクを貼りました。 |
![]() |
![]() |
内側にも外側にも1回下塗りをしてから、中塗りを繰り返します。 中塗りと次工程の上塗りは、1回塗る毎に、塗った漆が乾いたら目の細かいサンドペーパーで磨きます。 それからまた漆を塗り、この作業を繰り返します。 漆の乾燥に1昼夜を掛けるので、工期の大部分はこの単純作業の繰り返しに費やされます。 |
![]() |
注ぎ口の中も細い筆で塗り、 スポンジ状のヤスリで磨きました。 |
![]() |
![]() |
内側には朱漆を塗りました。 朱漆は漆に微粉末の朱を練り合わせて作ります。 塗る時は鮮やかな朱色ですが、朱漆が渇いた時は黒褐色になります。 それが時間と共に段々と赤みが増してきて、 |
![]() |
輪切りにしてあった胴体を繋ぐのに3本の竹釘を立てて、エポキシ樹脂で固めます。 サンドペーパーで磨いて、表面の余分な樹脂を除きます。 |
![]() |
![]() |
内側の繋ぎ目には朱漆を指塗りしました。 外側にはまた中塗りを繰り返します。 |
![]() |
繋ぎ目に 漆を染み込ませた麻布を巻きました。 傷隠しと使う時の滑り止めを兼ねています。 |
![]() |
![]() |
醤油差しとして使う時に倒れにくくするために、底の裏に錘を入れて、別な節板を貼り付けてあります。 |
![]() |
![]() |
巻いた布に内側と同じ朱漆を塗りました。 外側を更に中塗りして色具合を整えてから、仕上げ塗りをしました。 1週間くらい乾かして漆が十分に硬化してから、3種類の磨き粉でしっかりと研ぎ出すと良い艶が出てきます。 |
これで「竹の醤油差し」が完成いたしました。
これが落款を入れた最初の作品となりました。
-----<2007.7.26. 作成・2013.2.2. 改訂>-----