120w×250h
2004.03.01 制作着手 / 2005.10.10. 完成
知人の庭に竹が何種類か植えてあり、切った竹もいろいろとあるとのお話がありました。
2004年2月27日、訪ねてみると桿を長く残して切った切り株に手頃なのがあったので、根元から切り出して頂戴してきました。
拭き漆工房 翠簾洞 素舟
根元から50センチくらい上で切ったまま、何年も経っている孟宗竹の株を掘り出して、花活けに作りました。節影も漆の仕上がり具合もよく、気に入った作品の第1号となりました。大切にして手許においてあります。
切り口の平滑化の方法が決まらなかったので、原型だけ作って10ヶ月間放置していたのですが、その間に一節切り花活け(W23)を作って、切り口の処理に自信が出来たので工作を再開しました。
切り直した素材-正面
側面
活けた花材の支えになるかと思って残しておいた活け込み口の節の残りは落として、素直な斜め切りの花活けにしました。
よく見ると活け込む口の正面側に表皮が大きく剥げたところがあり、気になるので鋸で切り直しました。
しかしまた切り口に剥げたところが複数出たので、養生テープを貼って再度切り直しました。
それからサンドペーパーを定盤に貼り付けて、本体を握って廻しながら磨いたところ、存外に早く綺麗に研磨出来ました。△TOP△
活け口と底に漆を塗った
底と口に塗った漆
竹が枯れているのか表皮がもろく剥げやすいので、とりあえず活け口と底に漆を塗っておきました。
底の内側には補強もかねて鉛玉を敷くつもりですが、深いので手が入らず, 竹紙を取り除くだけの簡単な仕事に意外な手間が掛かりました。△TOP△
これだけの花活けだとかなり大きな花材も活け込まれることを想定しなければなりません。そんな大きな花材で頭が重くなっても倒れないように錘を入れることにしました
底に釣り用の錘を埋め込んだ
錘として鉛玉では軽すぎると思って、50号と45号の釣りの錘を各2個ずつ入れることにしました。
その為には錘の厚さだけ底が浅くなるので、更に1節を抜いて錘のスペースを作る必要が出て来ました。
そうなるととても手が入らないので、サンドペーパーが使えません。やむなく大きい木工用棒鑢を買って来て、竹の内部を研ぎ出しました。
木工鑢が荒目なのでとても平滑とは言えませんが、まあまあのところまで出来ました。
そこで4個の錘を扁平に叩き潰して、下に50号2個を並べ その上に45号2個を重ねて入れました。
錘の固定と空隙を埋めるためにウッドエポキシを沢山使いました。△TOP△
鉛を埋め込んだ底までは全く手が届かないので、ウッドエポキシの表面を思うように均すことが出来ません。
そこで、上部で抜いた節板の周りをサンドペーパーで削って筒の内径に合わせ、ウッドエポキシの上に乗せて嵌め込みました。
周囲にもウッドエポキシを入れて棒で平らになるようにしましたが、矢張り満足がいくようにはなりません。
節を埋めたウッドエポキシが半乾きになってから、余分なウッドエポキシを出来るだけ金属棒でこそぎ落としたあと、水を入れて棒束子を押さえながら強く洗ってみると、漸く我慢出来る程度に自然の節のようになりました。
ところがこの花活けは竹の模様を活かすつもりで余り表皮を取らないようにしていたのが徒となり、ちょっと固い物にぶつかると漆が部分的に剥げ落ちてしまいます。傷が付くような剥げ方ではなく鱗が剥げるようにカッポリと剥げ落ちるのです。
完成後またカッポリと剥落してはみっともないので、この際表皮を全部落として漆との馴染みがよくなるようにすることにしました。
表皮を竹の地肌が出るまで磨き落とす
折角塗った漆ですが、サンドペーパー#120と#240を使って表皮の下の白い竹肌を半分位落とし、更に下の赤味がある地肌が稍透ける程度まで磨きました。
表面の漆工は地塗りから全くのやり直しになりました。△TOP△
節影だけに梨子地漆で数回の拭き漆を掛けた後、全体に瀬〆漆を塗り、節影を強調するように節の上側を特に強くこすって拭きました。
結果はたっぷりと入れた錘の重量感と相俟って、とても見事な質感が出て来ました。
活け込み口に丸く付いていた節の残りを切り取ったのも、見栄えをよくしたものと思います。 あの庭にあった時の朽ちかけた切り株とは到底思えません。
この調子でしっかりと仕上げるつもりです。△TOP△
出来上がりました
漆塗りは満足がゆくまで十分に塗ったので、今日は呂色磨粉で丹念に磨いて仕上げました。
艶が良く、光線の具合では下地の粗いサンドペーパーの跡が恰も貫入のようにも見えて、陶器感覚も透明感もあり、我ながら大変気に入りました。
これをもって、この作品の完成とします。△TOP△